第26話 夏休みの秘密トレーニングと《白銀の粉砕姫》
この度は数ある作品の中からこの作品を選んでいただきありがとうございます。
学園の夏休みの間、私は「病弱のため領地で静養いたしますわ」と周囲に儚げな嘘を告げ、秘密の計画を実行に移していた。
そう、『夏休み限定・ギルド依頼片っ端から粉砕合宿』である!
◇
「おい、見たか……? 今日の朝一に出た『暴走トロールの群れ討伐』、もう達成報告が出てるぞ……」
「嘘だろ!? あれCランクパーティが4組がかりで挑むやつだぞ! 誰がやったんだ!?」
王都の冒険者ギルドは、連日連夜の大騒ぎとなっていた。
最初はFランクの新人として、街のドブ掃除や薬草採取からスタートした私。
だが、薬草採取のついでに襲いかかってきた大型の魔物を、体幹正拳突きで粉砕し続けること数日。
「……えっと、フラン様。また『討伐対象外のドラゴン』の素材が混ざっているのですが……」
「まあ、手が滑ってしまいましたわ。高タンパクなお肉として美味しくいただきました」
受付のお姉さんが引きつった顔で書類を処理するたび、私のランクは「F」から「D」、「B」へと異常なスピードで跳ね上がっていった。
そして夏休み中盤――王都近郊の魔の森に現れた、体長10メートルを超えるS級指定魔物『地殻竜』の討伐。
可憐な夏用ワンピース姿のまま、一人で森へと足を踏み入れた私は、完璧な体幹の軸から繰り出す正拳突きで地殻竜を三分で粉砕。
「あいつ……一人で地殻竜を殴り倒したらしいぞ……」
「可憐な銀髪に、雪のような白い肌……まるで妖精みたいな美少女なのに……」
「触れることすらできねえ……近づくだけで体幹の圧で潰される……!」
数々の規格外な伝説を残し、夏休みが終わる頃には私のランクは特例の『S級』に到達。
荒くれ者たちの間で、戦慄と崇拝を込めた二つ名――《白銀の粉砕姫(壊し屋)》が誕生していたのだ。
◇
そして、夏休みが明けた秋の学園。
廊下を歩いていると、さっそく向こうから腕を組んだレナード王子と男爵令嬢マリアが歩いてきた。
「ハハハ! おやフランシスカ、無事に夏を越せたようだな! 聞けばずっと部屋に引きこもって病弱な療養をしていたそうじゃないか!」
マリアがこれみよがしにレナードの腕にギュッと抱きつき、クスクスとあざとく笑う。
「まぁ、可哀想なフランシスカ様。レナード様と私は、夏休みの間に王家の避暑地でロマンチックな乗馬を楽しんでいましたのよ? お部屋でじっとされているなんて、本当に退屈で可愛そうですわねぇ」
相変わらずグラグラと重心のブレた立ち姿で煽ってくる二人。
(……はいはい。あなたたちが馬の上でパカパカ遊んでいる間、私は素手で地殻竜を粉砕してS級冒険者になっていたんだけどね)
私は一切の笑顔を消した冷酷なポーカーフェイスのまま、冷ややかな視線を二人に向けた。
「お二人とも、ご壮健そうで何よりですわ。……ですがレナード殿下、乗馬の成果が出ているとは思えないほど、相変わらず腰の軸が右にブレていらっしゃいますわよ」
「なっ……!? 貴様、僕の完璧な乗馬姿勢を侮辱する気か! 負け惜しみを言うな!」
「そうですわ、レナード様! あんな可愛げのない方の言うことなんて気になさらないで!」
フンと鼻を鳴らして去っていく二人。
二人の姿が見えなくなると、私は物陰から現れた生徒会長のヴィンセント様(1年生)に向き直り、いつもの優しく上品な笑顔を向けた。
「お久しぶりですわ、ヴィンセント様」
「……お久しぶりです、フランシスカ嬢。……ところで、冒険者ギルドで暴れ回り、一夏でS級に上り詰めた噂の『白銀の粉砕姫』について何かご存知ですか?」
「あら、なんのことかしら? ふふふ」
可憐に首を傾げる私を見て、ヴィンセント様は
「(兄上たちがこの事実を知ったら失神しますね……)」と遠い目をするのだった――!
ご視聴いただきありがとうございました。本作の原作にあたる作品も、ぜひあわせてお読みいただけますと幸いです。
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