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第24話 あざとい嫌がらせより、街で見つけた筋肉の聖地(ギルド)!

この度は数ある作品の中からこの作品を選んでいただきありがとうございます。

学園祭での大盛況からしばらく経った頃。

学園内に、ある一人の女子生徒の噂が広まり始めていた。

今年編入してきたばかりの男爵令嬢、マリアである。


「きゃっ……! ごめんなさい、レナード様ぁ! 私、転んでしまって……」


「おお、大丈夫かマリア! 痛かったろう、僕の腕に掴まるがいい!」


中庭の回廊で繰り広げられていたのは、ベタな少女漫画のような光景だった。

守ってあげたくなるような儚げな表情、上目遣い、そしてこれ見よがしにあざとい仕草でレナード王子にしがみつく男爵令嬢マリア。

対するレナード王子は、「守るべき可憐なヒロイン」を手に入れた気になってデレデレと鼻の下を伸ばしている。

(……ふむ。立ち姿の重心が互いに崩れていて、体幹の軸が絶望的ね。あんなグラグラな抱きつき方、ちょっと横から突かれただけで二人まとめてスてーんと転ぶわよ)

私が遠くから冷ややかな目で見つめていると、マリアがチラリとこちらに視線の端を向け、勝ち誇ったような不敵な笑みを浮かべた。

そしてわざとらしくレナード王子の腕にギュッと抱きつきながら、私の方へと歩み寄ってきたのだ。


「まぁ、フランシスカ様! レナード様からお聞きしましたわ。ご病弱で、いつもお部屋でじっとされているとか……。女の身でありながら、レナード様のお役に立てないなんて、可愛そうですわね?」 


あからさまな煽り文句。

レナード王子も便乗するように高笑いを上げる。


「ハハハ! そうだぞフランシスカ! マリアは僕のために一生懸命お茶を淹れてくれたり、守ってあげたくなるような愛らしさがある! 貴様のような『笑わない、可愛げのない女』とは大違いだ!」


(……出たわね、「守ってあげたくなるタイプの男爵令嬢」! そもそも、あんたたちのやることを見ると嫌な気分になるから、笑顔になんてなれるわけないでしょ!)

私の肩のあたりで姿を消しているピピが、念話で盛大に呆れていた。


『(酷いねフラン。あの男爵令嬢、大臀筋にも内転筋にもまったく力が入っていないよ。男に媚びる前に、まずは基本的な自重スクワットからやり直すべきだね)』


「(本当にね。でも、これでピースが揃ったわ)」


私は一切の笑顔を消した無表情(冷酷なポーカーフェイス)のまま、一歩前に踏み出した。


「レナード殿下、マリア様。お二人が仲良くされるのは一考ですが……レナード殿下、姿勢が右に傾いていらっしゃいますわよ。大胸筋と体幹を鍛えなければ、誰かを『守る』ことなど不可能ですわ」


「な、なんだと……!? わけのわからんことを言うな!」


「ふん、負け惜しみですわね! レナード様、あんな可愛げのない方のことなんて放っておいて、一緒にお茶にしましょう?」


「おお、そうだなマリア!」


腕を組み(立ち姿の軸をブレブレに揺らしながら)去っていくレナード王子と男爵令嬢マリア。

その様子を物陰から見ていた生徒会長のヴィンセント様(同じく1年生)が、やれやれと首を振って現れる。


「……フランシスカ嬢。あの男爵令嬢、どうやら兄上に取り入って、あなたに嫌がらせをしようと画策しているようです。1年生のうちから面倒なことになりましたね」


「まあ、ヴィンセント様」


二人の姿が見えなくなると、私はいつもの柔らかく上品な笑顔を取り戻し、ヴィンセント様に向き直った。


「知っていますわ。……ですが、あんな甘い体幹とペラペラな大胸筋の嫌がらせなんて、痛くも痒くもありませんもの」


私がくすりと微笑むと、ふと先日、休日に買い出しで王都の街を歩いていた時のことを思い出した。

通りを一本外れた路地裏で、たまたま目に入った大きな建物――そこは荒くれ者たちが集う『冒険者ギルド』だったのだ。

チラリと覗いた訓練場では、巨大な鉄塊を持ち上げたり、岩のような魔物と力比べをしたりするマッチョな冒険者たちが汗を流していた。

(あの時、ピピと二人で『何あの天国みたいな場所!? 休日にこっそり通いたすぎる!』って大興奮しちゃったのよね……!)

1年生の今のうちから、学園の休日に「ちょっと冒険者ギルドに行って鍛えてくる!」なんてことができたら、どれほど楽しいだろう。


「ヴィンセント様。私、あんなちっぽけな嫌がらせに付き合うより……街で見つけた冒険者ギルドに、内緒で登録してみたいと考えていますの!」


『いいねフラン! あのギルドの訓練場なら、学園の施設じゃ物足りない超高負荷トレーニングがやり放題だよ!』


姿を消しているピピの弾けた声に、私は可愛らしくニッコリと頷いた。


「ええ! レナード殿下たちが裏でゴソゴソ企んでいる間に、私はギルドでこっそり筋肉(実績)を蓄えておくことにしますわ!」



たまたま見つけた「筋肉のテーマパーク(冒険者ギルド)」への妄想を膨らませつつ、12歳の私の学園生活は、ますます面白くなっていきそうな予感がするのだった――!

ご視聴いただきありがとうございました。本作の原作にあたる作品も、ぜひあわせてお読みいただけますと幸いです。

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