第22話 学園の実技試験と、隠しきれない大胸筋(の圧力)
この度は数ある作品の中からこの作品を選んでいただきありがとうございます。
学園生活が始まって一ヶ月。
今日は、1年生から3年生までの全校生徒が大演習場に集まる『魔法実技・魔力測定試験』の日だった。
貴族の生徒たちが自慢の魔導具や派手な魔法を披露し、歓声を浴びている。
その中央で、私の「表面上の婚約者」である第一王子レナード(16歳・高等部)が、取り巻きの男爵令嬢を侍らせながら高笑いを上げていた。
「ハハハ! 見たかフランシスカ! 僕のこの炎魔法の威力を! 貴様のような病弱な女では、魔導具の重みすら耐えられまい!」
レナードが手に持つのは、家臣に作らせた誇張用の魔導指輪。
相変わらず立ち姿の軸は右にブレブレで、下半身の踏み込みが甘いため、魔法を放つたびに反動で体がグラついている。
(……大臀筋と内転筋の鍛え方が絶望的に甘いわね。あんなブレブレの体幹で放つ魔法、軸を少しズラされただけで自滅するわよ)
私の隣で気配を消しているピピが、念話で呆れたように囁いてくる。
『(酷いフォームだね、フラン。あれなら君の指先つまみ力(ピンチ力)だけで打ち消せるレベルだよ。……おっと、君の番が来たよ)』
「新入生、フランシスカ・アイゼンベルク!」
担当教師の声が響き、私は静かに大演習場の中央へと歩み出た。
満座の生徒たちから
「あんな華奢で病弱な令嬢が測定できるのか?」
「倒れてしまうのでは?」
と心配と好奇の視線が注がれる。
「フランシスカ、無理をするなよ? 倒れたら僕が介抱……いや、恥をかくだけだから下がっていてもいいぞ?」
ニヤニヤと見下してくるレナード。
私は完璧な白鳥の微笑みを浮かべ、測定用の巨大な『魔導水晶』の前に立った。
(……お父様からは「卒業までは目立つな」と言われているけれど、手加減しすぎて体幹の軸まで緩めるわけにはいかないわね)
背筋をスッと伸ばし、足の裏全体で大地をしっかりと掴む。
腹筋、背筋、そして大胸筋にキュッとミリ単位の力を込め、完璧な重心の軸を形成した。
ただそれだけ。魔法すら唱えず、完璧な体幹の軸を固定しただけだった。
ズ―――ン……!!
「っっ……!? な、なんだこの威圧感は……!?」
「じ、地鳴り……!? いや、空間が圧迫されている……!?」
演習場の空気が一瞬で重くなり、周囲の生徒たちがガタガタと震え出した。
私が踏みしめた足元の石畳が、完璧な重心移動の圧力に耐えかねて、パラパラと小さなヒビを刻む。
そして、私が水晶にそっと指先を触れた瞬間――
バシィィィン!!
測定水晶が私の内側から溢れ出る圧倒的な「物理(と魔力)の密度」に耐えきれず、激しい音を立てて表面に亀裂が入った。
「な……っ!! 測定水晶が壊れた……!?」
「魔法も唱えていないのに、立ち姿の圧だけで水晶にヒビを……!?」
演習場全体が静まり返る。
レナードは目を限界まで丸く見開き、腰を抜かしかけて取り巻きの令嬢にしがみついていた。
「ふぅ……。申し訳ありません、手が滑ってしまいましたわ」
私は可愛らしく首をかしげ、天使のような笑顔を振りまいた。
その様子を遠くから見ていた生徒会長のヴィンセント様が、額を押さえて深々とため息をついている。
「(……フランシスカ嬢、『目立たないでくれ』と言ったはずですが……やはりあなたの大胸筋と体幹は、隠そうとしても隠しきれませんね……)」
(ふふん、卒業パーティーのその日まで……レナード殿下、しっかり油断しておきなさい!)
自分の圧倒的な成長(と大胸筋の仕上がり)を再確認し、私は心の中でニヤリと不敵に笑うのだった――!
ご視聴いただきありがとうございました。本作の原作にあたる作品も、ぜひあわせてお読みいただけますと幸いです。
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