第17話 婚約契約書と、不敵な鑑定眼
この度は数ある作品の中からこの作品を選んでいただきありがとうございます。
明日はオープンキャンパス行くので多分投稿します
その日の午後。
アイゼンベルク侯爵邸の応接室には、重苦しい緊張感が漂っていた。
「――というわけで、アイゼンベルク侯爵。フランシスカ令嬢が無事に5歳の洗礼式を終えられた以上、お約束通り第一王子レナード様との『正式な婚約契約書』にサインをいただきたい」
対面に座るのは、王妃派の有力貴族である横柄な子爵。
テーブルの上に恭しく出されたのは、金箔の装飾が施された羊皮紙――レナード王子との正式な婚約契約書だ。
子爵は
「病弱な娘を王家に引き取ってやるのだから感謝しろ」と言わんばかりの、勝ち誇った嫌みな笑みを浮かべている。
お父様とお兄様の目が、凍りつくような冷たさに変わった。
「子爵。2年前にも申し上げたはずだ。我が娘ルミィは病弱であり、王妃教育などの重責に耐えられる体ではない、と……」
「ハハハ! 侯爵、洗礼式での令嬢のお姿は拝見いたしましたぞ。車椅子にも乗らず、自力で立っておられたではないですか! これ以上『病弱』を理由に引き延ばすのは、王家への不敬にあたりますぞ?」
子爵は逃げ道を塞いだつもりで、強気に書類を差し出してくる。
(ふふん……そう来ると思ってたわよ!)
お父様の膝の上で大人しく座っていた私は、新スキル『ステータス鑑定』をこっそり発動!
目の前の子爵と、差し出された『婚約契約書』をジロリと見つめた。
【対象:婚約契約書の裏鑑定結果】
特殊魔法陣記述: 『王家への絶対服従』『アイゼンベルク侯爵家の財産・私兵の優先提供』『一方的な婚約破棄時のペナルティ(侯爵家の爵位剥奪)』が隠しインクで刻印されています。
(うわぁ……! 表面上は普通の契約書に見せて、裏で侯爵家を丸ごと乗っ取る気満々の極悪契約書じゃないの!!)
さらに子爵本体も鑑定してみる。
【対象:王妃派子爵】
弱点: 王妃派の公金を横領し、裏賭博につぎ込んでいる証拠を袖のポケットに隠し持っている。
(詰んだわね、このおじさん)
私は
「え~ん、こわいよ~」
というふりをしてお兄様に抱きつきながら、耳元でこっそり囁いた。
「(お兄様……あの紙、隠しインクで『侯爵家を乗っ取る呪い』が書いてあるよ。あと、あのおじさんの左ポケットに横領の証拠が入ってる……!)」
「(……!)」
私の念話並みの囁きを聞いたお兄様の目が、一瞬で凶悪な色に染まった。
完璧な美少年の笑みを貼り付けたまま、お兄様がゆっくりと立ち上がる。
「子爵。我がアイゼンベルク家を愚弄するのも大概にしていただけますか? 隠しインクで『財産提供』や『爵位剥奪』の不当条項を刻んだ契約書など、破り捨てる価値もありません」
「なっ……!? な、なぜそれを……!?」
子爵の顔が、一気にパッと青ざめた。
「さらに言えば、王家への不敬を語る前に、ご自身が王妃派の公金を横領して裏賭博につぎ込んでいる件について説明していただきたいですね。左のポケットの書類を改めさせていただきますが?」
「ひっ……!!? な、なぜそれを知って……!!?」
ガタガタと震え出し、顔面蒼白で汗をダラダラ流す子爵。
「お父様、このような不潔な使者、つまみ出しましょう。我がアイゼンベルク家は、このような詐欺まがいの契約書には断固としてサインいたしません!」
「うむ! 我が愛しきルミィを騙そうなど、100年早いわ! 引き立てい!」
お父様の合図で、控えていた強面のごつ腕騎士たちが一斉になだれ込み、絶叫する子爵をそのまま引きずり出していった。
静かになった応接室で、私はお兄様とお父様に
「えっへん!」と胸を張ってみせた。
「お父様、お兄様! 悪者撃退ですね!」
「ああ、ルミィ……! お前の機転(鑑定)のおかげで、侯爵家もルミィの未来も守られたよ!」
「さすが僕のルミィ……! 賢くて可愛くて完璧だ……!」
お父様とお兄様にギュッと抱きしめられながら、私はピピと目配せをしてニヤリと笑った。
(ふふん! どんな卑劣な手を使ってこようと、私のチートと家族の愛の前には無力なんだから!)
こうして、迫りくる不本意な婚約契約を見事に粉砕した私。
しかし、この敗北に怒り狂った王妃派とレナード王子が、さらなる陰謀を企み始めるのを、私たちはまだ知る由もなかったのだった――!
ご視聴いただきありがとうございました。本作の原作にあたる作品も、ぜひあわせてお読みいただけますと幸いです。
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