第16話 試作型プロテイン飯と、嵐の前触れ
この度は数ある作品の中からこの作品を選んでいただきありがとうございます。
昨日は出せなくてごめんなさい
昨夜の「ドラゴンも素手で倒せそうな爆絶ステータス」事件から一夜明けた、アイゼンベルク侯爵邸の朝食時。
食堂の空気は、どこか異様な緊張感に包まれていた。
「……ルミィ。本当に、どこも痛むところはないのかい? どこかの悪い悪魔に身体を乗っ取られたりしていないかい……?」
目の下にうっすらクマを作ったお父様が、心配そうに私の顔を覗き込んでくる。お兄様に至っては、朝食のナイフとフォークを握りしめたまま、昨夜の数値を思い出してずっと遠い目だ。
(あちゃぁ……健康になったのは嬉しいけど、急激すぎて心配をかけすぎちゃったかな)
ここで私が新しく手に入れたスキル『至高の料理』の出番である!
「お父様、お母様、お兄様! 実は私、神様から『とっても料理が得意になる魔法』を授かったんです! だから今朝は、家族のみんなのために特別なジュースを作ってきたの!」
そう言って、私はアイテムボックスから、今朝ピピと一緒にキッチンを借りて作った【特製・極上フルーツプロテインジュース】を取り出した。
『至高の料理』スキルによって食材の栄養効能が極限まで引き出され、飲んだ者の疲労を100%回復させつつ筋力と魔力の巡りを良くする、まさに神のドリンクだ。
「ルミィが……僕たちのために手料理を……!?」
お兄様の目が一瞬でカッと見開かれた。
昨夜の混乱などどこへやら、「妹が自分のために作ってくれた」という事実だけで、お兄様の脳内ドーパミンが限界突破したらしい。
「飲む!! ルミィの愛が詰まったジュースなら、例え毒が入っていようと一滴残さず飲み干してみせる!!」
「レオ、落ち着きなさい! ……しかし、ルミィの手料理か。ゴクリ……」
半信半疑のまま、お父様とお兄様、そしてお母様が同時にジュースへ口をつけた。
「「「っ!!!???」」」
一口飲んだ瞬間、三人の体に雷が落ちたような衝撃が走る。
「な、なんだこの美味さは……!? 全身の細胞が急速に活性化して、昨日までの疲労が嘘のように消えていく……!!」
「お、お父様、背筋が……背筋が勝手にピンと伸びて、体幹が芯から熱くなってきます……!!」
感動に震え、涙を流しながらジュースを飲み干す家族たち。
『至高の料理』の力で、お父様とお兄様の疲労は完全回復し、ステータスにも密かに【疲労無効・一時的筋力UP】のバフがかかっていた。
「ふふん、大成功ね!」
私が満足気に胸を張っていると、お父様が空になったグラスを置き、キリッとした凛々しい(かつ元気いっぱいの)表情で私を見つめた。
「よし……ルミィの作ってくれたこの素晴らしい活力のおかげで、腹は決まった」
「お父様……?」
「今日の午後、王妃派の使者が『レナード王子との正式な婚約契約書』を持ってこの屋敷にやってくる。洗礼式が終わった今、向こうは力ずくでサインをさせに来るつもりだろう」
お父様の言葉に、お兄様が冷徹な、殺気すら孕んだ美しい笑顔を浮かべた。
「ふふ、あの豚王子にルミィを渡すわけがありません。ルミィがこんなに健康で、こんなに愛らしい料理まで作れる天使だと知られたら、ますます執着されますからね。……僕が社会的に潰します」
お父様とお兄様のメラメラと燃え上がる闘志。
前世で不当に捨てられた経験がある私だからこそ、こうして全力で守ろうとしてくれる家族の存在がたまらなく愛おしい。
(ふふ……王妃派の使者ね。どんな理不尽な契約書を持ってこようと、『鑑定』で弱点を見抜いて、私の圧倒的なステータスとお父様たちの政治力で返り討ちにしてやるわ!)
ピピと視線を交わし、ニヤリと不敵に微笑む私。
ついにやってくる「正式契約の迫る使者」との対決に向け、アイゼンベルク侯爵家は一致団結して迎え撃つ準備を整えるのだった――!
ご視聴いただきありがとうございました。本作の原作にあたる作品も、ぜひあわせてお読みいただけますと幸いです。
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