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第13話 神聖なる洗礼の泉と、遠くからの視線

この度は数ある作品の中からこの作品を選んでいただきありがとうございます。

5歳を迎えた私には、貴族として避けては通れない一大イベントが待っていた。

神殿で行われる『洗礼の儀』――神々の前で無事に育ったことを感謝し、祝福をいただく儀式だ。


「ルミィ、神殿は寒いですからね。風邪を引かないように……」


「ルミィ、夜ご飯にステータスを見せなければいけないという決まりだけど、どんな事があってもルミィのこと捨てるなんてことしないからね。」


「そうよ。気にせずに楽しんでね。」


過保護なお兄様レオは、私が神殿に行くことすら心配でたまらない様子で、お父様とお母様は安心するように言ってくれている。

実は、王妃たちが勝手に推し進めた王太子レナード(7歳)との婚約内定以来、お兄様とお父様が

「あんな生意気なガキにルミィを絶対に会わせない!」

と徹底的にブロックし続けていた。

そのため、婚約者(仮)に内定してから3年が経つというのに、私はまだレナード王子と一度も顔を合わせたことがないのだった。

(まあ、会わずに済むならその方がずっといいんだけどね……)







神殿の大聖堂。

眩しい光が差し込む中央には、透き通った『聖なる水』が満たされた洗礼の泉があった。


「それではフランシスカ様、泉の中へお入りいただき、祈りを捧げてください」


神官に促され、私は重厚な刺繍が施された洗礼用のドレスの裾を少し持ち上げ、静かに泉へと足を踏み入れた。

水深は私の膝ほど。だが――

(……ん? この泉の底、めちゃくちゃ苔で滑る……!?)

普通の5歳児なら、足元を取られて派手にすてーん!と転び、重いドレスごと水浸しになって泣き出すトラップのような環境だ。

しかし、私の脳内でピピの声がピキーンと響いた。


「(ふふっ、いい環境だねフラン! 不安定な足場での『片足バランス&体幹キープ』の特訓にうってつけだよ!)」


「(よし来た……! 鍛え上げたインナーマッスルの見せ所ね!)」


私は滑る石床を足指でしっかりと掴み、腹筋と背筋、そしてお尻の筋肉に意識を集中させた。

軸足を一切ブレさせず、ぬめりを完全に殺して、まるで静水に咲く一輪の花のようにスッと美しく立ち佇む。

もちろん、美の女神アミリア様のチート加護『流麗なる白鳥』が全開で発動している。

私の頭の中は

「よし、重心を下腹部に……! 臀筋で支える……!」とゴリゴリの筋トレモードなのだが、周囲の神官たちや参列者の目には――

『水の上に重力すら感じさせず可憐に佇み、清らかな祈りを捧げる天使』

として映っていた。


「お、おおお……! なんという気高きお姿……! 聖なる水ですら、あのお方の足をすくうことなどできぬとは……!」


神官たちが感動のあまり涙を流し、その場にひざまずいていく。


「(ナイス体幹だよ、フラン。完璧なフォームだ)」


姿を消しているピピがそっと私の手に触れ、耳元で嬉しそうに囁いてくれた。その温もりに、胸がキュンと温かくなる。

(ふふ、ピピと一緒に毎日鍛えてきてよかった……!)



その時だった。

大聖堂の2階にある吹き抜けの貴賓席から、強い視線を感じた。

ふと見上げると、そこには豪華な服を着た二人の少年が立っていた。

一人は、腕を組んで不機嫌そうに下を見下ろす、金髪の少年――きっとあれが、話に聞く第一王子レナード(7歳)だ。


「ふん……あいつが僕の婚約者候補か。病弱なもやしっ子だと聞いていたが……」


遠くから見下してやろうと意気込んでいたレナードだったが、泉の中で微動だにせず、神聖なオーラ(※体幹)を放つ私の姿を見て、思わず言葉を詰まらせていた。


「……な、なんだあいつは。……全然、弱そうに見えないぞ……?」


圧倒的な存在感に気圧され、生意気な顔をわずかに引きつらせるレナード。

そして、その隣にいた黒髪の少年――側室の子である第二王子(5歳)は、青ざめた顔で一人だけ違う汗をかいていた。


「(……待て、兄上。あの令嬢、膝の角度と重心の位置が異常だ……! あのぬめり易い泉の底で、ミリ単位のブレもなく立ち続けている……。ただの病弱令嬢であるはずがない……!)」


賢すぎる第二王子だけが、私の『圧倒的な物理の圧』を察知していた。

(あ、なんか上から見られてる……。確かあのレナード王子との婚約内定は、今日の洗礼式が無事に終わるまでお父様たちが契約書の判を押すのを引き延ばしてくれていたはず……。儀式が終わったってことは、近いうちに正式な婚約契約書を突きつけられる展開になるのかな……嫌だなぁ)

まあ、いま考えても仕方ない!

私はレナードたちの視線なんて露ほども気にせず、ピピの手の温もりにそっと意識を向けながら、優雅に(完璧な体幹で)洗礼の儀を終えるのだった――!

私はレナードたちの視線なんて露ほども気にせず、ピピの手の温もりにそっと意識を向けながら、優雅に(完璧な体幹で)洗礼の儀を終えるのだった――!

ご視聴いただきありがとうございました。本作の原作にあたる作品も、ぜひあわせてお読みいただけますと幸いです。

https://ncode.syosetu.com/n8541ml/

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