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第8話 ファーストバースデーと、加速する勘違い

この度は数ある作品の中からこの作品を選んでいただきありがとうございます。

生後9ヶ月のあの日から、さらに季節は巡り――アイゼンベルク侯爵邸は、しんしんと雪が舞う美しい銀世界(冬)に包まれていた。

そして今日。私はついに、記念すべき1歳の誕生日ファーストバースデーを迎えたのだ!

毎日欠かさずピピのスパルタ指導を乗り越えてきた私のステータスは、ついにここまで成長していた。







━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

・体力(HP): 35 → 80

・筋力: 2.0 → 5.5(※自力でしっかりと立ち上がり、両手で物を抱えられる!)

・持久力: 1.0 → 72.0(※お兄様なしでの生存時間:約3日)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



(伸びてる……! 筋力が5.5まで上がったから、自分の足で立てるし、重いおもちゃも持てるようになったわ……!)

お兄様という名の生命維持装置がなくても3日は自力で生存可能。スプーン一杯すら持てなかった生後1ヶ月の頃を思えば、感無量である。








「ルミィ、お誕生日おめでとう……! さあ、本日のメインイベント『選び取りの儀式』の始まりですよ」


絢爛豪華に飾られた大広間には、お父様、お母様、お兄様レオ、そして相変わらず仕事を放り出してやってきた国王のおじ様が集結していた。

豪華な絨毯の上には、私の将来の才能や職業を占うための、息をのむほど煌びやかな品々がズラリと並べられている。

領主としての治世の才能を示す、彫刻が施された重厚な『金印』。

大魔導士への道を示す、秘伝の魔術が刻まれた高級革装丁の『魔導書』。

王室との深き繋がりと絶対的な権力を象徴する、本物のダイヤモンドが煌めく『ミニ王冠』。

それだけではない。

将来の莫大な財力を占う山盛りの『溢れんばかりの金貨袋』に、最高峰の剣士としての才能を試す、美しい意匠の『儀礼用の短剣』。

さらには、芸術の才能を開花させる繊細な工芸品の『ハープ』や『特製の絵筆』、さらには国を動かす知識人となることを示す『羊皮紙と羽ペン』まで……!

アイゼンベルク侯爵家の総力どころか、おじ様の権力まで注ぎ込まれたかのような、世界中の至宝を集めた超高級な品々の数々。それらがホールの中央で、まるで宝物庫のようにキラキラと眩い光を放っている。

さらにその周囲では、「我が娘が何を選ぶのか」「いや、我が妹が選ぶのは僕の差し出す道だ」「私との繋がりを示す王冠を選ぶに決まっている!」と、お父様とお兄様、そしておじ様までもがゴクリと息をのんで見守っていた。


大人たちの静かな火花と熱視線があまりにも凄まじすぎて、絨毯の上の空気が物理的に焦げ付きそうなほどの、息詰まる緊迫感が漂っている。

大人たちが息をのんで見守る中、私の肩の上で姿を消しているピピが、そっと影から小さなうさぎのぬいぐるみを転がし入れてくれた。


「(フラン、そのぬいぐるみには僕が少し大きめの『魔力の重り(重量5)』と、ほんのり温かくなる発熱魔法を仕込んであるよ。今のフランが持ち上げるにはかなりの負荷マッスルがかかるけれど、持っているだけで体幹が超鍛えられるし、冬の寒さから身体を守ってくれるからね)」


「(ピピ……! ありがとう!)」


前世の二股男のように口先だけの奴とは違う。ピピの差し出す「生き延びるためのマッスルサポート」こそが本物だ。私は「病弱体質なんかに負けてたまるか!」と、筋力5.5の全身全霊を込め、両足でしっかりと大地を踏みしめると、その重いぬいぐるみを「ぎゅっ」と抱きしめた。

ぬううううっ……! 重い……!

ずっしりとした手応え(重量5)に、私の背筋と腕の筋肉がバキバキとフル稼働する。



――その瞬間。

寒さ厳しい冬の日、私が必死の思いで重りと格闘しながらぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる姿は、美の女神アミリア様のチート加護『流麗なる白鳥』のせいで、「極寒の冬に、慈愛とぬくもりを全身で抱きしめる、可憐すぎる降臨したての天使」として脳内変換されてしまった!

さらには、重さに耐えかねて漏れ出た私の

「ぬぐぅ……(限界)」

という吐息が、『声帯の美調』によって

「ふにゃぁ……♪」

という極上の吐息に変換される。

これを見た大人たちの反応は、もはや事件だった。


「「「「う、あぁぁぁぁぁっ……!!!!(尊さの致死量)」」」」


ドサササッ!!!

お父様、お兄様、おじ様が、同時に胸を押さえて床に膝をついた!


「な……なんて、なんて健気で愛おしいのだルミィ……! 金印でも王冠でもなく、ぬくもり溢れる『ぬいぐるみ』を選び、それをこんなにも愛おしそうに抱きしめるなんて……!」


お父様が大粒の涙を流す。


「……違いますお父様、見てください! あのぬいぐるみからは、ほんのりと温かい聖なる魔力が溢れ出ている……! この凍てつく冬の日に、自らの体温と慈愛でみんなを温めようとしているのです……!」


兄様レオが、鋭い観察眼(大勘違い)でメガネの奥の目を輝かせる。


「おおお……! ぬいぐるみ=慈愛、そしてそのぬくもりと重み……! 将来はこの冷え切った人の心や、国全体を優しく温かく包み込む『聖女』……いや、世界を救う『最高峰の治癒術士ヒーラー』になるに違いない……!!」


国王おじ様が感動のあまり拳を握りしめて叫んだ。

(えええええっ!? みんな深読みしすぎだよーーー!? ただのピピの『重り入り発熱ぬいぐるみ』だから!! 私はただ筋トレしながら寒さを凌ぎたいだけなのに、なんで将来の夢が『聖女』とか『ヒーラー』になっちゃってるのーーー!?)


「(ふふっ、みんなすごい勘違いをしているけれど……フランが『筋肉で病気を克服して元気に生きる』っていう目標には、あながち遠くもないかもしれないね)」


ピピが姿を消したまま、嬉しそうに優しく微笑んだ。

こうして、私は冬の1歳のお誕生日に、「国を優しく包み込む未来の聖女」として国中の噂になるのだった。

ご視聴いただきありがとうございました。本作の原作にあたる作品も、ぜひあわせてお読みいただけますと幸いです。

https://ncode.syosetu.com/n8541ml/

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