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あなたの知ってる魔物の知識、間違ってませんか?   作者: 水海雫
第一章 崩れる常識

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5/9

最後に見た景色は青色だった。

「……頭が痛い…飲みすぎたな」


昨日はいい月でつい酒が進んでしまった。その結果酷い二日酔いと最悪な悪夢を見ることになった。ついてない。


「おい!キース!」


部屋の外からあの髭面ゴートの声が聞こえる。初めは寝たふりをしようとしていたのだが、何度も部屋のドアを強く叩くので俺の二日酔いの頭に響いて酷い不快感だったため俺は仕方なく重い体を起こしてドアを開ける。


「なんですか?ゴートさん」


「なんですかじゃない!お前昨日の任務ギルドに協力を仰いだな!」


「げっ」


サリーの奴裏切りやがったな。


「な、なぜそれを?」


「ついさっきお前に会いたいとエルフの冒険者が来ていた。その冒険者から事情を聞いたのだ!われらの沽券にかかわるのだから任務は私たちだけで達成する必要が…」


まだゴートは喋っていたが俺の脳内には純粋な疑問が出ていた。

エルフの冒険者?エミリーだよな?

なぜあいつがここに?


「今どこにいますか?」


「あ?たしかあまりにも合わせてくれとうるさいので宿舎の休憩所に待たせてあるが……」


「ありがとうございます!」


俺はさっさとゴートに背を向け休憩所に向かう。


「は!?お、おい!話はまだ終わってないぞ!?」


俺はゴートの声を無視して一直線にエミリーがいる休憩所に駆けていく。背後からはゴートの声が激しく響いていた。


_______________________


「あ、守衛さん!」


休憩所の扉を開けると茶菓子を食べながら寛いでいるエミリーがいた。彼女は俺に気づくと立ち上がり駆け寄ってくる。


「やっと会えました!」


エミリーは目をキラキラさせながら俺を見つめてくる。その目はまるで昔の光景を強く思い出させる。嫌な予感がした。


「今日は、何の用だ?」


「はい、実は黒鉄の防人について聞きまして」


エミリーの言葉に俺の心臓は嫌な音をたてる。


「……何を聞いた?」


「えっと、ですね……」


エミリーは分厚い本を取り出して目を落として何かを確認して一人頷き本を静かに閉じる。


「守衛さんは数年前の戦争で多くの使役された魔物と一人で戦ったと聞きました!オークにゴブリン、スライム果てはドラゴンまでいたとか!」


エミリーは何がそんなに嬉しいのかにこにこしながら俺に顔を近づけ興奮していた。


「それだけか?」


「はい、何か聞いた気はするのですが、あとは興味なくて……そんなことより使役された魔物について詳しく聞かせてください!」


彼女はもはや黒鉄の防人についてなど興味はなく、ひたすら魔物についての興味しかなかった。その様子に俺は呆気にとられた。


「……気にならないのか?」


「え?何がですか?」


「黒鉄の防人についてだ」


俺は自分でも信じられないほどすんなりとその名を言えた。いつもならその名前を聞くだけで不快感が押し寄せてくるはずだった。だが、そんな気配は一切なかった。



「えっと……守衛さんは守衛さんですし……それでいいかなって」


彼女はぽつりぽつりと少し顔を赤くしながら小さく告げる。


「俺は俺か……」


誰もが黒鉄の防人と聞けば俺を恐れて忌み嫌われてきた。だが、彼女はそんなものには興味がないらしい。


「は、はは」


俺はなんだかおかしくて少し笑えてきていた。


「しゅ、守衛さん?」


いきなり笑いだす俺にエミリーは心配そうに声をかける。


「すまない、なんだかおかしくてな?」


「??」


彼女は何のことかわからず顔を傾げて困惑していた。きっと彼女にはなんの分からないだろう。しかし、確かに俺の中の何かを変えた。


「いいんだ。気にしなくてお前はそのままでいてくれ」


「は、はい」


何のことかわからないが彼女は素直に頷いていた。それでいいんだ。お前だけでもそのままでいてくれたら俺は救われる。


「で、俺に使役された魔物について聞きたいってどういうことだ?」


「そ、そうでした!あのですね使役された魔物について仮説が二つありまして…」


ただ彼女は楽しそうな顔で話している。俺は彼女の話を酒を片手に壁に背中を預けて静かに聞く。窓から見える空がどこまでも青く広がっていた朝のことだった。



その頃街ではある注意喚起がされていた。


子供をスライムに近づかすな。


街の掲示板には大きな文字でそう書かれていた。

魔物の中では唯一大人しく危険性がないはずの魔物。しかし、そんな常識は彼らには関係ない。その毒牙はまた一人被害者を生む。


「うっ」


少年の頭を覆うようにスライムがその柔らかな体を大きくさせて頭に被さっている。少年は必死に空気を肺に取り込もうと息をするが、入ってくるのはスライムの粘液だけだ。そうして粘液は肺を満たして少年は痙攣しながら倒れこむ。


少年が最後に見た景色は友達だったはずのスライムの青色だった






読んでいただき、ありがとうございます。

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