↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の剣は鰤出刃でした ~元料理人がダンジョンで覚醒し魔王を餌付けしてしまった話~  作者: よつ葉あき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/59

46.今の俺の理想


「今の俺は」

 

 ゆっくりと、はっきり言う。

 

「かわいい女の子の“リリー”よりも――

 弱さを隠そうとして、必死な“リリス”の方が、

 ずっと魅力的に思える」

 

 リリスの瞳が、大きく見開かれた。

 そして次の瞬間、

 その白い頬が、みるみるうちに朱に染まっていく。

 

「な……っ!」

 

 言葉を失ったまま固まる彼女を前に、

 俺は止まれなかった。

 

「それに、見た目だって……」

 

 一度、言葉を選ぶ。

 

「確かにリリーは可愛かったけど、今のリリスは……可愛いっていうより、綺麗って感じで……」

 

 視線が、自然と彼女の姿を捉える。

 幼さの残る、守ってあげたくなるような少女だった“リリー”。

 それに比べて、今のリリスは――

 すらりとした体つきで、全体のバランスがよく、引き締まった黒い服装も相まって、大人びた雰囲気を纏っている。

 

 ……正直に言えば、

 出るところは出てる、なんて評価も頭をよぎった。

 が、それを口に出した瞬間、確実にセクハラ扱いされる未来が見えたので、俺は慌ててその考えを振り払う。

 というか、今この空気で言う感想じゃない。俺は一度、軽く咳払いをして、言葉を選び直した。

 

「……俺は、好きだな」

 

 それだけを、正直な気持ちとして口にした。

 

「な、なに言ってんのよ!!」

 

 リリスが叫ぶ。

 顔は真っ赤で、

 耳まで染まっている。

 うん。

 これ以上踏み込まなくて、本当に良かった。

 心の底から、そう思った。

 

「リリス。やっぱりお前は甘すぎる」

 

 空気を切り裂くような魔王の一言に、リリスは目を吊り上げて彼を睨みつけた。

 だが、そんな視線をまるで気にする様子もなく、魔王は続ける。

 

「前世の記憶が戻るなんて……

 かなりのイレギュラーだ。

 だから、そこに気づけなかったのは、仕方ねぇ」

 

 魔王は静かに腕を組み、リリスを見下ろす。

 

「ただし」

 

 一拍置いて、にやりと笑う。

 

「誘惑するつもりで近づいたターゲットに、

 おめえの方が惚れてどうすんだよ」

「んなっ!!」

 

 ようやく落ち着いたかと思ったリリスが、またしても真っ赤になる。

 そして――

 

「うわっ!」

 

 突然、背中に重みを感じ、思わず声を上げた。

 

「お前、やるな」

 

 俺の肩を組んできたのは魔王だった。

 にやりと笑いながら、こちらを見る。

 

「サキュバスの誘惑に抵抗するどころか、逆に虜にするたぁ……

 お前、インキュバスの素質あるんじゃねぇか?」

 

 いやいや……そんなわけあるか。

 呆れて言葉を失っていると、リリスがずかずかとこちらに歩み寄ってくる。

 

「だーかーらー!

 なんでアンタは、すぐフェルンさんにくっつくのよ!

 もっと離れなさいよ!」

「別にいいだろ? 減るもんじゃないし」

 

 そう言って、魔王はリリスを挑発するように、今度は俺をぎゅっと抱き寄せた。

 長身の魔王の腕に、すっぽり収まる俺。

 俺の身長は、百七十に届かないくらいだ。

 リリーよりは少し背が高かったが、リリスとは、ほぼ同じくらい。

 

 ――そんなところも、

 “本来の僕《フェルン》”にとっては、理想的だったんだろうな。

 

 ふと、そんなことを思ってしまう。

 そして。

 今、俺を抱きしめている魔王は――

 背が高く、体格も良く、程よく鍛えられた身体つきをしていて。

 うん。

 男として、素直に憧れる理想的な体だ。

 

 ……いや、だからって。

 そんなことを考えていた、その瞬間。

 リリスが、魔王の腕を容赦なく掴み、

 俺から引き剥がした。

 

「フェルンさんも、なんで大人しく抱きしめられてるのよ!」

 

 はい、すみません。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。