第七章:大いなる欺瞞
音楽
https://www.youtube.com/watch?v=ao1IdhRfoCQ
匂いがする……。
暗かった……。
とても、暗かった……。
「肉の焼けるいい匂いだ……お腹が空いたな……」
「違う……これは欺瞞だ……」
「僕は、この匂いの正体を知っている……」
ジェットエンジンの爆音とともに、僕は床から跳び起きた。身にまとっているのは軍服だった。分厚い装甲が体を守り、胸元には小銃がぶら下がっている。僕の両手は、それに触れることすら怯えていた。
「装甲が重い……重すぎるかもしれない……」
「この服、お父さんを思い出すな」
「この小銃も……。僕は本当に、これを使わなきゃいけないの?」
燃えるような、放射性を帯びた太陽の光が、僕の家とよく似た、ひび割れた家の破壊された天井から差し込んでいた。
壁は破れ、砕け、穴だらけで、触れただけで粉々になってしまいそうだった。
通信機を持っていることに気づき、自分以外に誰かいないか確かめるために使ってみた。
「誰かそこにいますか?」
ただ雑音が響くだけで、返事はなかった。
「僕は一人だった」
壁にもたれかかると、埃が舞い落ちた。
床を見下ろすと、胸に小銃があった。
「これで何をすればいいんだろう?」
もし誰かを撃ったら……「その人はどうなっちゃうの?」
光の方へ顔を上げると、空は青かったけれど、太陽が皮膚を焼き刺すように痛かった。
進むべき道を探して立ち上がり、崩れかけた壁の隙間から外を覗き込んだ。
見たんだ……。
レヴァイアサンは廃墟と化していた。そして僕は、戦争を戦わなければならない。
「この小銃で?」
かすれた声が聞こえた。
「お母さん、あなたなの?」
「あの男の子だ!」
「助けなきゃ!」
……違う……。
あの子は死んだんだ……。
僕はただ、夢を見ているだけだ……。
目を覚ませ……。
背景から聞こえるテレビの音で目が覚めた。
僕はソファの上にいて、ハエがたかる食べかけの料理が転がっていた。
「片付けなきゃな……」そう思った。
―ザーッ―
(周波数変更。砂嵐)
画面がチカチカと点滅し、暗いリビングを病的な青白い光で照らし出した。上空からの冷徹で鮮明な映像には、見事な赤絨毯が敷き詰められたレヴァイアサン議事堂の階段が映し出されていた。防弾仕様のリムジンが次々と停車する。中から降りてくる大臣、外交官、高官たちは、誰もが隙のない礼服を身にまとい、公式報道陣のフラッシュを浴びながらシルクのネクタイを整えていた。
そして彼らの中に交じって、名誉衛兵に護衛されながら歩く反乱軍の姿があった。裏切り者たちだ。
(カメラ切り替え。ミディアムショット)
議事堂の演壇中央に立つその構図は、あまりにも滑稽だった。金のマイクの前に立っているのはアンキロスだった。仕立ての良い、上品でエレガントな高級スーツを着ているというのに、その頭には反乱軍の軍帽が乗っていた。そして彼の右手には、戦闘の傷跡が残ったままのアサルトライフルが、血が凍りつくほど自然な様子で握られていた。
欺瞞が濃い煙のように空気中に漂っていた。昨日まで逮捕状に署名していた張本人の官僚たちが、今や高級木材の議員席から総立ちで拍手を送っている。
アンキロスはマイクを調整した。彼の声がテレビのスピーカーから、一切の悔恨もなく重々しく響き渡る。
『我が国の社会構造の秩序と未来、そして新たなエネルギー秩序の再構築のために……古い鎖は断ち切られた』
彼は画面越しに、ソファにいるゲオの目をまっすぐ見据えるようにカメラを凝視した。
『目的は達成された』
彼が背を向けると、背後から預言者たちが列をなし、聖なる議事堂の赤絨毯を踏みしめる軍靴の音を響かせながら撤退していった。
―カチッ―
(即座のチャンネル切り替え)
『……これは非道です! 我々は名簿の開示を要求する!』
テレビのスタジオで、ある政治アナリストが顔を真っ赤にして机を叩きながら叫んでいた。
『政府がサーバーを一方的にシャットダウンするなど許されることではない! 軍区の郊外では何千もの家族が待っているんだ! 生存者の名前を! クーデター当日の戦死者名簿を要求する!』
彼の隣で、他のひな壇のゲストたちは硬直したまま虚空を見つめ、まるでマイクの電源が切れているかのように、男の叫び声を前に「目も見えず耳も聞こえぬ」盲目とツンを気取っていた。
―カチッ―
(チャンネル切り替え。残り15%のエネルギーを示すマクロ経済グラフィックとの画面分割)
メインニュースのキャスターの声は、人間らしさを一切排除したロボットのような響きだった。
『臨時ニュースです。お聞き及びの通り、現政府の総辞職が確認されたことを受け、議長は緊急選挙を招集しました。権力の空白は今週中にも直接選挙によって補填される見通しです。移行プロセスに正式に登録された政党は以下の通りです』
・7 Prophets(国家統一戦線)
・同盟党
・機械労働党
……
(画面は名前を列挙し続けたが、音声は甲高いビープ音の中に消え入り始めた)
―ザーッ―
『開票率65%を数え、「7 Prophets」が政権を掌握しました。間もなく行われる執務への宣誓式を目にすることになるでしょう。全く、狂気の沙汰としか言いようがありませんね、解説員官?』
(中継切り替え。レヴァイアサン中央広場からの生放送)
群衆の地鳴りのような歓声が、砂嵐の平手打ちのようにテレビから飛び出してきた。カメラは激しく揺れながら、何万人もの人間の海をかき分けて進む。喪に服す様子は微塵もない。静寂もない。商業区の巨大スクリーンに照らされた、集団ヒステリーとも言える不気味で狂乱じみたお祭り騒ぎがそこにあった。
紙吹雪が花火とともに空から大量に降り注いでいた。
人々は、数週間前のまだ熱を帯びた瓦礫の上で踊り狂っていた。若者も老人も、急ごしらえで印刷された「7 Prophets」の紋章入り旗を振り回し、モニターにアンキロスの顔が映し出されるたびに大歓声をあげていた。
(現地のレポーターは、引きつったプラスチックのような笑顔を浮かべ、騒音に負けじと大声を張り上げていた)
『広場は完全に熱狂に包まれております! まさに民主主義の祭典です! 深刻な配給制限が続いていた数週間を経て、新指導部の総司令部は下層地区に向けて緊急措置として5%の電力を解放しました! 人々は安定の到来と、旧弊な官僚政治の終焉を祝っています!』
カメラのレンズが、汗まみれの顔で狂信的に目を血走らせた中年男をクローズアップした。男は息子を肩車しながら、カメラに向かって直接怒鳴り散らしていた。
『ついに気骨のある奴らが現れたんだ! 前の議会なんか知るか、俺たちが欲しいのは秩序だ! 新体制万歳! 浄化万歳!』
彼の背後では、群衆が即興の太鼓の音に合わせて軍事スローガンを唱和していた。彼らは放り投げられたわずか5%の電力の配給(パン屑)を祝福し、政府がマップから存在を抹消したばかりの、戦死した兵士たちの肉の焦げた臭いがまだ空気に残っていることなど完全に忘却していた。最悪の狂気だった。家畜が、ナイフを早く研ぐと約束した肉屋に向かって拍手喝采を送っているのだ。
―カチッ―
僕はテレビを消した。
画面は黒く染まり、ガラスに映る僕自身の青白い顔を突き返してきた。リビングの静寂は、腐った料理にたかるハエの羽音がはっきりと聞こえるほどに深くなっていった。
そして、テレビに映る自分の影を見つめていると、彼女の声が聞こえた。
「ゲオ、私たちの残酷な運命を変えなくてはならないわ」
「お前がそれを存分に苦しむことを願っているわ」




