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第六章:屈辱

巨神は崩れ落ち、二度と立ち上がることはなかった。

軍は撤退していた。

路面は血に染まっていた。


そして今……橋が落とされた。


「涙が、地面に落ちていく」


俺は、あのストリートへと降りていかなければならない。


「行きたくない」


呼吸が激しく震える。


非常階段を駆け下り、一階にたどり着いた瞬間、猛烈な飢えが襲ってきた。昨夜の夕食を抜き、今朝も何も口にしていない。渇きがじわじわと身体を侵食していく。肉体の疲労はすでに限界を超えつつあった。


そこはオフィスのような場所だった。本来ならロックされていたはずだが、戦闘の衝撃で窓ガラスがすべて粉砕されていた。俺はその窓から、外の通りへと這い出た。


「無人の街」

「煙の立ち込める街」


若い兵士たちが地面でのたうち回り、救いを求めて叫んでいた。


「何人かは、親父の部下だったのかもしれない……」俺はそう思った。


瓦礫の山を進んでいた時、何かを踏みつけ、痛みの呻き声が耳に届いた。足を引っ込め、視線を落とす。コンクリートの塊の下に、一人の兵士が挟まれていた。


「顔が見えた」

「俺と同じくらいの若さだ」 もしかしたら……友人だった男だろうか?


「死にたくない……お母さんに会いたい……」


彼は引き裂かれた肺を震わせ、絶叫した。


「俺の涙が、彼の言葉を追うようにこぼれ落ちた」


「お母さんに会いたいよ……」


「俺だって、自分のお母さんに会いたい」俺は心の中で呟いた。


「どうすれば……助けられる?」


「お母さん……お母さん、そこにいるの?……そこにいるんでしょ?……母さん……」


俺は、その現実に気がついた。


「この兵士は、耳も目もやられている……」


俺は歩き出すしかなかった。彼をそこに、見捨てたまま。



焦げた肉の臭い。


「普通の日常なら、香ばしい良い臭いだと思うだろう」


だが戦場において、その臭いは……不気味なほどに食欲をそそり、そして絶望的だ……隣の家のバーベキューではないことくらい、分かっている。


「失われた命の臭いだ」


「まだ幼くて、親父と遊んでいた頃……戦争なんてただのゲームだと思っていた」

「だけど戦争は現実だ……それだけじゃない、そこにあるすべてが、人間の内側を腐らせていくんだ」


今、ようやく理解した。


崩壊した大通りを歩きながら、俺はもう一度思い知らされた。

生き残って立っている男は、俺一人だけだ。


「爆発で五体を引き裂かれた死体」

「遠くから響き続ける、絶え間のない苦悶の叫び」


それがこの世界の日常。そして、立っているのは俺だけ。

どういうわけか、自分は運が良かったのだと悟った。


「生き残った兵士たちは撤退し、仲間を置き去りにした」

「ただの学生である俺に、一体何ができるっていうんだ?」


正規軍にすら、どうにもできなかったのに。


思考の海に沈みかけていたその時、幸運にも完全に押しつぶされた駐輪場が目に留まった。変形した自転車の金属フレームが、互いに複雑に絡み合い、ねじ曲がっている。


「どれも壊れているように見える」


しかし、その中の一台……へし折れた金属の最下層にある自転車が、奇跡的に無傷であることに気づいた。俺はありったけの力を振り絞って鉄の塊を退かし、ついにその自転車を引きずり出した。調べると、チェーンも車輪も生きている。


俺はサドルに飛び乗り、全身を駆け巡るアドレナリンの力だけでペダルを漕いだ。絶望の淵で、狂ったようにスピードを上げる。

リヴァイアサンの排水システムから露出した、断崖のような配管を飛び越え、歩道に乗り上げ、一度も振り返ることなく突き進んだ。


「あの肉の焦げる臭いから、必死に逃げるために」


少しずつ、戦闘区域から抜け出した実感が湧いてきた。猛スピードでペダルを漕ぐ俺の頬を、冷たい新鮮な風が撫でた。


「感じた……」

「自由だ」

「本物の、自由という感覚」


「俺は生き延びたんだ」そう思った。


予期せぬ歓喜が身体を満たしていく。中心地区から遠く離れた、我が家の近くまで戻ってきたのだ。


「やっと、母さんに会える」


そして、あの兵士の姿が脳裏をよぎった。



「立ち止まるわけにはいかない」


行かなければ。


ひたすらペダルを漕ぎ続けた。家に着くと同時に自転車を放り出し、玄関へと走った。扉を開けると、ひどくうろたえた様子で母さんが出迎えてくれた。


「その顔、どうしたの!?……煤だらけじゃない、灰を丸ごと被ったみたいよ」


「母さん! 俺、生きて帰れたよ!」


「一体何があったの? 正直に言って、まさか中心街にいたんじゃないでしょうね……」


「俺の目から勝手に涙があふれ出した。実の母親の目の前で、情けなくて、どうしても堪えることができなかった」


「ごめん、母さん……」


「泣きたいだけ泣きなさい、全部吐き出しちゃいなさい」


母さんは俺を居間へと連れていった……そこではテレビが鳴り響いていた。母さんは俺を膝元に抱き寄せ、優しく慰めてくれた。心地よかった。しかし、内側からは腐敗していくような感覚があった。俺は重い鎖を首に巻いていた……解き放たなければならない、だが決して口にしたくない真実を。


「母さん……」


「何、あなた?」


その瞬間、テレビの大音量が俺たちの空間を切り裂いた。


【速報】


【各地の市民が、7人の預言者を支持するため大規模なデモを開始】


一般市民のインタビュー音声:

『ついに、あの腐敗したシステムに立ち向かう骨のある奴らが現れたんだ! 奴らは失脚する!』

『引きずり下ろせ!』

『これまでの状況はあまりにも理不尽すぎた。人類のために、誰かが行動を起こさなければならなかったんだ!』


街頭は民間人で埋め尽くされつつあります。中心街で起きたクーデターに対し、市民は明らかに支持を表明しています。報告によると、主要な広場は現在も群衆で膨れ上がっており……


「思考が真っ白に、冷たく凍りついた」

「何が起きているのか、理解できない」

「こんなの、現実であるはずがない……」


「母さん! 何千人……いや、何万人も死んだんだ……俺には分からない……数え切れないほどの若い奴らが、あの化け物どもを食い止めようとして死んだんだぞ!」


「理不尽さと、行き場のない怒りの涙が噴き出した」

「すべてが意味を失っていく、その屈辱」

「いや、最初から意味なんてなかったのか。俺が知らなかっただけで」


「分かっているわ、あなた。落ち着きなさい……」


「いや、分かってない……もし真実を知ったら、そんな言葉は出ないはずだ」


「どういう意味? 母さんの言うことを聞きなさい、分かって言っているのよ」


「分かってない!」


「分かっています!」


「分かってないんだ」


「母さんの挑戦的な視線が、俺の心に突き刺さる」


「あいつらを、殺さなきゃいけないんだ……」


「何を言っているの、馬鹿なことを言わないで。誰にそんな思想を吹き込まれたの?」


「親父が、死んだんだ……」


「……え?」


「親父が死んだんだよ……」


「嘘……そんなの嘘よ。冗談を言っているんでしょう?」


「冗談なんかじゃない! あのクソ野郎どもが親父を殺したんだ! 俺が奴らを殺さなきゃならないって言った理由が、これで分かっただろ!?」


「嫌、嫌、嫌、嫌……そんなのあり得ないわ。どうしてあなたがそれを……」


「街が停電する前、オトローラ(Otrora)に呼び出されたんだ。この目で、死体安置所にある親父の遺体を見た。だけどその直後、電力が遮断された。間違いなくテロリストどもの仕業だ。だから俺は中心街にいたんだ」


「ご飯を食べなさい。話はまた後で……」


「母さんは部屋に引きこもり、鍵を閉めた」


廊下まで、母さんの明確な泣き声が漏れ聞こえてきた。その間も、テレビは恥知らずで、反逆的で、裏切りに満ちた放送を垂れ流し続けていた。


【見出し:政府総辞職。軍は降伏したのか?】


【リヴァイアサン内における衝突を終結させるため、緊急交渉および対話のチャンネルが開かれた模様】


【全区画において電力の復旧の目処は立っておらず、現在の供給能力は15%にとどまっています】


大統領は会見で次のように述べました。

『現在の状況を維持することは不可能です……我々は平和的な解決策を再考しなければなりません。どうか冷静に行動してください。必ずや、リヴァイアサンを完全に再起動させてみせます』


情報は分刻みで更新されており、街頭のリポーターたちは獲物を狙う猛獣のようにニュースを追いかけています。政治的緊張は最高潮に達しており……


どうして……どうして一般の市民が、あのテロリストや裏切り者どもを支持できるんだ?


罪のない人々を虐殺した奴らを、英雄として称えるのか?


お前たちは、何も見えていないのか?

「私が感じたこの痛みを、読者の皆様にも同じように感じていただければ幸いです」

https://www.youtube.com/watch?v=ao1IdhRfoCQ

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