第4章:「覚醒」
「私は、この瞬間を知っている」
「私なら、奴らに勝てる」
「分かっているんだ」
「私には、できる」
私は震える両腕を掲げ、魂の底からその言霊を紡ぎ出した。
「――風の舞」
ブリッジの中央で、燃え盛る天空を冷酷に見つめるあの軍服の男へ向けて、その手を照準する。
「私は覚えている」
「私は、絶対に失敗してはならない」
「私の記憶は、決して安っぽいファンタジーなどではない」
「私は覚えているんだ」
「この記憶は、都合のいい幻影でも、欺瞞の錯覚でもない」
「これは、現実に起きた真実だ」
「私はすでに、この目で見たのだから」
「風の舞――!!」
……。
……。
……。
大気は、微かにも揺らがなかった。
「――くそ、が……っ!」
私の奥歯が軋みを上げ、全身をどす黒い不満(焦燥)が支配していく。
私の表情は、信じ難い現実の前に醜く歪んでいった。
風は、私に微笑まなかった。
「嘘だろ……頼む、応えてくれ……!」
しかし、大気は冷酷な静寂を保ったままだ。
「……チッ」
あの赤き瞳の軍服の男が、私の哀れな姿を僅かに一瞥した。
彼はただ、退屈そうに虚空を見つめると、そのまま重力に身を委ねるようにして、ブリッジの端から下方へと身体を落下させていった。
男の消失と共に、限界を迎えていたブリッジが本格的に崩壊を始める。
私は「我が家」へと続くそのルートを断念し、無様に後退するしかなかった。
渡り切ることは、叶わなかった。
母の待つ家へ帰るという私の小さな信仰が、足元からパラパラと崩れ落ちていくのを、私はただ冷たく感じていた。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
……。
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