第8章 : 生とは、すなわち地獄(第3部)
最も愛おしき主星、太陽の光が沈みゆく夕暮れ。その僅かな残光に照らされた惨憺たる街並みを、僕たちは歩いていた。
空を埋め尽くす無数の点——敵だ。
レヴィアタンの天空は、苛烈に荒らされていた。
熱を帯びた希望の呟きと静寂なる闇の狭間。修復を乞う亀裂の狭間。レヴィアタンの最上層と最下層の狭間。流された温かい血と、飢えによる冷たい死の狭間。卑劣で残忍な者たちは身を潜め、義と勇気ある者たちが立ち上がった。
黒ずんだ高層ビル群は風に舞う羽毛のように崩れ去り、塵となって街路へと崩落していく。
風が四方八方へと吹き荒れた。
闇の中の粉塵が僕の目を汚し、焼けるような痛みが襲う。
空から湧き出すあまりの敵の数に、天は暗闇に呑まれていた。
赤、青、オレンジ、黄色——あらゆる色彩が、最も無垢なる「黒」によって塗りつぶされていく。
崩壊するレヴィアタンのどこかに向かって急ぐクリスタルの足取りを、僕は衰弱した足取りで追った。
彼女の叫びが聞こえる。
「走って、ジオ! あなたの遅い足に合わせている余裕はないの、急いで!」
取り乱したようなクリスタルだった。
これが、僕の出せる限界の速さだ。
何かがクリスタルを突如として立ち止まらせた。
——『一筋の光』
——『レヴィアタンの先触れ(ヘラルド)』
半ばに引き裂かれ、傷ついたレヴィアタンの旧政府庁舎。預言者たちによって刻まれたその建造物には今、人類の先触れ——かつての宇宙探査隊の紋章であり、レヴィアタンの旧紋章が大きく掲げられていた。
『天を指す三基の宇宙探査ロケット、不吉な月、そして地面に打ち捨てられた虫眼鏡。それを飾る麦の穂と果実、そして種子』
旧秩序を拒絶する預言者たちの明確なメッセージ。棄てられたレヴィアタンの古き紋章——『土星の輪に浮かぶ、遠き一粒の星』。
距離は離れていたが、その光の合図は闇の向こうからはっきりと見て取れた。
光が次々と点灯し、空を照らし出す。雷鳴が雲を閃光で引き裂く。
そしてそこに、二つの巨頭による最初の激突が映し出された。
空を交錯する炎の線、煙の軌跡、そして爆発。レヴィアタンを護らんとする炎の輪のように、天は狂おしい潮流となって燃え上がった。
砲撃の火、ミサイルの爆発。レヴィアタンの全火力が、かつてない規模で展開される。
空が、炎となって崩落していた。
その光景は、僕の網膜に焼き付けられた……。
街路の間、ビル群の狭間、そしてその一つの頂において。クリスタルは視線を高く、遠くへと向けた。雷鳴が空に閃くたび、その反射の中に、人知を超えた力を纏ったシルエットが浮かび上がる。
レヴィアタンの紋章の上にそびえ立つ、三つの影。
浮遊しているようだった。足は一切地に触れていない。おそろしい光景だった。
——『太陽が、その最後の光の息を吐き出し終える』
……
——『赤く熱した金属のような六つの点が空に展開し、電球のごとく眩い赤熱を放つまで燃え上がった』
風が僕の残された力を奪い去り、クリスタルの髪が時折視界を遮る。
僕は開いた口が塞がらず、目を見開いたまま空の光景に釘付けになっていた。網膜に、その瞬間が刻み込まれる。
——『その時、それは起きた』
燃え盛る光が、一人のシルエットを露わにした。制御を失った風に髪をなびかせるオレンジ色の髪の人物。その両手は、原初なる炎の霊そのものを呼び覚ましていた。離れた場所で漂う二つの灼熱の腕輪が、制御を失って旋回し、唸りを上げて舞う。
——『そして、あまりに絶大な力が天そのものへと解き放たれた』
雲も、雨も、雷鳴すらも、神性に匹敵する力によって傷つき、燃え上がった。
空は澄み渡り、雲は「焼き尽くされた」。何一つとして抗えなかった。夜空は満天の星々で満たされ、それによって残酷な現実が露わになる。
空の彼方から現れた、大陸にも似た暗い影——それが原初の炎によって傷を負っていた。
巨大な原初の炎の影は力尽きるように失速し、レヴィアタンの紋章の頂部へと崩れ落ちた。
続いて残る二つの影が、その全力を解放する。
まず、青みがかった闇でありながら眼を射るような眩輝。見つめれば青い太陽のように輝くその光が、地上に蠢くあらゆる敵を機械的に根絶していった。
そして最後の影は、一切の光を発していないようだった。しかし、その力は強大で、制御不能なまでに圧倒的だと肌で感じられた。
その腕輪は制御を失って旋回し、遠くで灼熱を放ちながら舞っていた。
体に猛烈な重圧を感じ、僕の膝が崩れ落ちる。重みが増したような感覚——地球の重力そのものにズレが生じているようだった。
何が起きているのか確かめようとしたが、周囲のビル群が浮遊し、歪み、崩壊し始めた。飛行の最中に塵と化していく建物。その中に露わとなった敵へ、軍の砲撃と弾幕が容赦なく、即座に空中で引導を渡す。
レヴィアタンの構造物が、感染の存在するあらゆる場所で選択的に浮遊し始めていた。
すると、一度は落ち、消えかけた炎が再び立ち上がり、制御不能な火柱となって蘇った。まるで竜巻のような炎が、それ自身の上で形成されていく。
——『その炎は狂ったように旋回し、徐々にただ一つの点へと収束していった』
二つ目の太陽が顕現し、異様な暴力性と威力で天と地を照らし出した。その光が再び、恐ろしい新たな真実を暴き出す。
引き裂かれた天空の亀裂の中で、満天の星空がゆっくりと消えていく。雲などではない、虚無の彼方から飛来した「何か」——再生を始め、空全体を呑み込みつつある蠢く傷痕。
何かが、地球そのものを丸呑みにしようとしていた。
「……インフェクション・プラネット(感染惑星)」
クリスタルが言葉を挟んだ。
「感染惑星……?」僕は問い返す。
「そう、あなたが目にしているのは、それよ」
「……列車システムに電力がないわ。立ち往生ね、ジオ」
「そんなことはどうでもいい」と僕は呟いた。
「ジオ、不可能なように思えるかもしれないけれど……絶対に方法はあるはずよ」
……
……
……
時間が過ぎた。数時間かもしれない。激突の音は次第に当たり前のものに思え始めていた。日常になっていくのだろうか? そう思考が過る。遠い出来事のように思えて、それは僕たちのすぐ頭上で起きていた。
一撃ごとに、爆発ごとに恐ろしさはあったが、僕はとっくの昔に恐怖を失っていた。ただ、最悪の結末を待つだけだった。
僕は列車の車両の上に横たわり、苛立ちを隠せないクリスタルが、人間とシンセティック(合成人間)のための民間列車を動かそうと奮闘する姿を眺めていた。
レヴィアタンの列車運行システムには、停電で立ち往生した時のための緊急バッテリーがあるはずだと、彼女がぶつぶつと呟くのが聞こえる。
彼女は列車を動かすためのスイッチや配線を探し求め、車内を端から端まで歩き回りながら分解していた。
僕は力を失って横たわったまま、僕たちの愛するレヴィアタンが、過剰な恥辱と暴力に塗れて崩壊していく様を見つめていた。
読者の皆さん、いつも本当にありがとうございます! 大好きです!(笑)
まずは嬉しい報告から。なんと、第1巻が再びランキングに返り咲きました! 僕自身、本当に驚いていますし、感謝の気持ちでいっぱいです。
さて、正直にお話しすると、今回の第2巻は前作ほどのクオリティに達していないと感じられたかもしれません。前作は同じ編集者の手によって3度にわたる校正・推敲を経て世に出たものでした。
一方で、今作はまだ一度も編集の手が入っていない状態です。どんな物語も、最初のバージョンはどうしても粗さが目立ってしまうものです。ですが、ご安心ください。間違いなく、しっかりと推敲・編集を行った完成版をお届けすることを約束します。
満足のいくクオリティに到達するまで、何度も推敲を重ねていきます。
そして、もう一つとても重要な知らせがあります。
次回以降、物語のフォーマットを新しく変更する予定です。
章の冒頭に【登場人物】、【日付】、熟考のうえページの中央に【物語の舞台となる場所】を配置する形式をとります。
ここから先は、真の「ダークファンタジー」と呼ぶにふさわしい、最高の物語を100%のクオリティで追い求めていきます。
……
最後に、少し個人的なお話を。
ここ最近の僕は、本業の仕事に追われ、執筆に充てる時間がなかなか取れずにいました。「薬局」のような、極めて清潔で静寂に包まれた環境で働く日々の中で、先日、この物語の原点となった最も古い楽曲の一つを聴き返してみたんです。
その一曲を聴いた瞬間、この物語に命を吹き込んだ数々のコンセプトが、怒涛のように脳裏に蘇ってきました。
このミクロコスモス(小宇宙)に没頭することの楽しさ。そして、この独自のスタイル、この物語の紡ぎ方を誰にも共有せずに終わらせるなんて、あまりにも勿体ない——そう強く思い直しました。
一人で抱えるにはあまりに壮大で、あまりに複雑で、高すぎる目標かもしれないと怯えることもありました。けれど、自分だけの署名が刻まれた全く新しいコンセプト、新しいスタイル、新しい世界観を提示するという挑戦に、僕は心底魅了されていたのです。
最初から完璧に到達することなんてできないと、常に痛感しています。
ですが、僕がこれまで構築してきたどんなシステムも——それが銀行向けであれ、保険会社向けであれ、ECサイト向けであれ、あるいは読者の皆さんへ届ける物語であれ——初日や二日目で完成するものなど一つとしてありませんでした。
システムとは、日々少しずつ形作られ、浮き彫りになった不完全さを一日一日磨き上げていくものです。
第1巻を書き上げるのには2年がかかりました。もっと良く、もっと完成度を高められたはずだという思いはもちろんあります。
けれど、時間は刻一刻と過ぎていきます。良いシステムを作り上げる唯一の方法は、「層を一つずつ重ねていくこと」。小さく作り、大きくスケールさせることができないシステムに、存続の道はありません。
だからこそ、この言葉を皆さんに贈ります。
『いかなる構造物も、石の上に石を重ねることでしか築かれない』
あ、それと:
『ある日ふと振り返って思うのだ。「これ全部、僕が作ったのか? 信じられない。いつの間にこんなところまで来たんだろう?」と』
朝起きて、自分が書いたコードが100万行を超えていることに気づき、「いつの間に?」と驚くあの日と同じように。
これからも、皆さんと一緒に歩んでいきたいと思います。
現時点でのストックはここまでとなりますが、次に届ける章は、最初からより高く、より確固たるクオリティでお見せすることを約束します。事後の修正に頼らずとも誇れるよう、フォーマットの刷新と共にその目標へ挑んでいきます。
それでは、また次回お会いしましょう!
読んでいただき、ありがとうございました!




