第2章 : ジオとクリスタル、そして蒼白き光(第2部)
少し狂っているのか、あるいは命知らずなのか。確かなことは分からないが、私はとにかく一人の女性の後を追って家を出た。
レヴィアタンの街を歩く。夕暮れがすぐそこまで迫っていた。
そして夜が、この残されたレヴィアタンの最も醜い素顔を曝け出し始める。
病に侵されたビル群。コンクリートの皮膚はひび割れ、建物を辛うじて支える金属の骨組みが剥き出しになっていた。
時間の感覚を失っていた。あの家に一人置き去りにされてから、本当に多くのことが起きた。それでも、私は生き延びてきた。
「病魔に襲われ、すべてを失っても、私は立ち続けてきた。本当の意味で諦めたことなど、一度もなかった……」
「クリスタルが、まるで私のすべてを見透かしているかのような、魅惑的な視線をこちらに向けた」
「私の瞳は小刻みに震え、言葉は喉の奥でせき止められた」
「クリスタルは本当に美しかった。それは、彼女の持つ善意ゆえだろうか?」
「彼女の表情には、私を心地よくさせる何かがあった。……これは、安心感なのだろうか?」
「しかし、周囲の情景とのコントラストはあまりにも残酷だった」
「内戦によるものか、あるいは自然の猛威によるものか、引き裂かれた道路」
「湿気と冷気が、再び大気の中に忍び込み始めていた」
「崩壊したセメントの臭い」
「まだ降り出してはいない雨の匂い」
「夜がもたらす、まるで呪われたかのような深青の色彩」
「何年も続いている電力危機のための、非常用ライトの赤」
「昼間は食料や部品を売っていたであろう店は、最も頑丈な金属のシャッターで閉ざされ、鉄格子で厳重に守られていた。まるで、野犬のように狂暴に解き放たれたストリートから、店主たちを守る檻のようだ」
「夜の帳が下りたばかりだというのに、通りは完全に静まり返っていた」
「本当に、人っ子一人いない」
「まるで、夜になると這い出てきて、お前や家族を喰らう凶暴な怪物の存在を、誰もが恐れているかのように」
「湿っぽく、不快な寒さの中で、墓標の間を吹き抜けるような風の口笛が響く」
「間もなく、雨が降るだろう」
「壁という壁には、落書き、犯罪組織のマーク、あるいは見たこともない奇妙なシンボルが描かれていた」
「私が最後にその足で隅々まで歩き回った時から、レヴィアタンは変貌してしまっていた」
「かつてのレヴィアタンは、銀色に輝き、あの青空の色をした場所だった」
「空の最果てまで広がる、巨大な雲」
「安全な場所だった」
「しかし、今はもう違う……」
「私は壁に残された落書きや、人々が残したメッセージに目を向け始めた」
判別できるいくつかの文字には、「はぐれてしまった」「娘を探している」「父親を探している」「すべてを失った」といった切実な言葉が並んでいた。
あるいは、安全な区域や避難所の情報、進むべき方向を示すテキスト。
そして他のものは、ただ政府への憎悪を剥き出しに吐き出していた。
「肺に吸い込んだ瞬間、身体を蝕むようなあの重苦しい湿気。何かに窒息しそうなその湿った臭いが、私を不快にさせ始めていた」
「クリスタルの視線。彼女は一切の躊躇いも、目に見える恐怖もなく、一歩一歩進んでいく。まるで彼女にとってはこれが日常であり、レヴィアタンの何かが決定的に壊れてしまったことなど、気づいてさえいないかのように」
「壁には、本当に多くの絵が描かれていた」
「そこには無数の物語があった。壁を通じて助けを求める人々の声、あるいは……現政府への単純な罵詈雑言」
「その絵の中に……3羽の鳩が飛び立ち、それらを包み込みながらも解放する半円のマークがあった」
「クリスタル、あの白2羽と黒1羽の鳩のグラフィティ……あれはどういう意味?」
「――被災者や、行く当てのない人たちを支援する組織のマークよ」
「『迷子になった人たちのための』」私は心の中でそう思った。
「私たちは歩き続けた。崩壊寸前のビル群の闇や影によって細切れにされた、非常用の赤い光だけが私たちを追ってくる」
「目を凝らすと、ビルのファサードが完全に崩落し、かつて誰かが暮らしていたリビングや部屋の『生活』が、剥き出しになっているのが見えた。一つや二つではない、おそらく何百ものアパートメントの残骸だ」
その時、私の目を引くもう一つの絵が現れた。
「また別のグラフィティを見つけた」
「翼を丸めた一羽の天使。抽象的で、断片化された象徴的な白と黒で描かれ、その両手は血に染まっていた」
「一目でそれと分かる、ロゴのようなシルエット」
「クリスタル!」
「――何、少年?」
「あの白黒の断片的な天使の絵を見たんだ。あれは何の意味?」
「――テロ組織よ……」
「じゃあ、あの天使は何を表しているの?」
「…… ……そうね……彼らは『選ばれし者』について語っている。あるいは、ある種の『予言』について……。一人の救世主が、己の手だけで天に触れる。そしてそれを成し遂げた時、不義なる者、罪人、すべての無慈悲な者たちの血でその両手を洗う。特に、己の民を忘れた者たちの血でね」
「あの方舟の天使が、私たちの統治者たちの血でその手を染める。彼らはそう主張しているわ」
「でも、そんなの不可能だ……。誰も、我が政府の7人の指導者に勝てるわけがない」
「クリスタルは突然足を止め、目を細めて私を見つめた」
「――あんたは、誰もこれを終わらせられないと思っているの?」
「ああ……そう思う。たった一人の人間が、どうやってそんなことを成し遂げられるって言うんだ?」
……(静かに降り出した雨が、ストリートに小さな水たまりを作り、そこに二人の足音が響き渡る)
「――そうね……。これまでに誰も見たことがないほどの、圧倒的で凄まじい暴力をもってすれば、可能かもね。……彼らはそう言っているわ」
……
……
……
(沈黙が続き、ただ足音だけが残された)
「少しずつ、雨は軽い霧雨から、肌を刺す不快なものへと変わり始めていた」
「クリスタルが突如、その歩みを止めた」
「――止まって……」
「彼女は左手を私の胸元に当て、私の前進を即座に阻んだ」
「その押し留める力の強さに、私は息を呑んだ。彼女の手は硬く、引き締まっていた」
「一歩も立ち入れないほどに、強固な壁だった」
「何があったの? なんで止まるんだ?」
「――しっ」
「彼女を見つめると、その視線だけで私を黙らせた」
「背中に添えられた彼女の手の素早い動きで、私は強制的に屈まされた」
「何が起きたんだ、なぜ止まった?」急なパニックが私を支配し始め、即座に答えを求めて周囲を見回した。
「クリスタルの瞳が、深い闇の中から、肉眼では辛うじて捉えられるほどの、チカチカと明滅する青色へと変色した」
その時、重力に敗北し、崩壊した、あの病的なビル群に囲まれた場所で――コンクリートの塊や砕けた骨組みが、まるで倒れたドミノのように至る所に散乱している、その小さな広場の廃墟で。
ある声が響き渡った。辛うじて土台だけが残っているビルの残骸に、その声が木霊する。
「陰鬱なエコー。若者の声だった。少し甲高いが、完全に覚悟を決めたトーンが、私たちを包む影と瓦礫の間に響いた」
「――止まれ……どこへ行くつもりだ……」
ビルの5階の暗闇、瓦礫の影から、私たちに向けられた冷たい拒絶の言葉。
「凍りついたクリスタルの視線は、さらに冷たさを増し、氷点下の温度を感じさせるほどだった。彼女の瞳の青い輝きが、夜の闇の中で激しく際立ち始める」
「彼女の視線が、ビルの高所のあちこちへと素早く動き始めた」
「私は彼女の視線を追った。そして追いついた時、彼女が何を捉えていたのかを私も理解した」
「7つの影が、瓦礫と暗闇の衣を脱ぎ捨て、満月の光の下へと姿を現した。冷たく白い、そして青みがかった夜の光が、彼らの顔を静かに照らし出す」
カルトの法衣のような衣服を纏い、硬直した構えを見せる彼らは、私たちを一歩も先へ進ませるつもりはないようだった。
「さっきまで決意に満ち、優しく、気高さを感じさせていたあの少女」
「風が小さな雨粒をなぎ倒し、それらはまるで大気の中に浮遊する無数の白い点のように見えた」
「私が知っていたクリスタルのイメージが、少しずつ遠ざかり、まるで架空の水平線の彼方へ消え去っていくように感じられた」
「クリスタルの細められた瞳は、行く手を阻む者たちだけを凝視していた」
「彼女の視線が私に戻ることは二度となかった。まるで、私が最初から存在していなかったかのように」
「微小な雨粒が白い点のように浮遊し、風がそれを左側へと押し流す。彼女の髪は結び目から解き放たれ、風と雨のゆらぎの中で激しく舞い始めた」
「激しくなる雨のせいで、レヴィアタンの非常用電力が故障し始め、黄色や赤のライトが怪しくチカチカと明滅し、消えかけていた」
「クリスタルの表情が一瞬だけ変わった。ほんの少しだけ強張りが解け、彼女はうつむいた。刹那の瞬き。彼女の内側で何かが壊れたようだった。まるで、何かに深く悔恨しているかのように」
「彼女はある種の諦念を抱きながら、地面を見つめていた」
「しかし、決して私に視線を返すことはなかった」
「ライトが点いては消え、今にも完全に途絶えそうな雨の夜」
「闇と瓦礫に身を包んだ影たちは、満月の光の中に辛うじてその輪郭を浮かび上がらせていたが、そのカルトの衣服のせいで、彼らの正体を識別することは不可能だった」
「クリスタルは依然として地面を見つめ、ほんの一瞬だけ瞬きを繰り返していた」
「一人の影が、クリスタルのその奇妙な静寂を破った」
「その男は顔を覆っていたフードを脱ぎ捨て、己の素顔を晒した」
「かなり若い男だった。緑がかった青い瞳、金髪、そして端正な顔立ちをしていた」
「彼の視線はクリスタルの姿から微動だにしなかった。まるで、これから取り立てるべき『負い目』でもあるかのように」
「その少年の瞳が、夜の闇の中で妖しい魔力を持つかのような、淡い青色の輝きを放ち始めた」
「次の瞬間、クリスタルは彷徨わせていた視線を止め、彼を真っ向から見据えた。彼女の瞳もまた、濃密なブルーへと染まっていく。満月の光と夜の闇の間、崩壊したビル群の廃墟と、影の中に潜む7人の目撃者に囲まれた空間の中で」
「その瞬間は、青白い白、夜の光の青、そして私たち全員を平等に包み込む闇の間にあった」
「間違いなく、月を想起させる場所」
「狂気の領域」
「クリスタルは両手を解放し、デザインの異なる2つのブレスレットを露出させた」
「それらが、激しく回転を始める」
「クリスタルは何かに臨む覚悟を決めたようだった」
「しかし、私は完全に彼女の世界から消え去っていた」
「彼女は、ただ一つのことだけにその全精神を集中させていた」
金髪の少年が両手を広げると、満月の光の下に、プロトタイプのような2つの白いブレスレットが現れた。
「クリスタルの顔に、明確な歪みが走る」
「チッ!」明らかに、目にしたものが気に入らないという拒絶の音。
「少年のブレスレットもまた回転を始め、それらが完璧な状態で機能していることを証明していた」
一歩、また一歩。金髪の少年はビルの最先端、崖の縁へと進んだ。そして彼の一歩が建物の限界を超えた時――少年がそのまま地面へと落下するかと思われたその瞬間、彼は空中を歩き始めた。まるで一歩進むごとに、何かがその足を支えているかのように。
「落下の重力を完全に克服し、一歩一歩、風の上を浮遊しながら、彼はその小さな廃墟の広場の、まさに中心の真上へと着地した」
彼が頭を上げた。その今や淡い青色に変色した瞳が、厚い雲の隙間から覗く満月によって、星々すら掻き消された暗い夜空に冷たく際立つ。
「そして彼は、眼下にいるクリスタルを見下ろした」
「言葉は沈黙していた。そんなものは必要なかった」
「クリスタルの視線が天を仰ぎ、その視線が金髪の少年の眼差しと交錯する」
「すべてが停止したかのように思えた」
「浮遊する雨の点」
「斜めに吹き付ける風」
「ビルから舞い落ちる書類の束」
「月光の下、呼吸のたびに払いのけられる塵の粒子」
そして、私はそれをもう一度目撃した。
あの幽霊がそこにいた……。
「『お前は……』」
「『……』」
「『運命』」
いや、幽霊などそこにはいなかった……。私は二度と彼女に会うことはないのだ。時間が不気味に繰り返されているようだった。
それは、去ってしまった誰かへのただの郷愁に過ぎない。そして今、目の前には彼女がいる。しかし、それは遠いエコー(残響)に過ぎないのだ。
「私が永遠に失ってしまったものの、ただの投影」
「二度と届かない、遥か彼方の記憶の幻影」
「そして、すべてがこの結末へと収束していく」
「私が最初に失った『機会』は何だったのだろう。私に罪はなかった。何も知らなかったのだから」
「彼女は今、どこにいるのだろう」
「そして私は、今どこにいる?」
「私たちは死によって切り離された、並行世界を生きている」
「しかし、運命の絆によって結ばれている」
「互いに、決して手が届かない場所」
「それでいて、時間ゼロの檻に囚われている」
「私は生と死のサイクルを流れる時間の狭間で、完全に迷子になってしまった」
そして今、そこから逃れることはできない。
「凄まじい暴力の連鎖が始まる、まさにその刹那の瞬き」
「そして、時間が再び激しく動き出した」
あの、足でいかなる大地も踏まず、風の上を歩く金髪の少年が、風の推進力を爆発させてクリスタルへと突進した。まるで放たれた一発の弾丸のように。
「ビル群が、内包していたすべての書類をぶちまける」
「ビル群が、その内臓(中身)のすべてを私たちの頭上へと吐き出した」
クリスタルは金属の棒を前腕で受け止め、防御した。しかし、その棒の先端には鎌のような刃が仕込まれており、その独特な形状のせいが滑り込み、クリスタルの背中にその鋭い先端を僅かに突き立てた。
「二つの圧倒的な力が衝突した衝撃で、大地が激しく鳴動した」
「激しい衝撃波により、雨が3秒間、完全に消滅した」
「轟音。それに続く、絶対的な静寂」
「聞こえるのは、己の心臓の鼓動だけ」
「風の狂気によって、クリスタルの衣服が激しく波打つ」
「背中合わせの二つの影。まるで、互いをより強い力で粉砕するためだけに、速度を上げ続ける二つの列車の衝突のようだ」
クリスタルは極めて滑らかな動きで重心を深く落とし、右手を受け流しながら、その超人的な破壊力をもって、金髪の少年の顔面へ目掛けて一撃を叩き込んだ。
「金髪の少年の姿が、文字通り消失した」
「そこには、彼の残像すら辛うじて残るのみだった」
衝突に伴う凄まじい塵の爆発が、その場を完全に包み込んだ。
たった一瞬の挙動で、クリスタルは己が何者であるかを完全に証明してみせた。
「人間ではない、何者かであるということを」
クリスタルは地面に視線を落とし、瞬きを一つした。それから目を強く閉じ、一瞬だけ顔をしかめた後、再び目を開けた。何事もなかったかのようにその表情を完全に弛緩させ、彼女はどこか傲慢さを湛えながら頭を上げた。
「――他に、誰かいる?」
掠れた冷徹な声が、廃墟の空間に重く木霊した。
これが2度目の改稿となります。最初の改稿版は公開していませんが、今回のバージョンは、オリジナルを1000倍は超える出来栄えになったと確信しています。物語のテンポや間も完璧であり、これこそが私がずっと追い求めていた表現だと感じています。このクオリティを、これからも永遠に維持していきたいです。
皆さんに楽しんでいただけることを、心から願っています。




