184.陞爵
「勲一等、ガエルミュラント男爵。汝には青鷹大十字勲章を授与し、北東鎮守軍総司令官の任を授ける。新たに帝国から奪った領地の半数を統べ、その地をスカジャンと名付ける。またスカジャン伯爵に昇爵するものとする。なお飛び地となるため、ガエルミュラントは王族直轄地に戻す。よくぞやった」
「は、ありがたきお言葉。今後も王国のために粉骨砕身する覚悟であります」
「……うむ」
シガンは勲章と伯爵位、そして領地替えにより大きな領地を手に入れた。
元は帝国領であったため管理が難しいが、そこはシガンだ。
荒れ果てたガエルミュラントを一年と経たずに掌握した手腕がある。
結局、スカジャンはこの世界では都市名として名を残すことになったが、シガンに不満はない。
シガンに恐れを抱く王族・貴族らは多いが、今回の戦争による貢献に報いなければもっと恐ろしいことになる、というのが一致した意見だった。
しかしそれによって、シガンに巨大な領地と自由になる兵力を与えたのも事実であり、なんとかその忠誠を王国に繋ぎ止めなければならないと王族・貴族らは考えていた。
シガンは「そこまで俺を恐れる必要はないのだが……」と思っていたが、度重なる暗殺者を退け、砦や一軍を破壊する魔術師を妻とし、勲二等のアドリアンロット伯爵家と南軍の勲一等であるザールムント子爵家との縁戚すらあるという戦力と地位において盤石の存在だ。
このような巨大な存在を恐れるな、という方に無理がある。
「世話になったな、ゼーベイア」
「いえ。まさか2年と経たずお仕えできなくなるとは思いもよりませんでした」
「手柄を立てたからな。金鉱山も王族に取られていたし、領地替えは望むところだった。戦争で上手く大量の領地を奪えて良かったよ」
「あれほど地図が塗り替えられたのは、歴史に残る大業です。シガン様の名前は歴史に残るでしょう」
「なんと言っても新しい都市はスカジャンだしな……」
「まさにスカジャンのシガンとなられるわけですな」
ガエルミュラントでゼーベイアに挨拶し、家財道具の移動を行う。
アデルと数えで二歳になる娘も連れて、スカジャンと名前を変えられた都市へ赴くのだ。
「旦那様、おめでとうございます。毎日のように新しい村を支配下に置いたり、都市を攻め落としたりと、活躍を聞かされるたび、私は戦うチカラのなさに無力感を感じてきましたわ」
「だが留守中の家を守ってくれたのはアデルだ」
「でもベルベットたちは戦場で傍に居続けられたでしょう? 羨ましかったのよ」
「そうか……とはいえアデルを戦場に連れていくわけにはいかない。娘もいるしな」
「ええ、もうすっかりお父さんの顔を忘れちゃっていますよ? どうするんですか」
「……貴族の悲しいところだな。スカジャンに着いたらちゃんと可愛がってやらないといかんなあ」
「今までの埋め合わせとして、目一杯、可愛がってください」
「ああ。アデルのことも、ちゃんと可愛がるよ」
「わ、私の話じゃありませんっ」
照れるアデルを可愛いと思いながら、シガンたちはスカジャンへと発った。




