183.戦争(6)
後続の貴族らが続々とシガンの指揮下に入っていく。
彼らとしては不本意だろうが、アドリアンロット伯爵が率先して指揮下に入っており、また伯爵が指揮下に入るようにと言えば、逆らうことの出来る貴族は大変、少ないのである。
爵位で勝る数少ない侯爵家は今回の戦争、当初は様子見に徹していたため完全に出遅れている。
まさかガエルミュラント兵500で国境の砦をたった一日で落として、その後も早々とアドリアンロット伯爵が合流し続々と王国の領地を広げていくとは思っても見なかったのだ。
ちなみに同格の伯爵家はそもそも数が少なく、北に関して言えばアドリアンロット伯爵以外に伯爵家はない。
そのため合流した貴族らはもれなくシガンの指揮下に入った。
もちろんシガンらに合流せずに独自に帝国領を攻める家もあったが、そちらは普通の戦争となり時間がかかる。
うかうかと時間をかけて戦争をしていると、どこからともなくシガン率いる軍が現れて結局、指揮下に組み込まれることになる。
そして北のシガンらは、南の軍勢の総大将が暗殺されたという報を受けた。
ロスマン王国の南軍の総大将はメルヴィガルト伯爵だった。
ザールムント子爵にはシガンの『長い手』がついているが、総大将の面倒を見る義理はないため、まんまと暗殺されたのである。
次の総大将は誰にするか。
軍議は紛糾した。
誰も暗殺されたくなくて、押し付けあったのである。
結果、ザールムント子爵が総大将になることになった。
武門の名家にして、北軍総大将のシガンの縁戚で連携もとりやすいという理由からだ。
ザールムント子爵は押し付けられた体で、まんまと総大将になったのである。
自分にはシガンから借り受けた『長い手』がついており、暗殺はよほどのことがない限り防げることを知っているので、安心して手柄を立てられる。
ザールムント子爵は伝心の形代の魔術具でシガンと連絡を取り合い、北軍との合流を目指すべく北寄りに進路を取った。
ロスマン王国の南軍を各個撃破しようと目論んでいた帝国の思惑は、ターラ王国の参戦によって変更を余儀なくされた。
皇帝は南東へ派兵し、ターラ王国の進軍を防ぐ必要があり、西のロスマン王国の南北合流を防ぐ余裕までは作り出せなかった。
というのも、西のターラ王国への補給線が、盗賊団『アンダーグラウンド』に度々、寸断させられたからであり、その対応に余計な兵力を使わねばならなかったからだ。
ミラン帝国は最早、二正面作戦を展開する余裕はなく、北東の少国家群も無視して講和の準備に入った。
実質の、降伏宣言である。
とはいえ両王国も帝国を解体して支配するだけの人的資源はなく、金を取り立てることで講和を為すしかなかったのだが。
かくして一年にも満たない期間で、戦争は終わった。




