185.スカジャンのシガン
元々が敵地であったため、スカジャンの領地にある各都市には兵士が駐屯し、支配を続けていた。
シガンは王国兵が横柄な態度を取ることを許さず、影による眷属化で兵士らに規律を強いた。
また各都市の名産を考えて言霊でテコ入れをすることを忘れない。
その仕事はまず兵士ら官が行い、徐々に民におろしていくという形で行われた。
特に重要なのは領都であるスカジャンの守りだ。
スカジャンの街は城塞都市として堅牢な守りを誇っていたものの、グリフォンとアティの〈ソル・フレア〉には無力だった。
シガンは街壁に対空の弩を用意したり、城壁を分厚く改装して兵士の行き来を楽にしたりと、さらなる堅牢性を追求した街へと作り変えていた。
円の外壁を五稜郭のような星型に変えたのもシガンの策だった。
星型の街壁のメリットは、星型の二辺から間に侵攻してくる敵兵に攻撃できるという点である。
弩と弓、魔術を想定して胸壁を設け、この大陸で最も堅牢な城塞都市を完成させるのに丸二年かかった。
これでも言霊で石切りから街壁の完成にブーストをかけてそれである。
二年の間に帝国は疲弊して、自然消滅を待つだけのような状態に陥っていた。
アデルは第二子を無事に出産し、約束通り言霊で男児を生んだ。
ベルは冒険者をそろそろ引退して子供が欲しいと言い始めている。
まだシガンとしては戦いたいので、ベルに抜けられると困る一方で、ザールムント子爵からは孫の顔を見せろと言われており、ベルの引退は秒読みとなっていた。
アティとターニアは相変わらずだ。
恋人から妻になった分だけ、シガンが求められる頻度や順番が厳格になった。
そしてガールは、未だに芽生え始めた感情を持て余しており、しかしシガンの恋人になりたいなどと言い出すような変化はなかった。
相変わらず●は気まぐれで、最近はあまり出てこなくなっていた。
とはいえシガンが●の気配を感じることはよくあるので、声をかけてこないだけかもしれない。
もうシガンは寿命で死ぬことはないから、たまに顔を見られれば用事がない限り話しかけてこないのだろう、とシガンは解釈している。
「パパ! 今日はお家にいるの?」
「おお、ステラ。……ああ、いるぞ。仕事が山積みだからな」
「一緒に遊んで?」
「仕事が一杯だから無理なんだよ。ステラ、お母さんたちと遊んでいてくれ。晩ごはんは一緒に食べような」
「ふーん。……わかった!」
アデルの長女にはステラと名付けた。
星という意味だが、星型の城塞都市スカジャンの娘には相応しい名前だろうとシガンが名付けたのだ。
アデルの長男が数えで三歳になったら、やはり星に関する名前をつけようと思っている。
可愛い盛りのステラだが、既に縁談がいくつも舞い込んでいた。
男親としては微妙な気持ちのシガンだが、政略結婚は避けて通ることはできないと覚悟している。
スカジャン伯爵シガンは、今日も書類に埋もれて冒険に出られず、しかし温かい家族を得て日々の幸福を噛み締めて生活していた。
ひとまずスカジャンのシガンの冒険はこれにて完結です。
続きを書いてもいいのですが、帝国は滅亡寸前だし、ターラ王国とはまだ国交もないし、そもそも今更シガンたちを脅かすような敵がいない。
神格者となったシガンはいずれ神となるかもしれませんが、それこそずっと先の話です。
ここまで読んでくれた読者の方々には感謝を。
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