182.帝都にて(2)
帝都では皇帝シュナウザーが兵を集めて、北方と南方に進軍する構えを見せていた。
勢いよく北方が制圧されていく報を聞きながら、皇帝はジリジリと焦りを見せていた。
「また失敗したと?」
「は。どうやら敵方にも暗殺を生業としている者たちが防護についているらしく、入り込んだ『暗闇』の者は戻ってまいりませんでした」
皇帝は私室で『暗闇』の長と話をしていた。
「ふむぅ、存外に隙きがないというわけだ。総大将のガエルミュラント男爵とはそこまでの男か」
「スカジャンのシガン……ベヒーモスを倒して叙爵されたというだけあって、周囲の者たちも歴戦の魔術師たちです。白炎の魔術以外にも何か切り札を隠し持っているやも知れません」
「パーティメンバーの暗殺の方も命じてあったが?」
「残念ながらそちらも……パーティメンバーのほとんどがシガンの妻という情報ですから、暗殺に対する防護もなされているのでしょう」
「上手く事が運ばぬな……」
「申し開きもございません」
「よい。それでは南方をどうにかするか。北はくれてやる」
「は。それではロスマン王国の南軍の総大将を狙いましょう」
「頼むぞ。南の方が帝都に近い。できれば南から各個撃破したいところだ」
そのとき、皇帝の部屋に伝令が来た。
「皇帝陛下、報告いたします! さきほどターラ王国から宣戦布告があり、東の国境の砦が破られました!」
「何!?」
「そして同時に北東にある少国家群も続々と宣戦布告し、我が領内に攻め入って来ています」
「……分かった。下がれ」
「は!」
皇帝は両手で顔を覆った。
盗賊団の被害で弱った帝国を相手にロスマン王国が快進撃を続けたという情報が、東のターラ王国を動かしたのだ。
帝国は大陸の中央に位置するゆえ、海に面した南以外を他国と接している。
西のロスマン王国が動いたため、東のターラ王国が遅れて動き出し、同時にターラ王国は北東の少国家群と連携して帝国に攻め入ってきたのである。
帝国は三方向の国々と戦争をしなければならない苦境に立たされた。




