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「………っ、頭…と頬、痛い…」
「ユーメリー様!?目が覚められたのですね、今旦那様と奥様を!」
目覚めた時、起きあがろうとして全身に痛みが走り力を入れられない事に気付く。特に頭とほっぺが痛い。そっと頬に手をやれば、少し腫れているようで。…え、少し?思い切り殴られたからもっと腫れるもんだと思ったんだけど。
私が喋るとアリーサがバタバタと扉から出ていった。なんかあのセリフとあの行動、デジャヴだなあ。
「メリー!」
「起きたのね?大丈夫!?」
血相を変えて両親が扉から入ってくる。2人とも、なんだか少しやつれたみたいに思える。…そのくらい、私のことを心配してくれたんだ。
「うん…痛くて、起き上がれないけど」
「ゆっくりでいい…君が無事なら、それで」
「ええ…1週間ろくに話すことも食べることも出来なかったんだもの、仕方ないわ」
………ん?1週間?
「いっ…1週間?」
「そうよ。…なんだか寝ぼけているみたいな感じだったわ。お医者様の話では極度のストレスの後遺症だろう、って」
「痛みが酷いなら鎮痛剤を打ってもらおう。今医者を…」
「メリー!」
「メリー様!」
扉から、また人が入ってきた。その様子を見てガツンと頭に激痛が走る。
「良かった、話せるようになったって?」
「メリー様…本当に、良かったです」
目の前の"男"に……、私は、全身が拒絶を表していた。
「…っ嫌!!来ないで、嫌だ、見ないで、出て行って!!」
「…メリー…?」
「一体どうし…」
「嫌だ!!嫌、嫌あ!!」
頭が割れるように痛い。きっと目の前の2人のせいだ。お願いだから来ないで。私を見ないで。痛い。痛いのは嫌。苦しい。頭が痛くて息が、上手く出来ない。
上半身を起こして少しでも離れようとベッドの隅にいった。頭が痛くて、痛くて、振り払うように頭を振る。痛い。どうしてこんなに痛いの?
「ツヴァイ、ジル。とりあえず出て行ってくれ。話は後で」
「でも俺、メリーと…」
「いいからツヴァイ、お母さんからもお願い。…ごめんね、今は」
「………かしこまりました、旦那様、奥様…」
パタン、と扉が閉まって、私はようやく息が出来る様になった。
「はぁっ、はぁっ…はぁ…っ!」
「大丈夫だよ、メリー。もう2人はいない。大丈夫、ゆっくり深呼吸してごらん」
「メリー、お母様が付いてるわ。さ、息を吸って?」
お父様に手を握られ、お母様に背中を撫でられて。安心はしたけれど、急に起き上がったせいでさっきよりも体が痛い。
「…ごめ、なさい。もう大丈夫だから」
「謝ることなんて無いさ。…今、お医者様を呼ぼう」
「っ…お医者様は男性?……男性は、嫌」
「…メリー………」
お母様が悲しげに目線を落としたけど、…今の私にそれを気遣う余裕なんてなくて。
「…そうだね。女性のお医者様を呼ぶよ」
私の手を握るお父様の手に、力が込められた。
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あれから更に1週間。
私は部屋から出られずにいる。
「メリー様、今日は朝日が気持ちいいですね」
「うん。たまにベランダに鳥が来るの、ご飯をあげたいから何か持ってきてくれる?」
「はい、よろしいですよ」
「ありがとう」
アリーサといるこの空間は日常でしかない。
体の傷はまだ少し青あざがあるけどだいぶ治ってきた。けれど心の傷はそうはいかない。
6日前、お父様は女性のお医者様を2人ほど連れてきた。1人は外科で、もう1人は精神科が専門だった。
精神科の先生によれば、あの時の恐怖がトラウマになり、男性そのものが当時の記憶を呼び覚ますトリガーになってしまっているせいで、自己防衛本能が働き男性を見ると痛みが走るようになったそう。
まあ、いわゆる男性恐怖症のようなものだ。
「さ、メリー様、お髪が完成しましたよ」
「…アリーサのヘアアレンジ、いつ見ても可愛い。自分じゃできないから」
「メリー様だからこそこんなに似合うんですよ」
「あはは、ありがと」
私の部屋にはメイドか、両親しか訪れない。
精神科のお医者様は言っていた。時間をかけるしかない、と。完治はあり得ず、緩和を目指すしかないと。
窓から日が刺す。ここから見えるあの大きな木に、昔ツヴァイとよく登っていたっけ。
…ツヴァイも、ジルも、他のみんなにも本当は会いたい。でも痛いのはそれ以上に嫌で。男性を見る時に起こる頭痛が早く無くなればいいな、と思う。




