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「がっ…!なんだ!?」
「あ?おい、……う゛っ!」
「チッ………!」
「逃がすな!!追え!!!」
「はっっ!」
その時だった。私に覆い被さっていた男が呻いたかと思えば、横にいる男も声を出して、もう1人の男はすぐに逃げていった。
同時に声が聞こえて、男たちはすぐに腰に差したファルシオンを取り出して応戦する。相手は…紛れもなくこの国の騎士団で。
「絶対に生け捕りにしろ!!楽に死なせるな!!」
「はい!!」
大男と応戦している茶髪の男がそう叫ぶと、どこからか弓矢が飛んできて賊の男に刺さった。見れば男の背中にも矢が刺さっていたから、最初の呻き声はきっとこれだったのだろう。
「があっ!?……っチ!さっきから矢、が……?」
「う゛……っ」
突然、ファルシオンで応戦していたはずの男たちが膝から崩れ落ちた。動こうにも動けないのか、倒れ込んだままビクビク震えるだけで一向に立ち上がらない。
「こいつらを縛り上げろ!………ユーメリー様!!ご無事ですか!?」
「…………」
茶髪の男が私に駆け寄って来る。ただぼうっと彼が私を布で大事そうに包むのを見ていた。
「…よく頑張りました。あなたはもう助かったんですよ」
「…助かった?…これは、夢ではない…のね?」
「ええ…もう、大丈夫です」
ぶるぶると体の奥底からの震えが止まらない。
助かった。私、助かったんだ。
さっきまでの冷静さとは打って変わって…どうしてだろう。恐怖が、湧き上がって歯がガチガチと真冬のように震えていた。
「大丈夫です。奴らに手出しはさせません」
「…っ怖………かった、わ」
「ユーメリー様…もう安心してください」
「怖かったのは、…死ぬっ…ことではなく!あいつらが!!私を殺す前に、私の!心まで殺そうとしたからよ!私を踏み躙って、ぐちゃぐちゃにして、全部壊してから私を殺そうとしたから!!!」
「……ええ、奴らには…相応の罰を」
「団長!残りの1人も捕らえました!」
「そうか。…お前ら!そこら辺の枝を集めてそいつらの尻にでも入れとけ!地獄を見させろ!」
「「「はっ!!」」」
周りにそう指示すると、騎士は私を見て微笑んだ。
「さあ…参りましょうユーメリー様。山を降りた所には馬車を用意しております。それまではどうか私と馬に乗っていただければ」
「…ええ」
「…時に。ユーメリー様は私を覚えていらっしゃいますか?」
私を優しく抱き上げた彼の顔を間近で見た。明るい茶髪で、褐色の……中東を思わせる整った顔立ちは。
「…ジェラルド様?」
「思い出していただけて光栄です」
昔…学園の騎士をしていたジェラルドだ。女子生徒に人気で、確か伯爵令嬢に迫られていたんだっけ…。
馬に揺られながら、ジェラルドに学園の事を聞かれてぽつぽつと話した。…私の恐怖心を和らげるために聞かれていると気付いて、その優しさにほんの少し心の痛みが取れる。
ジェラルドのおかげで体の震えはだいぶ治まっていて。力強く私を抱える腕に安心する。…本当に、良かった。何かされる前で…本当に。
何度か殴られはしたけどでもそれだけだ。間一髪のところでジェラルド達が来てくれたのは、きっと幸運で。
ゆっくりと山を降りる馬の背で、私は眠気にそのまま意識を手放した。




