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45 ツヴァイ・セントポーリアという義弟

優しい男の人と一緒に馬車に乗って、大きな屋敷について一緒に降りた。降りた先には同じくらい優しそうな女の人もいて、俺は抱きしめられた。

いい匂いがして、昔いた母親を少し思い出した。こんなにきれいな人ではなかったけれど、優し気な雰囲気は幸せな家族だった頃の母と似ていた気がした。



ふかふかなソファで、女の人が色々話してくれた。女の子はユーメリーって名前で、とても元気があるらしい。最近一段と大人びてきたって。

あと、あなたのお姉様はとっても可愛いのよって。





「ユーメリーよ。よろしくね」


女の子はそう言って、まっすぐ俺の目を見た。俺の目の色と同じ、深い緑色の髪をしていた。女の人は可愛いって言っていたけれど、俺は綺麗だと思った。


女の子の後ろを歩いていくと、屋根裏についた。あの場所にいるとたまに2人が変な顔で俺を見てくるから、連れだしてくれて少しうれしかった。

屋根裏では色々話してくれて、声が心地よかった。そよぐ風も気持ちがよくて、いいところだと思った。

女の子の顔や体にはあざもなくて、元気そうで、ほっとした。今度はちゃんと、最後まで俺がこの子を守るんだ。



「ツヴァイ」


うん。俺はツヴァイだ。母親に捨てられ、父親に殴られていた頃の  ではない。誰かを守ることが出来る、ツヴァイなんだ。


「助けてあげられなくてごめん」


どうしてそんなことを言うの?誰も助けてはくれなかった。それが当たり前なんじゃないの?ごめんなんて、あの時は俺しかいなかったから。仕方ないんだ。そりゃ嫌だったけど、でも…仕方ないことだったんだ。


「今までよく頑張ったね」


…うん。俺、頑張ったんじゃないかな。誰にも、褒められたことないけど。俺は俺なりに、頑張ったつもりなんだ。認めてくれるの?本当に?俺、頑張ったって自分を褒めてもいいのかな?


「よく生きててくれた」


代わりに、死んだ奴もいるんだ。それでも生きてていいのかな。仕方がなかったんだって思ってるけど。自信ないよ、俺。殴られてばっかりなんだ。死んだ方がいいのかなって思っちゃうよ。誰かを守ってみせるから、生きててもいいかな。


「今日から君は、ツヴァイじゃない」


俺は…俺はツヴァイだ。アインス達を最後まで守れなかったけど、人を…人を、殺してしまったけど…。


「ツヴァイ・セントポーリア…。私の弟だよ」



それすらも全部忘れて。ただの君の弟に成り下がってもいいだろうか。




誰かに守られたかった。



守ってほしかった。



助けてほしかった。



泣き声しか上げられず、言葉では伝えられなかったけど。ただ抱きしめて撫でてくれた。それに俺がどんなに救われたか、きっと君は知らないだろう。

俺を救ってくれてありがとう。もう周りなんてどうでもいい。これからは君だけを守れればそれでいい。他の奴がどんな目に合おうが、君さえ幸せならそれでいいんだ。


「メリーは俺が守るから」


あの日誓った言葉は、14歳になってもずっと心の中に在る。俺はこれだけを信じて生きていく。






「メリー、初等教育卒業おめでとう」

「ありがとう、ツヴァイ」


あれから何年もたって、あの頃よりずっと君は綺麗になった。学園で色んな奴がメリーを見ているのも気付いていたから、常に一緒にいた。

メリーの事は全て知っていないと気が済まなくなった。昨日はどんなメリーだったかも全部覚えていたくて、持ち歩いている手帳はメリーのことを余すことなく書き尽くした。

きっと俺のこの行動は異常なんだろう。でも止められなかった。メリーの全部を知っていたかった。俺の知らないメリーがいるのは嫌だった。

全て知り尽くせば、メリーが傷つくことも先回りして消すことも出来ると思った。一緒にいれば、守れると思った。


あの婚約者の王子は気に食わないけど、王族なら権力でもメリーを守れるから妥協することにした。

メリーが嫌だというなら別だけど、王子のことで愚痴を言うことすらしていないから不満はないんだろう。



「高等教育が終わったら」

「ん?」

「すぐ王城に行っちゃうんだろ?」

「そうね…、王妃教育が待っているわ。ツヴァイと離れると思うと、寂しくなるね」



眉根を寄せて笑うくらいなら、俺に嫌だって言ってくれよ。言ってくれれば…君を攫っていけるのに。

背だってでかくなったし、力も強くなった。女の子が寄ってくることもあるから顔だって悪くないはずだ。


それでも君には、ただの弟にしか見えていないんだろうか。


俺の目とお揃いの色をしたサラサラな髪も、全てを知っていそうな黒い輝く瞳も、何も知らない新雪のような肌も、細い首も、華奢な手首も、すらりと伸びた足も。

君を小さな部屋へ閉じ込めて、全部を俺だけのものにしたら。俺はどれだけ幸せになるだろう。



「ミラから久しぶりに手紙が届いたの。実家から新しい奉公先に行って久しいけど、会いたくなっちゃった」

「懐かしいな…よく3人で遊んで怒られたっけ」



けれどきっと君は俺だけでは満足してくれない。おそらく周りも、君を放っておけない奴らばっかりなんだ。

なんでこんなに好かれるんだろうな、お前は。どうせだったら可愛くない顔してればよかったのに。

それでも俺だけは愛せる自信があるのに。


高等教育に進んだら、今ほど一緒にもいれなくなってしまうけど。それでも離れてなんかやらないから。




「ツヴァイ?笑ってるけどどうしたの?」

「なんでもない」

「えーっ珍しいじゃない。教えてよ」

「なんでもねーって」



俺の全ては君に捧げるって、あの時勝手に決めたから。諦めてくれ。



11話でユーメリーが海賊船にいた子供は6人と言っていますが、1年早く助けられたので4人だけです。

次回から高等教育編になります。やっと物語の半分ほどまで来ました。

残り半分、頑張ります。

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