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――――2年後―――――
「まずは入学おめでとう、学園長のアシルだ。君たちはこの春から晴れて学園の生徒になったわけだが、我々教師は王族から特権を承っている。貴族階級に関わらず指導することに関してな。
毎年新入生の中には気に食わん教師に家名を使って脅す輩がおるが…、問答無用でその時点で停学処分に科しているから覚悟しておけ?
もちろん真面目に学生生活を送るのなら、大歓迎だ!生涯の友をここで得られることを願うよ。以上!」
なんとも気持ちのいい挨拶を終え、姿勢のいい背筋を一瞬たりとも崩さず去っていくのはアシル学園長だ。
年は65歳ほどだろうか。右目に眼帯をしており、見た目や歩き方ではわからないが右足も義足らしい。白い髪と髭も相まってまさに軍人といった身なりだ。
元海軍中尉の彼は、現役時代に数々の有能な人材を生み出してきた。負傷してからも海軍に属してくれと懇願されたようだが、戦えない人間は去るべきだと断り、その指導力の高さから学園へ勧誘された。
25年前に学園へ教師として入ってから、汚職・いじめ・贔屓等々を根絶。講演会やら指導やらの依頼もあり、引っ張りだこ状態らしい。
そこからあっという間に異例の大出世を遂げ、学園長にまでなったということだ。
なぜこんなに詳しいのかといえば、元海軍…つまりはうちの領で働いていたから。学園に入学する前にお父様から話を聞いていた。
まさに竹を割ったような性格をしているらしい。
入学式もそこそこに自分の教室に入って担任から説明と全員の自己紹介。担任から「めんどい自慢話を始める奴がいるから名前だけ言って終われ」という言葉のもとかなり手短に終わった。
しかしかなり短い入学式だったなあ。来賓もゼロだし。無駄を省きまくるとああなるんだろう…きっと学園長があの人だからだ。絶対。
本来なら休みである土曜の午後に入学式があったため、本日はここで解散し好きに学園内を見て回ってもよし寮に戻ってもよし好きに過ごせ、とのこと。
さて…同学年にヘザーがいるはずだけど一体どこのクラスなのやら。近日中に再開を果たせるだろうか。
「セントポーリアさん?」
「はい」
席を立とうとしたとき、机の前に立つ少年に声をかけられた。
「初めまして、アカンサス家のオラースです。いつもアンモビウム公にはお世話になっています」
「…?」
アンモビウム?うーんと確か伯爵の家だったような気がするけど…、なんで私が挨拶されているんだろう。
疑問がそのまま顔に出ていたために、少年の顔も困惑が広がっていった。
「えーと…ごめんなさい、覚えがないのだけど」
「え…?そんなはずは…だって、ユーメリーさんの母上の実家ですよ?」
「ん?」
お母様の…?
「…お、覚えがないならいいんです。ごめんなさい」
「あ…」
反応が鈍い私に気まずく思ったのか、そそくさと少年は去っていってしまった。
そういえば、父方の祖父母は亡くなっているしお父様は1人っこだから親戚に会わずとも不思議には思っていなかったけど…母方の祖父母の話は聞いたことがなかった。
アンモビウム家…。本当に母方の実家なのであれば、最低でも祖父母か叔父叔母の誰かは生きているはずだ。でなきゃわざわざ挨拶なんて来ないだろうし。
そこで疑問が湧くのは、なぜその話を一度も聞いたことがないのか…、後で調べてみよう。
「メリー!」
「あ…ヘザー!」
教室のドアから元気よくヘザーが飛び込んできた。茶色の髪は艶やかに巻かれており、ふわふわと揺れながらこちらに近づいてくる。
「久しぶりだわ、2年ぶりね!」
「ええ。元気だった?」
「もっちろんよ。一緒に学園内を回ろうかなって思って誘いに来たの」
「ありがとう、今から行こうと思ってたところなの」
ちょうどよく来てくれたヘザーとともに、教室という教室を歩き回った。休みの日なので上級生もおらず探検しやすい。
しかし広いな…。クラスは15人ずつほどになっていて、広さもそこそこある。クラブや部活用の教室も別に用意されているようだからこの数になっても仕方ないか。
小さな中庭は大きな木とささやかな花壇が置いてあるのみでベンチはないが、太陽の光が差すと木の葉模様の太陽光が風になびいて揺れており、見ていて気持ちがいい。
休憩用、というよりは観賞用の中庭なんだろう。
学園内には定期的に騎士の見回りもされていて、やはりここは貴族用の学校なんだなあなんて思った。変わっていると思ったのは騎士なのに兜をかぶっていないことかな。
学園に入学出来て、やっとここまで来れた…とまだ何も進んでないのに一息つきそうになる。物語が動くのは高等教育からだけどそのためには今から下準備しておかないとね。
…さあ。私はここで運命を変えられるんだろうか。




