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結局、3日目、4日目ともにアデラールとの会話で無事、城への訪問は終わった。
「次に会うのはパーティでだな。楽しみにしている」
「ええ、私もです」
最後に軽く抱擁されて少し驚いたが、耳元で静かに「いっぱい手紙送るから」と言われ深く頷いた。
見えなくなる最後まで、アデラールはユーメリーの乗った馬車を見送った。
「メリー、お疲れ様。夜は会食ばかりで会えなくてすまなかったね」
「いいえ、お父様もお疲れ様」
「アデラール王子はどうだった?」
「初めて会った時は、なんていうか大人みたいな振る舞いで驚いたけど…話してみたら私と同じ8歳の子だったわ」
「へえ、あの王子が…。きっとメリーを気に入ってくれたんだろうね」
「そうだといいけど…お城って窮屈そう。人がいっぱいいるし騎士もいっぱい、あんまり長くは居たくないかも…」
「はは!君もそう思うんだねえ。父に似てしまったか。でも、今回はこれで終わりだ。我が家に帰ろうか」
「うん!」
父との会話をしながら、とても長い4日間はこうして終わりを告げた。
王子の好感度はあまり上げないつもりではいたんだけど…あれはどうなんだろう。上げてしまったんだろうか。ゲームと違って親密度とか見れないからぜんっぜん分からん。
けど、ゲームでも見れなかった本当の王子を見れた。こうしてお互いが、本心で向き合っていれば…仲違いは起きないのではないだろうか。
…でも王子と結婚は絶対嫌。王城暮らし、マジ無理。お願いヒロインさん、私から王子を略奪してくれ。
ヒロインの本命がどうか王子であることを祈りながら、馬車は帰路へと走ってゆく。
数日間の帰路も終えて、ようやく帰ってこれた我が家。
そこにはもちろん、満面の笑みで私の帰りを待つ愛しい我が弟がーーーーーーーー
「なんだ、もうメリーが帰って来たのか。はぁ…また屋敷がうるさくなる」
「ツヴァイ!?やっと帰ってこれたお姉ちゃんにそれは無いんじゃない?」
「何がお姉ちゃんだ。一回も俺、呼んだことないだろ。じゃ、俺部屋戻るから」
このツンツンぶりである。お母様もアリーサも、他のみんなもよく帰ってきたって喜んでくれてるのに。
「あ、待って!王都でツヴァイの好きそうなお菓子買ってきたの。私の部屋で食べない?」
「えー…まあ、いいけど…。美味しいんだろうな?」
「ちゃーんと味見もしてるに決まってるでしょー」
ツヴァイを引き止め、一緒に私の部屋へ歩いていく。
「私がいない間どうだった?」
「静かだから読書が捗った。屋敷のみんなもメリーがいないから仕事しやすそうだった」
「うわー寂しいこと言う」
「いつもイタズラとかしてるから…」
と、部屋に入り扉を閉めると。
「メリー!」
「うわっ」
後ろから飛びつくように抱きしめられ、思わず前のめりになるがどうにか踏みとどまった。
まだツヴァイが私より背が低くてよかった。
「帰ってくるのが遅い!ずっと待ってたのに!」
「ごめんごめん」
「そもそも婚約ってなんだ?なんで勝手に結婚相手が決められるんだ?断れないのか?」
「王様のご指名は無理よ…王子から嫌だって言われれば別かもしれないけど」
「じゃあ早く王子に嫌われろ」
「お父様に迷惑かかることは出来ないって」
「……メリーは王都なんかじゃなくここにずっといたらいいのに」
「そうね…私もそうしたいよ」
よほど寂しかったようで、抱きしめる腕にはまだ力がこもったままだ。
ツヴァイは人前ではツンツンしてるが、2人きりになると甘えてくるようになった。
人前でもあんまりツンツンしてほしくはないんだけど、なんだろう。小さなプライドがあるんだろうか。
そう考えると少し王子と似てる部分があるなあ…。言うとどっちも怒るだろうから言わないけど。
「ほらツヴァイ、お菓子食べよう。美味しいから」
「…うん」
やっと手を離してくれたので、お土産袋の中をごそごそと探る。
お目当てのクッキーは…あー、あったあった。
袋の中は屋敷のみんなへのお土産で溢れかえり、探すのも一苦労だ。
「はい!アーモンド入りのクッキー。ナッツ好きでしょ?」
「美味しそう」
「アリーサに紅茶淹れてもらおうか?」
「…ううん。メリーと食べる」
ううん、素直だと一段と可愛い。生意気だと多少イラつくこともあるけど。
これからどう成長するのか楽しみだ。あれ、もしかしてこれ保護者目線になってるかな…。
「美味しい」
「でしょ?ツヴァイ好きそうだなーって思って」
「俺も付いて行きたかったなあ」
「それは流石にねぇ…。でも私もツヴァイと行きたかったよ」
「ジルじゃなくて俺連れてったらよかったのに」
「ジル、執事だから。連れて行かないのは無理だって」
「俺も執事になればいいのかな」
「お父様がっかりするからやめときなさい。跡取り候補なのに」
「メリーいなくてすっげーー暇だった。とにかく今日は遊んでほしい!」
「ふふふ…よかろう!クッキー食べたら木登り合戦だ!」
「おう!」
そうと決まれば行動は早い。がつがつと頰にクッキーを詰め、ぱたぱた屋敷の廊下を駆ける。
ははは!なんといっても、王城挨拶を頑張った代わりに3日間は勉強しなくていいって言われたからね!
連休は楽しまないと!
「よ…っと!っはー!見晴らし最高!」
「くっそー!また負けた!」
「ふふん、私に勝つなんてまだまだ早いのよ」
お気に入りの大木の太い枝へ腰を下ろす。少し後に、ツヴァイも私の隣へと座った。
「あっつー…汗かいた」
そう言いながら、ツヴァイはワイシャツのボタンをぷちぷちと外し腕まくりと胸元を少し開けた。
「ツヴァイはワイシャツと半ズボンだからまだいいじゃない…ドレスだとそうはいかないんだから」
「そんな動きづらそうな格好なのになんで木登り早いんだよ…」
「経験が違うのよ」
「ちぇー。いつかぜってー勝つからな」
そよそよと優しく吹き抜ける風は、うっすら汗ばんだ肌には最高で。気持ちのいい、天気の良い日独特の緑と太陽の混ざり合った匂いがした。
「ツヴァイ」
「ん?」
「ツヴァイは、早く大人になりたい?」
「そーだなー…前はそう思ってたけど、今は楽しいからあんまり…。あ、酒は飲んでみたいからなりたくはある」
「…きっとさ。みんな、大人になりたくてなるんじゃないんだ」
「そうか?」
「うん。子供じゃいられなくなるから、大人になるしかないんだよ」
「…よく分からねーや」
「大人になったら今みたいに、お互い何も気にすることなく思いっきりのびのび遊べなくなると思う。だからさ、今だけでもいいから。私といっぱい遊ぼう」
「…俺は、大人になってもメリーとずっと遊ぶからな」
「そうだね。そう願うよ」
私がこの物語にどこまで抗えるか、変えられるかは分からない。
けど、平和な日がいつまでも。どこまでも。続きますように。大好きな周りの人達が、永遠に幸せでありますように。
その為なら、私は。




