反逆の兆し
京介は朔の手から滑り落ちた剣に手のひらをかざし、砕けろと力を籠め心の中で叫んでみた。すると剣は念じたとおりに、本当に砕け散った。
不意に、今まで感じたことのないような昂揚感が京介を満たしていく。
これは。ここにきてようやく、俺も目覚め―――ッ!?
思ったのもつかの間。右手に重く、熱い衝撃を感じた。次の瞬間、京介は再び地面を舐めさせられていた。
「う、あっああァアぁああ!!」
遅れて右手に激しい痛みが奔った。見ると、掌から朱い花弁が飛び散っている。
右手を剣が貫き、京介はそのまま昆虫標本のように、地面に縫いとめられていた
「う、うぅ……っあ、ア。朔、な、んで」
京介は今なお剣が与えてくる苦痛に、ただ呻くことしかできない。痛みと熱で頭が焼き切れそうだった。
「「京介!!」」
そんな俺にエマと、そして朔が声を上げた。
「もうやめろ、ここまでする必要がどこにある!?」
エマは悲痛な叫びを挙げ、朔に敵意の視線をぶつけた。だが、朔は当惑していた。
京介への容赦のない攻撃は、朔が意図したものではなかった。そもそも、剣は打撃属性にしていた筈だった。
「くそッ! 何故制御できない!?」
今や京介の右手を貫く剣は、朔の意図を介さず、引き抜くことも消すことも叶わない。
加えて先ほども朔の剣は意図せず消失した。いや、させられた。
朔はある一つの結論に達している。第三者が剣に不正干渉し、支配権を書き換えた、と。
だがここまで完全な能力の書き換えとなると必ず干渉者は近くに居るはずだ。
近くにいる人物―――。
「……エマ、といったな。これは君の仕業か!? ―――くっ!」
それができる人物は一人しかいない。だが、少女は何のことか分からないと首を横に振るのみ。
困惑の表情はとても演技とは思えない。しかし、この場には京介とエマしかいないのだ。
剣は今や、主である朔にすら反旗を翻していた。自身を貫かんとする剣を何とか回避しつつ、朔は考える。
本来ならば一旦距離を取りつつ状況を見極めたいが、この状況。クラッキングを仕掛けた何物かは朔を逃がすつもりはないようだ。




