↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/80

それぞれの思惑(執行部の場合)

 そこは弓月朔の所属する執行部作戦室。

 会議室同様、白で統一された室内。上座に鎮座する隊長の執務机も余計な物はほとんど置かれていない。只一つ、3本の剣が突き立てられたオブジェが異彩を放っている。


 そんな静謐な空間に二人。執行部の隊長とその補佐。


 執行部隊長、弓月 朔は思案していた。報告の時、話が京介に触れたときの支弾長の表情の変化。あれはほんのささいなものだったが、京介について何かを知っているような、そんな一欠片の違和感を感じさせるものだった。モニタ越しのため確かにそうだとはいえないが……。


「隊長…? どうかなさいましたか」


 心配そうに朔の顔を覗き込み、麻月カスミは尋ねる。


「あ、ああ。大丈夫、心配をかけてすまない。それよりも、カスミ。明日から君は月見里京介の周囲に気をつけておいてくれないか」

「……何故、ですか? やはり隊長は彼が犯人だと?」


 一瞬当惑の色を見せた麻月カスミは、珍しく朔の指示に疑問を挟んだ。


「いや、京介はそんな男ではないよ。ただ、今回彼の目の前で事件が起こり、彼が巻き込まれた形になったのは、どうも偶然ではないように思う。彼の近くに犯人が居る、私にはそんな気がするんだ」


 あくまで、君の仕事の合間で構わないと付け加えた朔の言葉に


「……分かりました。隊長がそう仰るなら」


 一拍遅れて承諾をする麻月。だがその心中は複雑な思いがあった。いつもの隊長らしくない。あの月見里という男が絡むと、隊長は普段の冷静さを失っているのではないだろうか。それに、自分には見せたことのない表情をしている。それがおもしろくない。咄嗟に心中を隠した彼女の表情はぎこちないものになった。


「…隊長。一つ聞いても?」

「ああ。構わない」

「先ほど支弾長は口にしかけました。〝例の事件〟と。月見里京介は、その、隊長と同じ――」

「…ああ、生き残りだ。だが、この事は絶対に誰にも話さないでくれ。京介はショックで事件の時の記憶が無いんだ。思い出して欲しくはない」


 朔はほんの一瞬、まるで迷子のような、壊れてしまいそうな表情を浮かべた気がした。


 麻月カスミは何か言葉をかけたいと思った。しかし、適切な言葉が見つからず、ただ了解の言葉を返した。


「―――――あの、隊長。今回の案件、特に気を付けてください」


 それは部下が隊長の身を案じて出た自然な言葉。

だが、いつも以上に真剣な眼差しの麻月を、朔は不思議に思った。


「どうしたんだ? 確かに危険な能力者が相手だとは思うが、それが執行部の日常だろう」


 確かに麻月カスミは朔と比べてまだ経験が浅い。ふと不安になることもあるのかもしれない。朔は昔の自分をカスミに重ねつつ、力強い言葉を贈った。


「…いえ、今回の事件。私には犯人の目的は別にある気がします。この事件自体はあくまで手段に過ぎないというか……」


 そこでカスミは言い淀んだ。


「……続けてくれ」

「……はい。この間の繁華街の一件。さらには今回の事件です。白昼堂々学内での√行使。私には執行部への挑戦状、もっというなら弓月隊長への挑発ではないか、と思えるんです」


 それで先ほどの表情と声色。カスミは不安そうに俯いている。その小さくなった部下の姿に


「心配ないよ。私が狙いなら、それこそ願ってもないところだ。返り討ちにすれば良い、そうだろう」


 そう言って安心しろ、とカスミの肩を軽く叩いた。


「……弓月、隊長」


 朔の言葉にようやくカスミのこわばりが解け、笑顔が戻る。


 朔は見るともなく部屋の壁を見ていた。きっと地上は今、曇り空に違いない、と思いつつ。

 どうも嫌な予感がする。これ以上京介がこの事件に関わることは何としても避けたい。朔はそう考えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。