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追うもの、追われるもの

 最初はエマを疑い、言うことを聞かないと殺されるんじゃないか、と本気で恐れて従っていた。でも、いつの間にかそんな疑いは消え、ただ純粋に楽しかった。


 何かを叫びたいようなむず痒い気持ちを抑え、浮かれ気分を隠し切れないまま京介は家路に


「やっと一人になってくれましたねェ」


 そんな優しい時間を断ち切るようなぞっとするほどの冷たい声がした。全身に悪寒が走り、総毛立つ。心臓を鷲掴みされているような、圧倒的な感覚。自分がただ狩られるだけの弱者だと知り、振り返ることが出来ない。


「まったく、本当手を焼かせてくれましたねェ」

「あ、あ………」

「月見里、京介君だね。学院での事件によって、君には一連の事件の重要参考人として手配が掛かってるんだよォ。それをこんなところでデートとはねェ。銀色の魔弾を舐めすぎでしょ」


 十人ほどの黒服の集団を従え、先頭に立つ銀色の外套を羽織った長身の男が言った。


「そ、うだ。俺、さっきまで皆に犯人扱いされて。逃げてて。エマに出会って、それから…」


 男も朔と同じ、銀色のナントカの人物らしい。朔と比べて何というか、まさにプロフェッショナルといった出で立ちの男だった。


 現に、飄々とした口調とは裏腹に、まったく立ち振る舞いに隙はなく、研磨された無数の針のようだ。


「……制圧」


 銀色の男が何の前触れもなく手を挙げて、短く、冷たくそう言い放った。

途端、京介の世界が文字通りひっくり返った。


「ア、ぐっ!」


 京介は有無を言わさず地面に引き倒され、拘束されていた。


「……? √も使わずこうもあっさり。……不気味だけどかえって好都合だ」


 銀色の男が何か言っている気がしたが、もう京介には関係がなかった。抗えないほど絶望的な、暴力的なまでの“何かの力”が働き、意識は混濁していく。そのまま視界は黒く塗りつぶされ、もう何も考えられなくなっていった。


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