後味の悪い結末
麻月カスミは倒れた者たちへと駆け寄り、拘束しようとしたがすぐに違和感を覚えた。
その違和感の正体を確かめるべく、懐から端末を取り出してしゃがみこむ。
そのまま倒れている4人をスキャンした。が
「……隊長。だめです。全員生命反応消失しています」
端末が表示した答えは4つとも同じ。心肺脳、3臓器の不可逆的停止。つまりは全員の死亡が確認された。
カスミの言葉を受け朔も駆け寄り、その遺体を子細に検分する。
「……眼球から出血? どういうことだ。私の攻撃の結果とは考えにくいが…」
とカスミを見た。しかしカスミも首を横に振り否定する。
「ああ。君の弾丸も、もちろん死に至らしめるものではなかった」
怪訝な顔を浮かべ、立ち上がる朔。どうやら納得のいく答えが見出せないようだ。
誰も言葉を発せられない、微妙な緊張感が漂い始める。その時、そんな空気を破る、間の抜けた電子音が鳴り響いた。朔の懐の端末だった。どうやらメールの着信を知らせているようだ。
朔は端末を取りだし内容を確認するも、何かが引っかかるのか、ふと怪訝な顔を浮かべた。
「どうしました、隊長」
そんな朔に疑問を感じ、カスミが駆け寄って声を掛けた。
「いや、未登録のアドレスからのメールなんだが…。文面の最後に“蒼月要”より、と締めくくられている」そう言って朔は端末を差し出した。
その言葉にカスミは目を見開いて端末の画面を凝視した。たしかに、蒼月要の文字がそこにはあった。蒼月要の個人アドレスからのメール。それは十分驚きに値する。
全生徒数5千人超のトップ、“蒼月”という学院の名前を冠することを許された男。しかも歴代最強と言われる生徒会長、蒼月要その人からの直々のメールなんて。
「入学式の続き、かもしれないな」
朔は支弾に連絡を取り、総務部に4人の死体の検分及び処理をオーダーし、その場の弾員には撤収の指示をした。
「隊長。会いに、行かれるのですか?」
カスミが問いかける。
「……ああ。折角の先輩からの招待状だ。これ以上ここにいても何も分からない。悪いがカスミは、彼らの搬送に同伴してくれ」
と返答し、朔は学院の方へと進んでいった。朔の表情からは、その心中まではうかがい知れなかった。
遠く小さくなっていく隊長の姿を見送り、その場に残る一般弾員たち。朔に届いた招待状について、あれやこれやとくだらない予想を立てて雑談に花を咲かせていた。
「おい、てめーら! 隊長が撤収っつったろーが! ゴミクソみてーに騒いでねーでさっさと支弾に戻りやがれ!!」
とカスミは自分よりはるかに年上の弾員達に、まったく遠慮する様子もなく怒鳴りつける。
「は、はい……」
「す、すんませんカスミさん」
と大の男たちは平身低頭で言ってそそくさとその場を後にする。
突然の豹変にしかし弾員達はことさら驚いた様子もなく、そこにあるのはただただ単純に強者への恐怖だった。
「しかし、こいつら。どう考えても一般人だったが…。じゃあなんで環境異常が出てたんだよ? くそ、なんか後味悪りーな!」
答えの見つからない疑問に悪態をつき、カスミは小石を蹴りつつ支弾への帰途へ着いた。




