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騎士よりも政治家がお似合いな連中

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

「ご安心ください、公爵! 我らが来たからには、もう心配いりません」


 上等なスーツを着込んだ中年男は、ドヤ顔でそう告げた。


 他にも、スーツ姿の比較的若い男と、女。


(それでも、30代半ば……)


 深夜にもかかわらず、俺たちが話し合っていた応接室へ駆けつけた。

 見るからに面倒そうな雰囲気で、俺が素手で叩きのめそうな弱さ。


 つまりは、そういうこと。


(円卓(ラウンズ)の中で、下っ端だな? 1周目の俺が日本で会ったのは、奴らの中でもトップクラスだったにせよ……)


 ソファーに座っている俺の視線を感じたのか、見るからに蔑んだ視線でこちらを見た中年男。


 不機嫌そうに視線を外して、笑顔で公爵に向き直る。


「お困りであれば、我々が引き継ぎますが?」


 おーおー、言ってくれる!


(公爵が、犯人グループに話を聞いていると?)


 俺たちはカレナの権能により、本場の英語でやり取りしている。


 その表情から、残り2人も同じ意見のようだ。


(こいつらの視点では、英語が分からない移民ぐらいの認識か……)


 自分たちが立ったままで俺たちがソファーで客人扱いも、気に入らないだろう。


(手っ取り早く、怪しい東洋人を犯人と決めつけて、実績を上げたいのかも?)


 ムッとした公爵が、言い返そうとする気配。


 けれど、室矢カレナの声。


「ウィットブレッド公爵令嬢たる私の従者に、文句があるか? たいした推理だな! 移民を目の敵にしているヤードですら、そこまでの無能はいなかったぞ? 今から、ヤードの採用試験を受けてこい。警察学校で怒鳴られれば、多少マシになるだろう。早く、人間になれよ? おーう?」


 満面の笑みで、小馬鹿にした口調。


 リーダーの中年男が、一瞬で顔を赤くした。


 残りの2人も、同じく。


 カレナの辞書に、遠回しの嫌味はない。

 いつでも、誰が相手でも、とりあえず殴るだけ。


 こいつらが、すぐに言い返さないのは――


(カレナが見るからに白人で、ポジションや雰囲気から公爵家の人間っぽい! おまけに、海外基準では小学生もいいところで、大人の対応にしようと頑張っているわけか)


 怒りを抑えるあまり、黙りこくった中年男を見かねて、アラサーの男が口を開いた。


「こ、公爵? こちらのレディは、どなたでしょうか?」


「室矢カレナだ! お主たちには、こう言ったほうがいいだろう! ブリテン諸島の黒真珠と……」


 本人が答えれば、スーツ姿のラウンズ3人は動揺した。


 無意識に、後ずさる。


(名前を言ってはいけない、あの御方かな?)


 昔はやさぐれていて、深海に待機していた潜水艦に張り付き、海上へ緊急浮上するまでガンガン叩いた前科もあるらしい。


(迷惑どころじゃないな……)


 ユニオンを襲ってきた艦隊を吹っ飛ばしたなど、その功績は神話のよう。


 けれど、女は冗談としたようだ。


「伝説の魔術師を、よく知っていますね? それよりも、私たちの従騎士が例の人形を発見、追っています」


 俺たちに因縁をつけるより、そっちを先に言え!


 そう思いつつ、ひとまず聞く。


 ようやく復帰した中年男が、もったいぶる。


「我々の従騎士は、その人形を破壊、または、逃げないようにしつつ応援を要請する手筈でございます! 他ならぬ、我々が……。公爵? どうか、お忘れなきよう」


 片手を自分の胸の前で横にしつつ、頭を下げた。


 俺たちを東洋人だから犯人だろ? と決めつけた件は、なかったことにする気らしい。


(どうしてくれようか……。俺の目的を考えたら、すぐにラウンズと敵対するのもマズいが、舐められっぱなしも論外だ)


 ウィットブレッド公爵が思っていたよりも好意的だから、この人の立場を悪くしたくない。


(カレナの紹介があって……。俺もちゃんとした英語で、低姿勢だから?)


 値踏みしていたのは、お互い様。


(差別主義になるしかない大貴族でも、身内認定すれば、甘くなるか!)


 死の刻印があるジェニファー・ウィットブレッドも、心配だ。


 俺がそう考える一方で、初老の男である公爵は頷いた。


「私の娘を救ってくれれば、その功績に報いよう」


 オーバーに反応した中年男は、今までとは違う笑みに。


「おお! さすが、ユニオンを支えてきたウィットブレッド公爵!」


 カレナが、すかさず提案する。


「私の説明は、終わったぞ?」


 公爵が、首肯した。


「うむ……。お前たちは、下がってよろしい! ラウンズの方々に、紅茶と菓子を」


「畏まりました、旦那さま」


 この部屋にいる、老齢の執事が答えた。


 カレナが立ち上がり、俺たちも倣う。


「お嬢様とお連れの方々は、玄関まで案内いたします……」


 老齢の執事が言えば、ドアに近い執事が動き出した。


「ご案内します」


 メイドが、ドアを開く。


 そこを通りすぎ、先導を始めた。


 ゾロゾロと、豪華な内廊下へ。


 歩きつつ、超空間のネットワークでカレナに尋ねる。


『なあ? ラウンズの規則だと、正騎士と従騎士は常に一緒では?』


『そうだ! あやつらは、自分の出世のために公爵への挨拶を優先したのじゃ』


 ふざけている。


 カレナが封印したほどの相手に……。


『いくら平和な時代とはいえ、この代償は大きいぞ? 1周目に来日したのは、ラウンズでも上位の騎士ばかりだった』


 単なる、夜警。


 電話一本で動く下っ端は、やる気がないか……。


『あやつらの従騎士は、死者の鉄道を走っている! かつて死人を運んだ先、ブルックウッド墓地にな? 安らかな死とは、ならんだろう』


 誰が?


 俺に、そう聞くだけの余裕はなかった。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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