第26話 冥界の迷い子と、ガチ勢の杖
冥界に叩き落とされ、いきなりのバラバラ死……ではなく、バラバラ「離散」!
頼れる(?)仲間たちとはぐれ、絶体絶命のミドリの前に現れたのは、美少女魔法使い……ではなく、自称「ガチ勢」のちょっと名前が残念な女の子でした。
果たしてミドリは、美味しそうな「食料枠」という疑惑を晴らし、無事に仲間と再会できるのか!?
シュールで熱い冥界攻略、スタートです!
着地の衝撃で、自慢の蹄がジンジンと痺れている。
「……マジか。いきなりソロプレイかよ。牛一頭で
冥界攻略とか、シュールすぎて笑えねぇモゥ……」
ミドリが辺りを見渡しても、相棒たちの気配はない。オゥク(豚)の食いしん坊な鼻息も、ヤフー(鶏)の情けない悲鳴も聞こえてこなかった。
その時だ。紫の霧の向こうから、ガサガサと骨を軋ませる不快な音が近づいてくる。現れたのは、肉を削ぎ落とされた巨大な骸骨犬『デスハウンド』が三匹。
「ひぇ……! あれ絶対、草食動物の僕を見つめる目じゃないよね!?」
ミドリが恐怖に腰を抜かしかけた、その瞬間。
「―『ヘルファイヤ』!!」
鋭い詠唱とともに、紅蓮の火柱が冥界の闇を焼き尽くし、デスハウンドは、全滅した。
呆然とするミドリの前に、一人の少女が立っていた。尖った魔女帽子に、身の丈ほどもある水晶の杖。その頭上には、ミドリが見たこともない青い文字が浮かんでいる。
【Lv.30:チンパン(ウィザード / 人間プレイヤー)】
ミドリ「魔法だ〜。」
「ふぅ、危ないところだったね。……って、えっ!? 牛……? しかも喋った?」
「あ、えっと……助けてくれてありがとう! 僕はミドリ。仲間とはぐれてしまって…?」
「あら?仲間とはぐれたの……?」
チンパンは杖を構えたまま、ポカンと口を開けた。彼女はこの過酷な冥界で『レア素材』を求める「ガチ勢」のプレイヤーだったのだ。
「あなた、もしかして……今のアップデートで追加された『突発イベント』のNPC? それとも、ただの食料枠?」
「食料枠じゃないよ!お願いだ、仲間を探すのを手伝ってくれないかな!」
「うーん……こんなところで、あなたプレイヤーでしよ?牛なんて変わってるわね?そんな牛を放置するのも悪いしね。わかった、私のパーティに入れてあげる。でも、足手まといになったら即、焼き肉にしてたべるからね?」
「怖っ…。……よろしくお願いします(震え)」
ステータス
Level30
名前 チンパン
称号 / ウィザード
HP/150
攻撃力/33防御力/43素早50
賢さ/50 魔力/90
【スキル】
リサーチ···目的のモンスターや罠の位置情報を取得出来る。※このゲームバランスを壊すほどの情報は取れない。
予感···ちょっとした未来予知。杖使い。
【呪文】ファイヤ、ヘルファイヤ、ポイズンブレス、ワープ、ルンルン、カンカン、びょびょん
【装備】
魔導士の帽子
キャピキャピのローブ
魔導士の靴
形見のペンダント
(……なんか変な魔法があるけど…あれ?…使えそう…。)
「ねぇチンパン、その『リサーチ』ってスキルで、仲間を探せないかな?」
「ああ、出来るわよ! ちょっと離れてて!」
後ずさる牛のミドリ。チンパンが杖を振るうと、地面に巨大な六芒星の光が輝いた。
詠唱「……センノトノガタノゾキノオウ……スキル・リサーチ!!」
呪文とともに、チンパンの顔面に『サイバーメガネ』がガチャリと装着された。
レンズの奥で膨大な文字列が高速スクロールしていく。
「で? あなたの仲間の特徴を言って?」
「えっと、豚と、鶏、あとは子竜だよ!」
チンパンが空中に浮かぶ仮想モニターを指先で弾く。
「……出たわ。豚はここより1,000m。鶏は500m先ね」
「おおっ、さすがガチ勢! で、子竜のバックは!?」
モニターを凝視していたチンパンの手が、ピタリと止まった。レンズの奥の目が、驚愕に大きく見開かれる。
「……うそ。『古竜』……距離、ここから100K先」
「凄い能力だ!しかも100Kって位置も分かるのか?……バック、あいつ何処行ってるんだ?」
安堵したミドリを余所に、チンパンはスカウターを解除してにっかりと笑った。
「ねえ、チンパン……。って、その名前変じゃない?」
「いいじゃない!ゲームの名前なんて、こんなもんよ!」
こうして、ミドリは仲間を探すため、この「チンパン」という名の最強の助っ人(?)と共に旅立った。
第26話をお読みいただきありがとうございました!
今回から新キャラクター「チンパン」が登場しました。Lv.30という、この世界ではかなりの強者ですが、いかんせん名前が「チンパン」です。オンラインゲームでたまに見かける、プレイスキルは高いのに名前のセンスが独特すぎるあのタイプですね。
そして、衝撃の事実。バックが「子竜」ではなく「古竜」と勘違いしています。しかも100km先。
この未来を変えるのは、読者の評価です!最悪を
迎えるのか、死ぬか生きるかです(笑)
次回、まずは500m先にいる「あの鳥」の救出に向かいます。お楽しみに!




