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第十八話『ぐるっとマラソン』

 協調性、ってなんだろう。そう思うことがある。


 少しネガティブな考えになってしまうけれど、どうせ私は失敗する。それまで上手くいっていたとしても、何気ないところで失敗をする。私に限らず、人の行動というものはそうして回っていくのだと思う。


 そんな失敗を目の当たりにした人は、こう思うのではないか。――自分だけででやったほうが、スムーズにいくかもしれない。


 そりゃ、複数人でやったほうが効率的な面は多々あるだろう。けれど、それは個々の能力をそれぞれ発揮することで産まれている効果ではないか、と思う。


 同じ作業を、同じ事を。複数人が同時に行う。自分がやろうとしたことを、他の人が手を付けてしまい、ヤキモキしながら別のことに手を付けようとしたら、既に他の人がやっている。


 そんな時に、周りに気を使い合って上手く回るようにするのが、協調性なのだろうか。あくまで、例え話のようなものだけれど。


 でも、全く同じ作業をしているのなら、一人で行っても効率は同じはず。そんな時にでも、協調性を意識しなくてはならないのだろうか。


 自分一人でなら、その作業を、もっと楽に終わらせられるはずなのに……。



 モチーフとなった静岡県の上の方、尖ったようになっている部分が丸まり、渦巻き状になったこの場所。岩山が連なり歩きにくいものの、特殊なモンスターが現れることで、人気の場所になっていた。


 エメラルドモンスターと呼ばれるもので、通常のモンスターがエメラルドカラーになった存在。


 彼らを倒すことで、通常のモンスターよりも多い経験値を獲得できる。渦巻きに沿って移動しながら倒していき、先端部にあるダンジョンに辿り着いたら引き返して、再び根元の方へ。


 これを『ぐるっとマラソン』、略して『ぐるマラ』と呼ぶらしい。


 私はこれに、マルシュに跨って挑戦をした。空を飛ぶことのできる彼の存在を、いかんなく発揮してのことだ。


 空を飛びながら、目につくモンスターに矢を放っていく。マルシュが強化魔法を使ってくれたおかげで、難なく一撃で仕留めていける。


 元々のレベルがそこまで高くなかったせいか、一体倒せばレベルアップを告げる音が耳に届き、続いて、続いてと倒していけば、その音がしばらく鳴り止まない。


 これが、マスターが言うフィーバータイムだろうか。それはテンションが上がることだと言っていたから、間違いではないと思う。


 順調に山の上を進んでいると、同じシャチエルに乗った男の人が近寄ってきた。


「どもー。ねぇ、もしかしてぐるっとマラソンやってる?」

「……はい」

「おおー。じゃあ丁度いいや。パーティー組んで一緒にやろうよ。討伐状況が共有されるから、レベル上げのペースは二倍。ま、同じモンスターを仲間にしている者同士、仲良くやろうぜ!」


 少し戸惑ってしまったけれど、断るのも悪いかと思って、その提案を受け入れてしまう。


 パーティーの組み方がわからなくて、あたふたとしている私に笑って声をかけ、やり方を教えてくれる男の人。どうやら、悪い人ではなさそうだ。


 表示されたウィンドウのパーティーメンバーの欄、クウという名前が記されていた。


「クウ、さん」

「クウでいいよ」

「あ、はい。お願いします」


 それじゃあ、適当に倒していこうか。そう言って、彼は隣に並んで山に沿って飛び始めた。


 私はふと思う。倒した数が二倍になるからと言って、私に何のメリットがあるのだろうか、と。そりゃ、彼からしたら時間の節約だ。それ以上の理由はない。


 けれど、私には彼よりも自由に使える時間がある。効率が上がったところで、それは些細なことだ。急ぐ必要なんて、あまりないのだから。


 目についたモンスターに向けて、矢を放っていく。クウは魔法を使うようで、先端に瘤のついた枝のような杖を振るって、魔法を放ってモンスターを倒している。


「シャチエルってバリアを張れるから、安心して魔法を撃てるんだよな」

「そうなんだ」

「あれ、知らなかった? 弓とも相性がいいぜ」


 雑談をしながら、モンスターを倒していく。


 ただ自分のやりやすいように、モンスターを倒していく。これが、協力をしているということなのだろうか。一人で行っているのと、何らかわりないのではないだろうか。


 モヤモヤとした疑問。そんな私を気遣っているのか、マルシュがチラチラと私の方を見ている。


 一緒にいる彼は、つまらない思いをしていないだろうか。私の胸の内は、不安でいっぱいだった。けれど、せめて彼の足は引っ張りたくないと、必死でモンスターを倒していく。


 そうして、ピラミッド状のダンジョンへと辿り着いた。


「はい、ゴール。ここで引き返すのが基本だけど、悪い、この後用事があるから失礼するわ。いやー、助かった。ちょっとだけレベル上げをしておきたかったけど、やっぱり人が多いと効率的だよな」

「あの、……私は、役に立てた?」

「ん? ……それは知らん。でも、遊んでいる時にそんなことは考えないって」

「でも、これは協力プレイ? みたいなものだし、役に立たないと……」

「同じ飯を食った仲、って言うだろ? 一緒にモンスターを倒せば、それだけで友達。そんなもんでいいんだよ。お互い好き勝手やって、最後に笑って解散できたらそれでいい。じゃ、機会があったら、またな!」


 最後に、笑って……。


 自分の中に、一つの答えがでた気がした。


 私は、過程のことばかり気にしてきた。でも、それはさほど重要ではなくて、いや、軽視することでもないけれど、大事なのはきっと、最後にどうするかだ。


 失敗したらごめんなさい。上手くいったらおめでとう。最後に、お互いを尊重し合えることが、協調性ということなのかも。


 言葉の意味は抜きにして、私は素直に、そう感じた。

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