ちょっとした変化
ペース上げていきます。(今回はガチだよ?ほんとだよ?)
ここに来てから、もう早いことに1年半が過ぎた。修業も残すところ後1年程しかないと思うと、少し哀愁を感じなくも………いや、ねぇな。哀愁を感じるかねぇわ、ありえねー。とっととこんなとこからおさらばしたいんだよ僕はぁぁぁあ!!
あー。くっそ莉奈にあいてー。
なんて思いながら自室のベットでごろごろしていると、コンコンとノックの音と共に扉が開いた。
「一夜ー。今ちょっと良いかー?」
「はぁ……師匠、ノックと同時に入ってきちゃノックの意味が無いじゃないですか。何回言わせるんですかこれ。まったく、で?用事って何なんですか?」
「あーすまんなー。用事ってのはちょっとな、ほら莉奈って勇者いんだろ?ソイツが一夜の私物が欲しいとか、なんとかだって事らしい。王族からの定期連絡だし、王子からの通達だから断りようもないんだわ。ほら、なんかないか?」
「私物って言われてもなぁ……」
特に持ってきた物もないし、スクールバッグは王城の方の部屋あるしなぁ………うーん。どうするか───
「───あっ、そういえば」
「おっ、何かあるのか?」
僕は首にかかっている、チェーンにぶら下がった指輪を取った。
「これじゃあダメですかね?一応莉奈との婚約指輪なんですけど」
そう。これは莉奈との婚約指輪だ。学生だしそこまで高い物は買えないが、バイト代やコツコツ貯めたお年玉などを使って、銀座の店で買ったペヤリング。だから思い入れがあるからずっと持ってたんだけど……莉奈が寂しいみたいだししょうがないよなぁ……。
「うむ。十分だな、すまんな一夜。助かった」
「大丈夫ですよー。で?今日はどんな修行をするんですか?」
「うむ。それは修練場にて話すとしよう。先に行って待っててくれ、私は王子に渡してくる」
「了解です、先行ってますね。じゃ」
そう言って自室の扉を開けて、修練場へと向かった。
∈∋∈∋∈∋∈∋∈∋∈∋∈∋
キュッキュッと布で刃を手入れしながら師匠を待つ。師匠から貰ったこの剣はアダマンタイト製の魔法剣……らしい。使ったことがないからよく分かんないのだが。理由としては、何でも普通の剣すら使えないヤツが、魔法剣なんて使えるわけねーだろっていう事らしい。
まぁ、剣の能力は教えて貰っているから良いんだけどね。
能力は剣の重さを自由に調整出来るという魔法と、折れないように頑丈にする魔法だそうだ。特に頑丈になる魔法は師匠が自ら込めたもので、永遠に持続するらしい。呪術を習っている俺からしてみると、恐ろしく高等な技術だ。師匠には当分は追いつけそうもない、あと1年でどれだけ近づけるか……剣の腕でも負けているからなー、ほんとに魔法職なのか訳が分からなくなる。
セカンドジョブとかが剣士なのかと思ったが、特別なジョブ、つまり賢者や勇者などはセカンドジョブやサードジョブがないそうだ。器を占める量が多すぎて他のジョブを持つ余裕が無いらしい。しかも器が成長した分、ジョブもその分成長するらしく、いつになっても一つだけしかジョブがないという。まぁ、そんな事など些細なレベルに、勇者とかは強いから気にすることもないらしいが。
そんなことを考えているうちに、師匠が来た。
「さて、待たせたな。今日は一対多の戦闘訓練を行うぞ。相手はコイツだ」
ドシンッ!!!!
師匠がそういった瞬間、空中から白銀色に輝く鎧を纏った騎士達が現れた。
「こいつらはゴーレムといった魔法生物の一種だ。私が手ずから作ったのだから、戦闘力は凄まじいぞ。ではこれから戦闘訓練を行う、気を引き締めてかかれよ」
そう言ってフッと、師匠が不敵な笑みを浮かべた。
∈∋∈∋∈∋∈∋∈∋∈∋
「────ふっ……はぁッ……!!」
四方向全てから来る騎士共の剣を、捌き、躱し、受け止める。両方向から来る剣を双の剣で受け流し、返す刃で二つの騎士の腕を断ち切った。続いて後ろの騎士から振り下ろされた剣を半身になって躱し、右手の剣で首を断ち切る。これでようやく十体め。
戦闘開始からおよそ一時間が経ってこれだ。初期の頃に数えた数では、およそ四十体であった。これだけなら即座に倒すことも可能だが、厄介なことに看護兵がいるらしく腕を断ち切ったり、脚を断ち切ったら即座に後ろに引かれ、五体満足になって戻ってくる。だったら看護兵から先にぶっ壊せば良いのだが、看護兵に向かって行くと本気で騎士共が抵抗をしてくる。 なので仕方なく一体一体壊しているのだ。流石に首を断ち切ったり、体を真っ二つにすると回復しないところを見るに、リアル準拠になっているのかと予想は出来た。
腕を断ち切ったら、リアルじゃ回復出来ないだろって?阿呆かここは異世界だぞ、そんなの関係無しって事だ。
くだらないことを考えつつ、新たに二体の騎士を壊した。少しずつだが、要領を掴めば楽に倒せるようになった。後もう少しだろう。
───なんて思ってた俺がバカだった。
残りの数が十体になった頃から、連携がいきなり上手くなったのだ。は!?何でだよって思ったら、後ろで師匠が変なタブレットみたいなの持って集中してんのを見て理解出来た。
師匠マジかよ!?そりゃあ数が減れば楽になるわなそりゃ!!くそったれが!!
悪態をつきながらなんとか一体を倒した。
しょうがない、魔力を温存しとく訳にも行かなくなったな、こりゃ。そう思い、奥の手を使うことにする。
横凪の剣を弾き、その反動で大きくバックジャンプ。両腕をクロスさせ、付与魔法を唱える。付与するのは『鬼火』、一番使いやすく、魔力の消費も少ないため汎用性が高い。威力が低いのが難点だが、そこはどうとでもなる。理由としては──
「『武具の器 入りこむは怪しき炎 〈付与:鬼火〉』」
───そう、詠唱だ。ユニークスキルの〈言霊〉は本当に凄まじいスキルだった。スキルLvMaxになった今では、二段階上昇と師匠が言うには頭おかしい位の能力なんだそうだ。
そのため───今、俺の双剣にはおどろおどろしい悪鬼の顔が浮かび、黒い焔が薄らと纏わり付いている。本来紫色の焔が黒い焔になっているのと、鬼の顔がさらに凶悪になっているのが、〈言霊〉の影響だ。
「さて、こっから本番かな…………さて、行くよ」
殺到してくる銀の騎士共を見据えて、ニヤリと嗤った。




