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——————「どうしてこうなったのでしょう。」
「貴方様の光を求めるお方が多いようですねっ!」
見知らぬ男性に抱えられながら、荷物を落とさないように腹の上で大事に抱える。
私を抱えて走る男性の後ろから叫び声が聞こえてくる。
それも知らない男たちの声だった。
……普通って、自分が思っていたより随分と難しいものだったようだ。
ここに至るまでを思い出す。
みんなとお別れをして、馬車に乗り、機関車に乗った。
城下街を抜けた治安の良い街というのは、馬車だけでは少し遠かった。
機関車から降りて、宿へと向かう。
子供達のはしゃぐ声が聞こえてきて、平和だと感じれるのどかな場所だった。
「すみません、宿を取りたいのですが。」
「………………お待ちしておりました。
シキ様ですね、少々お待ちください。」
受付にいたお姉さんは少し目を見開いてから、ぱっと表情を切り替えて対応をしてくれた。
ほっとするのも束の間、誰かが私のスカートをくいくいと引っ張っている。
そちらに目をやれば、小さな子供がいた。
「ねぇー」
「どうしたの?」
「よんでー」
本を渡され受け取ると、うげっと顔を顰めそうになる。
【勇者伝説】、幼少期に祖父から死ぬほど聞かされ、死ぬほど読まされた絵本。
ソラでも読めるほどだ、憧れる普通とは程遠い伝説の物語。
子供のお願いだし、仕方ないと受け取った絵本を開く。
『昔々、ある王様は困り果てていました。
「魔王が復活してしまった。」
みんなを集めても、魔王を倒すには力が足りません。
そんな時、とある村で勇者が現れたというではありませんか。
別の世界から来たというその勇者に王様は魔王を倒してくれとお願いをすると……。
「困っている人は必ず助けます!」という勇者は、早速魔王を倒しに行くのでした。
針山の砦を越えて魔像に襲われていた回復術師を救い仲間にし、とある村での決闘に勝ち戦士を仲間にし、とある島国に渡った際には妖精が仲間になり、人間の味方をしてくれていた四天王の1人を窮地から救い仲間にし、そうして出来上がった勇者パーティは魔王城へと到達するのでした。』
「お友達いっぱいだねぇ」
「そうだね、君にもお友達いるのかな?」
「うん、いるよぉ。
クランツと、ネルソン、テトラ、あとね、アストラ!」
「すごいね。お姉さんは、あんまりお友達はいないんだ。」
「そうなのー?
じゃあ、お友達になったげるー、私フランナ!」
「ふふ、ありがとう、フランナ。
……お礼に続きを読もうかな。」
「うん!」
『勇者は魔王城に着くと、お話で解決しようとしました。
「どうして悪いことをするんだ。」
「なにが悪いかを勝手にそちらが決めるな。」
そう言って魔王は攻撃をしてきます。
しかし、勇者はそれに屈することなく、魔王へ話しかけ続けます。
「誰もが自由に生きれる世界の方がずっと誰もが幸せになれる。
俺もそんな世界で生きた。
だが、魔王よ。君の自由は他の誰かの自由を奪ってしまった。
それではいけない、悪になってしまう。」
「それならば、私の自由はなくなるではないか。
幸せではないものが出てくるではないか。
全ては夢物語なのだ。」
勇者は魔王の巨大な体を抱きしめて、こう告げます。
「新たな自由を見つけにいけばいい、俺も一緒に、みんなも一緒に探す。
だから、悪いことをやめてくれ。」
長い長い説得の末、魔王は悪いことをやめ、世界には平和がもたらされました。
もう二度と魔王は悪いことをせず、魔王や他の魔物たちはこの平和な世界で人間と共に暮らしていきましたとさ。
めでたし、めでたし。』
「まおーとお友達になったってこと?」
「うーん、そうかもしれない……?」
「まっ!こら、フランナ!また他のお客様に読み聞かせねだったわねっ……!すみません!」
「あっ、待って待って、お名前、まだ聞いてない」
「シキだよ、フランナ。
しばらくここにお泊まりしてるからまたね」
ばいばいと手を振ると、母親に手を握られ、もう片方の手で必死にバイバイと手を振りかえしてくれる。
かわいいなぁと思いながら、椅子に座り、待つ。
絵本を読み返していると、お祖父様の言葉が脳裏によぎる。
『お父様はこの世界に来て絶望していた。』
……誰もが自由に生きれる世界になった方がだれもが幸せ、か。
そんな世界で生きてきたひいお祖父様。
そりゃ貴族だのなんだのと差も、縛りも多いこの世界と、元いた世界と比べてしまい絶望もするだろう。
……どうして元いた世界に戻らなかったのだろう。
戻れなかった訳ではない、聞いた話では国王陛下からも打診はあったらしい。
お祖父様にも伝わっていないそれを今は誰も知ることはできない。
それに対して曾孫は今すぐにでも自由を求める親不孝者になっているのだから、本当にひいお祖父様の血が流れているのか不思議だ。




