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2.私のアンドリュー

 

 最近の私は少しばかりはしゃぎすぎているように思える。

 それも仕方がないこと。

 あの悪魔が体調を崩したらしく、私の棲家をほっぱらかして何日も出てこなくなったから。


 しかし、いくらなんでもゼラニウムの葉がこんなに萎れてしまったというのにそのままにするなんて酷すぎる。

 せっかく花開いて、素敵な色を太陽に見せつけているというのにあの悪魔は飲み物の配給を忘れてしまっている。

 ああ!今日もまた私の愛するゼラニウムが生み出したピンク色の花びらが老衰と喉の渇きにより息を引き取った。

 美しい花びらがポトリと落ちてゆく。

 命の引き際。


 私はなんとなくその花びらの近くに寄っていき、細い手足でそれを撫でた。

――ああ、可哀そうに!

――あの悪魔には優しさの欠片もないのだろうか?

――せめて、せめて!少しばかりの水くらい!


 悪魔に出くわさないからって喜んでいる私と、悪魔が現われないがために飲み物をもらえなくて苦しんでいるゼラニウムたち。


 はしゃいでいた私はふと思う。

 自分さえよければいいのだろうかと。

 あの悪魔のように残虐で、愚かで、陰湿なものにはなりたくない。

 高貴であるべき私は誇りを持ち、香り立つ住まいをくれたゼラニウムに報いなければ!


 そんな折、私のゼラニウムの棲家に片脚を引きずったお仲間が現われた。

 彼は私を見ると頬を赤らめた。そしてちょっぴり微笑む。

 私だって、私だって!その方の姿をみとめた時には心がはずんだのだけれど、高貴な私からグイグイと近づいていってもいいものなのかしら?


 ああ!ただ何も言わず見つめ合って、微笑みあっているうちに、私も彼もそんな駆け引きみたいな、くだらないことはどうでもよくなった。

 私は勇気を出して話しかけた。


――「あなたのお名前は?」

 彼は悲しそうに答える。

――「僕に名前はありません。ただの僕です」と。


 ああ!名前がないなんてお気の毒に!

 もし、もしも私が名前を付けられるなら、あなたのことをこう呼びます。

 (アンドリューと)


 あの悪魔の娘が、少し前に母親の悪魔にこんなことを言っていた。

――『私はアンドリューが異世界に召喚された時に最初に言ったセリフが好きじゃない』

 すると悪魔がこう言う。

――『そうか?私は別にあのセリフは嫌いじゃないけど。ガストンとかドナルドの言い草のほうが嫌だね』


 その時私は思ったの。

 アンドリュー!なんて素敵な響きなのかしら!

 悪魔が口にしたガストンとかドナルドとかいう名前はちょっとアレだけど。

 悪魔の娘が言っていた『アンドリュー』

 なんて高貴な響きなのかしらと。


 私は恐る恐る言ってみた。

 目の前の彼にそっとね。

 「アンドリュー」と。


 すると彼の体が少しだけ輝いてフワッと弾んだように見えたの。

 彼は言ったわ。


――「なんて優しいんだ。僕がただの僕でなくなった。名前をくれたんですか?この僕に」


 私は答える。誇らしく、高貴に。

 「ええ。あなたはアンドリュー」


――「アンドリュー!素敵だ!なんて綺麗な名前なんだろう」


 そうでしょうとも。

 私はこっそり思ったの。

 (私のアンドリュー。ローズゼラニウムの私の住まいにようこそとね)


     ◇◇◇◇◇


 悪魔のワタクシは一時期体調不良が続きまして、ハーブの水遣りがテキトー、というかもう本当にほっぱら化していた期間がありました。

 熱が続き筋力も衰えてしまい、何回も2リットルのジョウロを持って往復する気力がありませんでした。

 この時に『カメ子くたばれ』と思ったわけではないのですが、あいつの代わりにワタクシのハーブがかなり傷ついてしまいました、

 ラベンダーの葉が乾燥して落ち、ローズマリーはバサバサになり少し茶色くなってしまいました。

 五種類あったミントのうち、二種類がとことん弱ってしまったのです。

 こういう時のために、自分が元気なうちに予防策を講じておかないといけないと思いました。


――――――――――――――――――

【今日のおすすめ情報】

 キャンプなどでも使える蚊取り線香ホルダーをお持ちでしょうか?

 ワタクシが使っているのはポケット等に引っ掛けられる金具が付いた、どこにでも売っている丸い形のタイプ(コールマンの製品)ですが、梅雨時から秋にかけて、これに蚊取り線香を入れてポケットに引っ掛けて水遣りをしています。

 蚊に刺されなくなるのでとてもいいですよ。

 いつも10cmくらいの長さに折った蚊取り線香を入れ、水遣りが終わった後は玄関に置いておきます。

 こうすると帰宅時に蚊取り線香のにおいが広がって、蚊が入りにくくなるのではないかと思いまして、試しにそうしていました。

 去年このようにやってみたのですが、実感として効果アリ、といったところでした。

 外から帰った人間が蚊を引き連れてくることってよくありますので。

 ですが、去年は部屋に蚊がいるということはあまりなかったように思います。

 気休めにやっていただけだったのですが、日に一回の水遣りが終わったあとの蚊取り線香を玄関に置いておく――

 これはオススメです。

 ワタクシは白檀の香りのものを購入して使っておりました。

 まあ蚊取り線香には違いないですが、残り香は少しマシです。

 今年はラベンダーの香りを買って見ようと思っています。


 



 カメ子の一人称を『私』にしてしまったので、悪魔のほうは仕方なしに『ワタクシ』となってしまいました。

 なぜアンドリューなる奴がカメ子と恋をしたのかがわかったかというと、なんでだかわかりませんがローズゼラニウムの鉢にはいつも2体の奴らが潜んでいたからです。

 最初に見つけた時にアンドリューは片足を引きずっていましたので、その時はワタクシもちょっと思うところがありまして、なんとなく放っておきました。

 でも何日もやつらがいるのでこれはまずいと思いまして、例のクリアホルダーで2体を外に飛ばしたところ、なんと!1体が飛びました。驚いたことに、カナブンのように元気よく飛んでいきました。

 そりゃ飛びますよね。まあ、飛んだのがどっちだったかはわかりませんが――

 そんなこともあって、あの時の彼らはきっと生きながらえたのではないかと思っております。


 アンドリューという名前はとても好きなんです。

 小説の中でお使いの方もいらっしゃるかと思いますが、高貴な名前の王子様にはぴったりですよね。カメ子の相手に使ってしまってごめんなさい。

 ドナルドという名前についてですが、トランプさんとかマクドナルドさんとか、結構いらっしゃるかと思いますあが、ガストンという名は結構好きです。

 そういえば、昔、アボンリーへの道というモンゴメリー原作の海外ドラマの中で『がス・パイク』という少年が登場していたのですが、素敵な俳優さんが演じていらっしゃいました。

 マイケル・マホーネンさんという俳優さんです。

 我が国の首相が憧れていらっしゃるドナルドさんは、あんなに慕ってくれる他国の首相がいてお幸せですね。

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