夜明け前
セツナは夜明け少し前に宿に戻った。
彼女はいつものように窓から入った。
テーブルのそばに座っていたミラは、すぐに顔を上げた。
「セツナ様」
「どれくらい?」
「47分」
セツナは窓を閉めた。
「何か変わったことは?」
「何も」
レナはまだ半分眠ったまま、布団から顔を出した。
「何か見つかった?」
セツナは書類をテーブルに置いた。
「ルシアンは私が来ることを知っていた」
その言葉でようやくレナは目を覚ました。
「えっ?」
「彼は私を待っていたの」
ミラは立ち上がった。
「じゃあ、彼は私たちを見つけたのね」
「私よ」
セツナは装備の確認を始めた。
短剣。
糸。
小さな瓶。
針2本。
袖に隠された小さな紙切れ。
レナは彼女を見つめた。
「彼らは戦わなかったの?」
「ええ。」
「どうして?」
セツナは言葉を止めた。
「彼が私に希望を与えてくれたから。」
他の者たちは沈黙した。
セツナはエリアス・ドーンのファイルを取り上げた。
「行方不明の17人のうち、何人かは生きている。」
レナは目を見開いた。
「生きている?!」
「ルシアンによると。」
「じゃあ、彼は彼らを殺していないのね。」
セツナは彼女を見た。
「ルシアンによると。」
レナはすぐに理解した。
まだ証明されてはいない。
「明日、彼は私を病院の下のエリアに連れて行ってくれる。」
ミラは眉をひそめた。
「安全な場所ね。」
「ええ。」
「彼の縄張りよ。」
「ええ。」
「脱出経路は知られていない。」
「ええ。」
ミラは数秒間沈黙した。
「気に入らないわ。」
セツナはかすかに微笑んだ。
「だから来るのよ。」
ミラは瞬きをした。
「私?」
「あなたとレナ。」
レナは自分の顔を指差した。
「私も?!」
「あなたは学びたかったんでしょ。」
「でも、あなたはいつもその答えを使うじゃない!」
「だって、いつもそれでうまくいくから。」
レナはため息をついた。
セツナは最後のナイフを片付けようとしたが、そこで動きを止めた。
何かが変わった。
ミラはすぐにそれに気づいた。
「どうしたの?」
セツナは手を上げた。
沈黙。
全員が従った。
セツナは耳を澄ませた。
何も。
それから彼女はろうそくのところへ歩み寄った。
彼女はろうそくの火を吹き消した。
暗闇。レーナは尋ねようとしたが、ミラがそっと彼女の口を塞いだ。
セツナは窓辺に立った。
彼女は直接外を見なかった。
小さな鏡に映った自分の姿を見た。
人通りのない通り。
荷車。
馬。
それ以外は何もなかった。
そして、彼女はそれを見た。
荷車はそこに長く放置されていた。
馬は商人が繋ぐようにきちんと繋がれていなかった。
そして御者は…
道を見ていなかった。
宿屋の方を見ていた。
セツナは鏡を片付けた。
「着替えて。」
ミラはすでに武器を手に取っていた。
「何人?」
「分からない。」
「見つかったの?」
セツナはマントを羽織りながら答えた。
「ええ。」
レーナは寒気を感じた。
「誰が?」
セツナはそっと小さな箱を開けた。
中には金属片がいくつか入っていた。
「調べてみましょう。」
その時、最初の悲鳴が聞こえた。
宿屋からではなかった。
通りから聞こえてきた。
そしてまた別の悲鳴。
鐘が鳴り始めた。
1回。
2回。
3回。
街の警報。
セツナは眉をひそめた。
「彼らは私たちだけを狙っているわけではない。」
遠くで爆発音が響いた。
窓がガタガタと音を立てた。
レナが駆け寄ってきた。
「病院!」
その方向から煙が立ち上り始めた。
セツナは理解した。
ルシアン。
行方不明者。
彼女。
すべてが繋がっていた。
「移動するわ。」
「病院へ?」レナが尋ねた。
「ああ。」
ミラがドアを開けた。
セツナが彼女を止めた。
「そっちじゃないわ。」
その直後…
外から何かがドアを突き破って入ってきた。
一枚の葉。
レナは後ずさりした。
セツナは瞬きもしなかった。
「だからね。」
窓が開いた。
「屋根へ。今すぐ。」
二人は一人ずつ外に出た。
屋根瓦にたどり着いた途端、通りに三人の人影が現れた。
彼らは全身黒ずくめの服装だった。
盾は持っていない。
紋章もない。
国旗の色も身につけていない。
セツナは彼らの動きを観察した。
彼らは盗賊ではなかった。
彼らは距離を保ちながら動いていた。
あらゆる角度から警戒していた。
プロだ。
そのうちの一人が顔を上げた。
彼はレナに気づいた。
「ターゲット発見。」
レナは顔色を失った。
「ターゲット?」男は付け加えた。
「黒髪の女は生け捕りにしなければならない。」
刹那は凍りついた。
ミラは剣を抜いた。
「刹那様…」
刹那は微笑んだ。
「面白い。」
最初の襲撃者が屋根に飛び乗った。
刹那は待った。
1秒。
0.5秒。
今だ。
彼女は横に避けた。
男は彼女の横を通り過ぎた。
刹那は男の手首を掴んだ。
彼女はくるりと振り返った。
彼女は男の武器を奪った。
そして自身の勢いを利用して、男を瓦屋根に叩きつけた。
2人目の襲撃者がすぐに現れた。
刹那は防いだ。
金属がぶつかり合う。
男は方向を変えた。
刹那もそれに従った。
攻撃。
防御。
反撃。
その時、奇妙なことが起こった。
刹那が次の技を繰り出す前に、男は後ずさりした。
刹那は動きを止めた。
彼女の目が変わった。
彼女はそれを予期していた。
彼女は別のコンボを試みた。
敵はまたもや正確に反撃してきた。
ミラはそれを見ていた。
――どうしたの?
刹那は三度目の攻撃を仕掛けた。
フェイント。
変化。
下段攻撃。
男は既に準備を整えていた。
刹那は一歩下がった。
今、彼女は完全に本気だった。
「彼は私の動きを知っている。」
攻撃者は反応しなかった。
刹那は彼の構えを観察した。
そして彼女は理解した。
「違う。」
間。
「彼らは私の動きを研究した。」
男が攻撃してきた。
刹那は防御した。
「ターン後の右短剣だ」と彼は言った。
刹那は動かなかった。
男は彼女は仮面の下で笑った。
「距離が離れると左袖から糸が出てくる。」
ミラは目を開けた。
「どうしてそれが分かるの?」
「相手が自分の力を超えたら膝蹴りだ。」
刹那の笑顔は消えていた。
これは一夜にして得られた情報ではない。
誰かが彼女を長い間観察していたのだ。
男は前に進み出た。
「刹那。英雄の処刑人として知られる。」
レナは胃が締め付けられるような感覚を覚えた。
彼らは彼女の名前を知っていた。
「閉所を好む。」
もう一歩。
「隠し武器。」
もう一歩。
「関節を狙う攻撃。」
もう一歩。
「対決前に地ならしをする傾向がある。」
刹那は微動だにしなかった。
「もう終わりか?」
「まだだ。」
男は武器を構えた。
「お前の最大の弱点も知っている。」
刹那は目を細めた。
攻撃者は標的を変えた。
刹那を攻撃しなかった。
レナを狙った。
「レナ!」ミラが叫んだ。
レナは反応しようとした。
遅すぎた。
剣が迫ってきた。
しかし、二人の間に何かが起こった。
刹那。
彼女は攻撃を受け止めた。
衝撃で彼女は後退した。
男は微笑んだ。
「その通りだ。」
刹那はゆっくりと視線を上げた。
「あなたは間違っていた。」
「何が?」
刹那は剣を押し返した。
「彼らのことを心配すれば、私の動きが予測できると思ったのでしょう。」
ミラはその表情に見覚えがあった。
それは刹那が戦略を完全に変える直前の表情だった。
「あなたが発見した唯一のことは…」
刹那は二本の短剣を鞘に収めた。
攻撃者はためらった。どうして武器を隠し持っているの?
刹那は両手を上げた。
…昨日もこうやって戦ったのよ。
男は眉をひそめた。
刹那は攻撃した。
短剣も使わずに。
糸も使わずに。
登録した技も一切使わずに。
短い一撃で男の腕を弾いた。
もう一撃で男の体勢を崩した。
刹那はマントを掴んだ。
彼女は回転した。
攻撃者はバランスを崩した。
ミラは理解した。
刹那は即興で戦っていたのだ。
男は距離を詰めようとした。
刹那はそれを許さなかった。
膝蹴り。
肘打ち。
突き飛ばし。
転倒。
攻撃者は屋根瓦に叩きつけられた。
刹那は武器の一つを取り出した。
それを男の首に突きつけた。
「さあ、質問に答えてもらいましょう。」
男は微笑んだ。
「遅いぞ。」
刹那は眉をひそめた。
また爆発が起きた。
今度はもっと大きい。
病院だ。
刹那は顔を向けた。
男はその隙に服の下に隠していた何かを起動させた。
光が現れた。
刹那は飛び退いた。
「伏せろ!」
三人は身を隠した。
魔法の爆発が屋上を横切った。
爆発が消えた時…
襲撃者は姿を消していた。
刹那は屋上の端まで走った。
何もない。
彼は逃げたのだ。
ミラが彼女のそばに駆け寄った。
「追うべき?」
刹那は煙を見つめた。
「だめだ。」
「でも、彼は私たちの正体を知っている。」
「その通り。」
彼女は病院の方をちらりと見た。
「彼らは私たちに時間を稼がせようとしているのよ。」
レナは荒い息をしていた。
「ルシアン…」
セツナは走り出した。
「彼女が危ない。」
聖エリア病院は混乱状態だった。
患者が次々と外へ流れ出し、
看護師たちが叫び声を上げ、
警備員たちが避難誘導に奔走していた。
建物の一部が炎に包まれていた。
セツナは人混みをかき分けて進んだ。
「ルシアン!」
建物の中から金色の光がほとばしり出た。
人影が窓を突き破って飛び込んできた。
中庭に落下した。
それは黒装束の襲撃者の一人だった。
そしてルシアンが現れた。
白い服は埃まみれだった。
額に傷を負っていた。
しかし彼は立ち続けた。
彼女を見て…
彼はため息をついた。
「遅いな。」
セツナは短剣を抜いた。
「明日って言ったじゃない。」
ルシアンは空を見上げた。
夜明けの光が差し込み始めていた。
「厳密に言えば…」
セツナは彼を睨みつけた。
「その言葉を続けるな」
ルシアンは初めて笑った。
ほんの一瞬だけ。
そして彼の表情が変わった。
「奴らは奴らを捕まえに来たんだ」
「行方不明の者たちを?」
ルシアンは頷いた。
「そして、お前もだ」
セツナは近づいてくる襲撃者たちを見守った。
6人。
8人。
12人。
ミラが彼女の隣に現れた。
レナも。
ルシアンは杖を掲げた。
セツナは短剣を構えた。
二人は互いを見つめ合った。
英雄と処刑人。
ほんの数時間前まで、互いに殺し合うことになるかもしれないと不安に思っていた二人。
ルシアンが先に口を開いた。
「話し合いは延期せざるを得ないようですね。」
刹那は敵を見渡した。
「自信と勘違いしないでください。」
「まさか。」
黒装束の男の一人が剣を構えた。
「刹那とルシアン・ヴァレルという者を引き渡せ。」
ルシアンは刹那を横目で見た。
「どうやら人気者みたいだな。」
「おしゃべりすぎだ。」
「よく言われる。」
敵が前進を始めた。
刹那は少し身をかがめた。
「見て。」
「はい、刹那様。」
「レナを守ってくれ。」
レナは抗議した。
「私だって戦えます!」
刹那はかすかに微笑んだ。
「ならば、生き残って証明してみろ。」
ルシアンは杖を構えた。
黄金の光が彼を包み込み始めた。
セツナは12人の男たちを観察した。
狩りを始めて以来初めて…
彼女は英雄と共に戦うことになる。
そして、さらに奇妙なことに…
初めて、彼女は自分が狩るべき怪物が一体誰なのかを知らなかった。
「ルシアン。」
「何だ?」
セツナは指の間で短剣をくるくると回した。
「死なないで。」
ルシアンは微笑んだ。
「私を殺すかどうかは、自分で決めるつもりだったんじゃないのか?」
セツナは最初の敵を見た。
その通りアメンテ。
そして二人は同時に攻撃した。
狩りは続いた。
しかし今度は…
刹那は依然として獲物が誰なのかを知らなかった。




