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英雄を狩る少女  作者: ジャクロの精霊


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16/41

言葉にならない恐怖

エルナールは完全に夜に包まれた。


物音一つしなかった。


夜の営みも、


笑い声も聞こえなかった。


家々にわずかに灯る明かりは、家というよりはむしろ閉塞感を漂わせていた。まるで、それぞれの炎が照らすためではなく、闇が完全に入り込むのを阻むために存在しているかのようだった。


寝室の窓から、セツナは外を眺めていた。


ガレス・ソルレンの家は、影の中にまだ見えていた。


静寂。


沈黙。


触れることのできない場所。


ミラは彼女の後ろに、正しい姿勢で立っていた。


「前のやつとは違うわ」とセツナは言った。


「ええ、セツナ様」


沈黙。


風が木の隙間を吹き抜けた。


「ヴァルドは過剰に支配されていた」とセツナは続けた。


「こちらは、支配によって支配されている」


ミラは頭を下げた。


「はい、せつな様。」


せつなは目を細めた。


「だからこそ、より難しいのです。」


ミラはすぐには返事をしなかった。


「怒鳴り声は出さない。」とせつなは付け加えた。


「人前での罰も絶え間なくない。」


「不必要な力の誇示もしない。」


せつなはミラの方に少し向き直った。


「何が見える?」


ミラは正確に答えた。


「抵抗の見えない服従です。」


「統制された沈黙です。」


「反応の抑制です。」


せつなは頷いた。


「それは単なる恐怖では得られません。」


「いいえ、せつな様。」


沈黙。


「それは絶え間ない恐怖によって得られるのです。」とせつなは言った。


「表に出す必要のない恐怖です。」


ミラは視線を落とした。


「はい、せつな様。」


せつなは家の方を振り返った。



「彼が罰せられるところを見せる必要はない…」


「ただ、彼にはそれができるということを覚えておけばいいんだ。」


村の雰囲気がそれを裏付けていた。


誰も口を開かなかった。


しかし、誰もが知っていた。


誰も文句を言わなかった。


しかし、誰もがそのことに触れようとしなかった。


誰も誰かを非難しなかった。


しかし、誰もが行動する前にまず様子を伺った。


これは一時的な恐怖ではなかった。


これは構造的なものだった。


ミラは静かに言った。


「その方が効率的な統制なのね。」


「ええ。」


セツナは窓枠に手を置いた。


「それに、壊すのも難しい。」


沈黙。


風が再び強くなった。


遠くで、扉が閉まる音がした。


そして、何も起こらなかった。


「まだ彼を攻撃しない。」セツナは言った。


ミラはためらうことなく答えた。


「はい、セツナ様。」


「もっと情報が必要だ。」


「はい、せつな様。」


せつなは完全に振り返った。


「彼は一瞬の隙で倒れるような男ではない。」


「そんな明らかなミスはしない。」


ミラは頷いた。


「彼は忍耐強い。」


「だからこそ危険なのだ。」


しばしの沈黙が流れた。


そしてせつなは決断を下した。


「私たちはここに残る。」


ミラは軽く頭を下げた。


「はい、せつな様。」


「一晩だけではない。」


ミラはほとんど視線を上げなかった。


「もっと長く?」


「ええ。」


せつなはテーブルに歩み寄り、腰を下ろした。


「彼の行動パターンをすべて見たい。」


「彼がいつリラックスするのかを知りたい。」


「彼がいつ警戒を解くのかを知りたい。」


ミラはきっぱりと答えた。


「私たちが彼を観察いたします、せつな様。」


セツナは足を組んだ。


「それに、彼がいなくなったら村がどう反応するかも見てみたい」


沈黙。


ミラはすぐに理解した。


「隙間を見つけるのよ」


「その通り」


敵は目立った弱点を見せなかった。


だから、弱点を作り出すか、見つけるしかなかった。


「それに」セツナは続けた。「もし彼の支配を崩さずに彼を排除したら…」


彼女は窓の方に目をやった。


「村はその後、どうすればいいのか分からなくなるでしょう」


ミラは視線を落とした。


「彼がいなくても…村は恐れるでしょう」


「ええ」


それは重要だった。


英雄を殺すだけでは不十分だった。


彼が築き上げた構造を破壊しなければならなかった。


「まず理解する」セツナは言った。


「それから破壊する」


「はい、セツナ様」


セツナは立ち上がった。


「明日、もっと動きましょう。」


「はい、せつな様。」


「今日は確認だけです。」


ミラは一歩後ずさった。


「夜通し見張っていましょうか?」


「夜通し見張っていろと言うのか?」せつなはしばらくミラを見つめた。


「はい。」


ミラは頷いた。


「警戒を怠りません、せつな様。」


せつなは扉の方へ歩み寄った。


「それと、もう一つ。」


ミラは顔を上げた。


「はい、せつな様。」


「この男を侮ってはいけません。」


ミラははっきりと答えた。


「侮りません、せつな様。」


せつなは頷いた。


「よろしい。」


彼女は窓辺に戻った。


ガレスの家はまだそこにあった。


まだ。


威圧することなく、堂々と。


全てが確信に変わった。


これは制御不能な怪物ではなかった。


もっと恐ろしい存在だった。


自分が何をしているのかを正確に理解している男だった。


そしてまさにその理由から…


彼を打ち砕く方が、より興味深いものになるだろう。


翌朝、雰囲気は改善しなかった。


村は目覚めた…


しかし、何も変わっていなかった。


同じ視線。


同じ沈黙。


同じ緊張感。


しかし今、刹那はそれを完璧に理解していた。


それは直接的な恐怖ではなかった。


それは後天的に身についた恐怖だった。


一つのシステム。


一撃では崩壊しないシステム。


「もっと難しくなるわね」と彼女は呟いた。


隣にいたミラが答えた。


「はい、刹那様」


刹那はかすかに微笑んだ。


「完璧だ」


ミラは頭を下げた。


「はい、せつな様。」


そして、太陽が村を照らし始め、あらゆる亀裂、あらゆる抑えられた仕草、あらゆる言葉にならない恐怖を露わにするにつれ…


せつなは最後の決断を下した。


彼女はまだ彼を殺さない。


まず、彼を理解する。


そして、彼女が彼を理解した時…


英雄が倒れるだけではない。


彼が築き上げてきたすべてが崩れ落ちるだろう。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
 飼い殺しの羊を苦しめるのは欲むきだしの狼だけでなく、強かに攻撃性も警戒心も研ぎ澄ましながら自他を制する羊飼いなんでしょうかね。 色々考えさせられる回でした。
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