転生者の影記
異世界からの来訪者。犠牲の上に作られた人工の英雄。数多の屍が人知れず影の中へ消えてゆく。
与えられた奇跡の力。偉業とともに名を示す英雄。喝采する民衆。俺は空虚な熱狂に眉を顰める。
力に溺れ魔に堕ちた来訪者。厄災とともに魔王の名を受ける。悲劇の慟哭が空に響き、俺は天を仰いだ。
かつて人知れず来訪者として招かれた俺。手に入れたのは死者を操る力。英雄には程遠い禁忌の力を感慨もなく捨てる。
もとより何にもなれぬ半端者。淡い自己嫌悪に浸り傍観者の立場へ身を潜める。
形を変えて積み重なる悲劇と英雄譚。ただ移ろう時の中、俺は惰性に生きる。
やがて、世界に現れたのは一人の来訪者。人類の敵としてのためだけに呼ばれた忌子。
知らず伸びた俺の手を掴む忌子。導いた先は誰も立ち寄らぬ秘境の地。忌子は無人の地で異形の女王として、孤独を癒す。
やがて、忌子は願う。かつて暮らした故郷への帰還を。忌子を慕う魔物とともに。
流血なしに成しえぬ願い。呪われた忌子が口にするこの世界への恨みと絶望。
否定できない俺は沈黙する。忌子は己の願いのために人を襲い、俺はただ、無為に新たな犠牲を看過する。
やがて訪れる互いの存亡をかけた人魔の大戦。敗れた忌子が最悪の魔王として生涯を終える。
待望の人類の勝利。喜びの声であふれる中、初めて俺は知る。
この世界が嫌いだったのだと。
最終決戦前のグレイブのことを現した詩です。
人生初めての詩ですが、これはテーマがもともとあったこともあって、比較的書きやすかったです。




