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04.交戦

 

 「――――っ!!!!!!!!」


 剣を構える、だがしかし間に合わない。

 暗闇の中から突然の襲撃を受けて、ユカリは地面に倒れた。

 反撃を試みようとするユカリだったが、転倒のショックで思考がまとまらず、結局は目の前の襲撃者から離れようともがく事しかできなかった。

 そこでようやく、ユカリは目の前の襲撃者の姿を見る。


 人型で大きさは約2m。全体的にトゲトゲしたシルエットで肩や肘の部分にも棘が生えている。

 色は薄暗いので断定はしかねたが、金属的な、光沢のある青で全身が統一されているように見える。

 頭部には角のような、蠍の尻尾を模した突起が一本生えており、目にあたる部分は赤く発光するスリットが一本、横切っていた。

 右手には身の丈ほどもある巨大な槍。左手にはこの巨体を隠すのに丁度いい大きさの盾。

 背中と腰部にはマントが付いており、胴体だけでなく脚部も上半身同様に鋭利な棘の生えたものになっていた。

 全体的に西洋の騎士が着る甲冑に、昆虫の足のような棘を各部から生やした、そんな姿をしていた。


 その襲撃者にユカリは、仰向けの状態で倒れたまま踏みつけられていた。足が邪魔で起き上がれずできる事と言えば、自分の手足をばたばたと動かすことだけだ。


 一方でソラの方はシイナを背中の方に隠しながら、襲撃者と対峙していた。

 杖を前に構えて応戦の態勢をとっている。

 襲撃者の方も地面でもがくしかできないユカリの方ではなく、ソラの方に意識が向いていた。

 ユカリはその隙を見逃さなかった。

 意識が完全にソラの方を向いた一瞬、ユカリは渾身の蹴りを襲撃者の背中に浴びせた。

 不意打ちだったためか、襲撃者はバランスを崩して前に出る。

 襲撃者が態勢を整える頃にはユカリも剣を構えて向き直っていた。


 「……」


 襲撃者は沈黙したまま後ずさりする。ソラとユカリ、両方を相手取る為だ。

 ソラとユカリも襲撃者と向き合いながら少しずつ、互いの距離を詰めていった。

 相手の動きに合わせて自身も少しずつ動く。その場にいる全員が一進一退を繰り返していたが、すぐにその状況は破られることになる。


 「でやあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 緊張状態が続く中、ユカリは前に出た。両手で構えた長剣を思いっきり振り下ろす。

 振り下ろされた剣は襲撃者に直撃し、ガキンと大きな金属音を鳴らす。

 しかし襲撃者は怯むことなく、手に持った槍を横に大きく振るう。それに対してユカリの方は地面を思いっきり蹴って、後ろに飛ぶ。

 ブゥンと槍が空気を切る音がユカリの前方から聞こえる。

 回避に成功したユカリは再び剣を構えて距離をとる。

 状況は先ほどと変わらないが、ユカリの内心は先ほどよりも焦りが生まれていた。渾身の力を込めた一撃が効かなかったからだ。

 

 (何なのよ、こいつ……)


 ユカリは内心でごちる。たった一度しか攻撃していないが、それだけでも目の前の襲撃者が自分よりも強いということだけはユカリもよくわかった。1対1の強さで上を行かれたならば、勝敗を分けるのは互いの強さではなくそれ以外の要素だ。


 それを感じ取ったユカリはソラの方に目をやる。

 ソラは相変わらずシイナを背にしながら襲撃者の方を見据えている。杖を構えて臨戦態勢なのも変わらない。

 ソラが最高の一撃を撃てるようにするため、ユカリはチャンスを伺う。今、この状況を打破できるのは自分ではなくソラの方だ。ソラの魔法が襲撃者に直撃すれば、逃げる隙が生まれるかもしれない。そう考えながらユカリは剣を構えつつ、襲撃者の視界から外れようとする。


 襲撃者の方も槍を構えてゆっくりとソラの方に近づいていく。目はユカリを見てはいなかったが、意識はまだ彼女の方にも向いている、ユカリはそう感じた。

 しかしそんなことに気を取られていては埒が明かない。そう感じたユカリはソラの方に軽く目で合図すると、勢いよく駆け出した。

 狙いは背後。この攻撃で足止めできるなら良し、止められなくてもソラが魔法を放つ時間が稼げればそれで良し。ユカリはそう考えながら剣を襲撃者の背中に振り下ろす。


 ガキンと大きな金属音が鳴る。そして襲撃者も足を止めて、ゆっくりとユカリの方に振り返る。

 ユカリはすぐさま防御の態勢をとりながら心の中では良しと思っていた。そしてこの不意打ちの結果はすぐに現れた。


 「ファイア・ボルト!!!!」


 ソラがそう唱えると杖の先に火の玉が生成される。その火の玉はわずかに電気を帯びているようで炎が燃え盛る音に混じって、パチパチと静電気のような音を発していた。

 火の玉はバスケットボールを一回り大きくしたような大きさまで達すると、杖の先からまっすぐ、そして勢いよく飛んで行った。狙いはもちろん襲撃者だ。


 ちょうどユカリの攻撃を受けて振り返っていたのもあって、襲撃者はソラの放った火球をユカリの攻撃に続いて、またしても背中で受ける形となった。


 「――!!!!」


 襲撃者は声には出さなかったが動揺したようだ。火球が直撃して大きく態勢を崩した。

 その隙を見逃さずユカリは思いっきり駆け出した。襲撃者の横を通り過ぎてソラとシイナの二人と合流する。


 「逃げよう!!!!早く!!!!」


 そう叫ぶとユカリはシイナの手を握って思いっきり駆け出した。


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