02.出会い
「ありがとう、おかげで助かったわ」
ユカリはソラに対して短く礼を言った。
「別に、大した事じゃないよ」
ソラの方もなんてことの無いようにあっけらかんと言い放った。
「それにしてもあんた、『守護者』が何だってこんなとこに? ここ、人なんていないエリアだぜ?」
ソラは尋ねた。
『守護者』とは銀河連邦の治安維持組織である。犯罪の取り締まりや惑星間で起こる武力衝突への介入など、銀河連邦全土で活動する警察・軍隊に相当する組織である。
惑星メトロポリスに本部があるので、もちろん『守護者』がここにいてもおかしくは無いのだが、基本的にはもっと人のいる上層の方で活動し、人のいない最下層区のような場所に手を回すような事はめったに無い。
無論、全く無いというわけではないが、常日頃からパトロールをするような事もなく、通報があったら派遣する。命令があって初めて向かう。その程度の扱いである。
その事を知っている人間からすれば、最も下に位置するこのエリアに『守護者』の隊員がいるのは何か事件があったのかと思わせるのに十分だった。
「えぇ、今説明するわ。――モンスターはやっつけたよ。出ておいで」
ユカリが後ろの方の物陰に向かって声をかけると一人の少女が怯えながら出てきた。
年齢は12歳ほどのように見え、背丈はユカリよりも頭一つ分ほど小さい。髪は雪のように白い白髪をボブカットにしており、前髪で右目の部分が隠れていた。その目は血のように真っ赤な色であり、雪のように白い髪とのギャップがその赤さの印象を深くしていた。
肌は青白く、華奢な手足をしており、服装については赤いキャミソールを一着。靴は履いておらず素足を直接地面につけていた。
手足には枷が付いており、それには元々どこかの壁に繋がっていたのであろう鎖が途中で千切れて備わっていた。
そしてその青白い肌には変色して紫がかった痣ができており、そのいで立ちからこの少女がひどくか弱い存在であることはソラの方も一瞥しただけで察することができた。
「この子は?」
「さっき、ここでモンスターに襲われていたの。――貴女、名前は?」
ユカリが尋ねたが少女は無言のままだった。しかししばらくすると消えるようなか細い声でこう言った。
「……シ……ィ……ナ……」
「わかった、シイナちゃんで合ってる?合ってたら首を縦に振って。」
ユカリがそう答えるとシイナと名乗る少女は首を2回縦に振った。
「この子、声を出せないみたい。病院で検査が必要かも。」
「だな。どっちにしろこんな小さな子をこのまま放ってはおけない。」
ユカリの提案にソラが同意する。
「お姉ちゃんが上まで送ってあげる。だから一緒に行こう?」
ユカリがシイナの手を引いて歩きだそうとする。その時だった。
「待てよ、俺も手伝うよ」
ソラが声をかけるとユカリは
「あまり一般人を巻き込みたくはないの」
そう答えたが、ソラの方は
「君一人でその子守りながら上へ行くよりも、二人で協力しながら行ったほうが効率的じゃないか? 足引っ張るほど弱くは無いってのはさっきの一件でわかるだろう?」
ソラがそう説得するとユカリの方はしばし無言で立ち止まり、しばらく考え込む様子を見せた。しばらくすると重い口を開いてこう言った。
「ごめんなさい。頼めるかしら」
ユカリの問いかけに対してソラはにっと笑いながらこう返した。
「任せなって。大丈夫、必ず守るよ」
ユカリとシイナ、二人に対してそう言うとソラはシイナの横に立ちシイナの空いている方の手を握って歩き出した。歩幅も二人の歩くスピードに合わせてゆっくりと歩いている。
こうして三人はここよりも上層のエリアを目指して暗闇の向こうへと歩き出した。




