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25.次なる道


 「おぉ! 上手いじゃないかシイナちゃん!」


 シュウが大きな声で褒め称える。

 その姿は大げさすぎていっそ滑稽に映るかもしれないほどだった。

 しかし褒められたシイナの方はというと、そんな事は気にもしてないといった様子で、褒められたことを照れくさそうに微笑んでいた。

 ソラ達は墜落現場まで徒歩で向かっていたのだが、その際シイナをいち早く逃がせるようにと、シュウがラプターに乗るように促したのだ。

 最初こそバランスが取れずにふらついていたものの、シイナはすぐにコツを掴んだのか今では当初の姿が嘘の様に様になっていた。


「ラプターが走ったら姿勢を低くして……そう、しがみつく様に……そうそう、そんな感じ」


 こんな調子でシュウはシイナにラプターの乗り方について歩きながら教えている。

 その横でソラ達は歩きながらこれからの事について話しあっていた。


「宇宙船が飛べるようになったらどこへ向かう?」


 ソラはユカリとエレノーラに問いかける。

 それに対して答えたのはユカリだった。


「そうね……考えたんだけどいつまでも逃げてばかりじゃ何にもならないと思うの」


 ユカリは腕を胸の前で組みながら、幾分考え込んだ様子で口にする。


「それはそうだけど……何か考えはあるの?」


 ユカリの発言にソラが返す。

 ソラの返事は想定していたのか、ユカリは最初から段取りを汲んでいたように明朗に、スラスラと話し始めた。


「ええ、まずシイナが狙われている理由って最終兵器を動かせるからでしょ。なら最終兵器を破壊なりなんなりしない事には、いつまでも逃げ続けないといけない」


「それはそうだね……まさか……」


 ユカリの発言を受けてソラが肯定の言葉を返す。

 途中でユカリがこの後なにを言いたいのか察したようで、顔を青ざめさせながらユカリに問いかけた。

 それに対するユカリの返答はソラの予想通りだった。


「そのまさかよ。帝国に乗り込んで最終兵器を破壊しましょう」


 自信満々、そういう言葉がこれほど似合う表情もあるまい。

 そう思いながらソラはため息をついて、呆れながらユカリに問う。


「やっぱり……一応聞くけど自分がどれだけ無謀な事言ってるかわかってる?」


 ソラの問いかけすらも最初から想定内だと言わんばかりに、ユカリは自信満々な笑みを崩すことなく返答した。


「もちろんよ。でも他に選択肢は無いでしょ。なら後はやるかやらないか。それだけよ」


「だとしたら連邦が本格的に介入しないうちに帝国領に入った方がいいですね……エルダーフから近くて連邦から距離を取りやすい帝国の惑星は……シーマリンですね……」


 ユカリの言葉を受けてこれまで二人の会話を聞いていたエレノーラが声を上げる。

 その表情はどこか沈鬱としている。


「エレノーラちゃん、どこか具合が悪いの?」


 その様子を見てソラが声をかける。

 それに対してエレノーラは自嘲しながら答える。


「……いえ……気にしないでください……目の前の状況について行くのが精いっぱいで……先の事なんて考える余裕もなくて……なんか自分……いなくてもいいんじゃないかって……思っただけです……はい…………」


 その言葉にソラもユカリも黙り込む。

 しかし、すぐに二人とも表情を変えてエレノーラを励ます。


「いなくても良いなんて事は無いよ。断言したって良い」


「そうね。私も同意するわ。エレノーラ、あなたがついて来てくれて……私……すっごく嬉しかった」


 ソラの発言を受けてユカリも同意する。

 声色こそ穏やかだが、表情は真に迫るものがあった。

 二人の言葉を受けてエレノーラが呆然としている中、ユカリは続ける。


「シイナを守るって言っても……帝国と連邦……銀河を二分する巨大な国家を相手にするんだもの……ここまで何度も不安になったわ……本当に………これで良いのかって……でも……だからこそ……あなたがついて来てくれて私、すっごく嬉しかった……シイナを守りたいって思ったのは……私一人じゃないんだって……だからこそ何度でも言うわ。あなたは、絶対に、いてほしい」


 強い口調でユカリはエレノーラに語り掛ける。

 その瞳は真っすぐとエレノーラを捉え、離す事は無かった。

 エレノーラはユカリの顔をしばらく見つめ、やがて恥ずかしそうに顔を背けながら目の横にこぼれた涙を二人に見せない様に拭った。

 そして二人の方を見て、微笑んだ。


「……ありがとうございます、二人とも……なんだか……元気が出てきました……」


「……気にすることないよ……俺も気持ちはユカリと同じ……仲間がいるって……それだけですっごく強くなれるんだから」


「……あなたの場合は本当にすっごく強くなれるものね」


 ソラの言葉をユカリが揶揄する。

 ソラはその言葉にあれは違うってと言いながらも否定する。

 しかしその表情は晴れやかなものであった。

 そんな二人のやり取りを見てエレノーラもくすくすと微笑む。

 出会ってから間もないにも関わらず三人の様子は長年の苦楽を共に過ごした友人同士の様であった。


 そんな三人の様子を見てシュウが冗談めかして声をかけてくる。


「な~んだあんた等、何話してんだ。俺とシイナちゃんも混ぜろよ~、なぁ? シイナちゃん」


 シュウはシイナの方を見て言う。

 それを聞いてシイナもこくこくと頷いて、ラプターに乗ったまま近づいてくる。

 それに対してユカリが微笑みながら返す。


「……別に……ただ次の行き先について話してただけよ……宇宙船が飛べるようになったら……向かうは帝国領、シーマリンよ」


 ソラやエレノーラに対して浮かべたのと同じように自信満々といった表情でユカリは答える。

 それに対する二人の反応もソラやエレノーラと同じようなものであった。

 五人と一匹は学校帰りの友人の様にその歩みを進めていった。



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