24.墜落現場へ
夜が更けて朝日が昇る。
惑星エルダーフの一日は二十三時間と地球人にとっては過ごしやすい自転周期である。
ソラ達は日が昇って二時間ほど経ってから目を覚ました。
シュウの家にある井戸から水を汲み、顔を洗った。
冷たい水が顔を刺激し、眠気が消えていく。
朝食は昨日の肉串の残りと、シュウが用意したパンを食べた。
「ごちそうさま。ありがとうシュウ、パン美味しかったわ」
ユカリが端的に、しかし感情は伝わるように感謝の言葉を述べる。
それに対してシュウは別に大した事じゃないと返した。
朝食も和やかに進み、一段落したところでシュウが口に出した。
「なぁ、あんた等これからどうするんだ? 帝国にも連邦にも追われてるんだろ?」
シュウの疑問はもっともだった。
ソラやユカリも目下最大の懸念があったのでそれを答える。
「………まずやるべきことは宇宙船の確保だな。………盗品じゃないやつで」
「どこへ行くにせよ、何をやるにせよ、自由に使える移動手段が必要ね」
ソラとユカリが言い終わるとシュウは待ってましたと言わんばかりに提案する。
「………なら話は早い。俺の庭に壊れた中型の宇宙船があるんだ。いつかこの星を飛び出して都会に出ていくためのな………あんた等、これを直すのを手伝ってくれよ」
「………そしたら乗せてもらえるって事で良いか?」
「――もちろん! むしろあんた等の旅に俺も付き合わせてくれよ! 損はさせないぜ?」
ソラが疑問の言葉を投げかけるとシュウは自らを売り込む。
あまりにうまい話にソラは一瞬、何を企んでいるのか疑念の目を向けたがシュウの表情がその疑念をかき消した。
やや悪い笑みだったが彼の表情からはそう言った謀り事の気配は感じられなかった。
「決まりね。改めて自己紹介するわ。ユカリ・イズミよ。よろしく、シュウ」
「私はエレノーラ・グリーングラスって言います~。こっちはシイナちゃんって言います~」
ユカリの自己紹介に続いて、エレノーラが自己紹介とシイナの紹介を済ませる。
シイナはエレノーラに紹介されるとぺこりと頭を下げて一礼した。
「もう一回自己紹介するよ。ソラ・リュウセイだ、よろしく」
「んじゃ、俺も。シュウ・サヴィスだ。よろしくなあんた等」
ソラが差し出した手をシュウが握る。
自己紹介も済ませると早速全員で、シュウの言っていた宇宙船の残骸を見に行く。
実物を見るなり、ソラは真っすぐと中に入ってどこが駄目なのか調べ始めた。
小一時間、調査しソラが戻ってくる。
戻ってくるなり、ユカリはソラに質問する。
「お疲れ様。どこが駄目だった?」
「そうだねぇ、足りないパーツはひとまず『操縦桿』、『ペダル』、『スロットル』の三つだな。センサー類は意外と大丈夫だった」
「なんて言うか、動かすのに必要不可欠な部分が綺麗に無いわね………」
「ま、ここに不時着したのも十年以上昔だからね」
ソラとユカリの問答にシュウが割って入る。
シュウの言葉を受けてソラも道理でと納得したように頷く。
「一応、昨日墜落したあの船からパーツをはぎ取れば代替は可能だった。準備できたら取りに向かおうか」
事もなげにソラは言い放つ。
彼の言葉にユカリとシュウ、エレノーラも同意して各々準備を始めた。
昨日襲撃してきたキャンサー、彼らは『帝国の奴』と呼んでいたが――彼と再び戦闘になることも考慮の上で出来る限りの準備を行ってから彼らは墜落現場へと向かった。
◇
ソラ達が墜落現場に向かっている頃、近隣にあるエルフの村には場違いな来客が訪れていた。
「――ブルストム、アルフォンス、フリーレンの三名、現着しました。ただいまより任務にあたります」
「ご苦労。村長には私から口利きしてあるから、休息や補給はその村で行いなさい」
「――了解しました。それでは」
金髪碧眼の体格のいい美男子が通信を切る。
彼の名はブルストム・ハルバード、惑星メトロポリスでソラ達と共にシイナを帝国から護衛した守護者の隊員である。
もっとも彼はその後の連邦の方針転換でシイナの殺害を目論んだためソラ達とは敵対する間柄であった。
アルフォンス、フリーレンと呼ばれたエルフの男性と鬼人の男性はユカリとエレノーラの代わりとしてブルストムの補佐の為にこの惑星を訪れていた。
通信が切れるとこの村の村長がブルストムたちに歓迎の声をかける。
「ようこそ、お待ちしておりました。私たちは皆さまを心より歓迎いたします」
「――丁重なお出迎え、感謝します」
「早速、宿の方までご案内します。ついてきてください」
村長がそう言うと村人の中でも若いエルフの男性がブルストム達三人を先導する。
その途中で案内人の男性はブルストムに声をかけた。
「そういえば、風の噂で聞いたんですけど、帝国が古代兵器の復活に成功したっていうのは本当なんですか?」
「――今のところは確認できていません。とはいえ上の方もその件については注視していましたね」
「ですよねぇ。もし連邦と帝国の戦争になったら大変だ。そうならないよう、私たちは祈るしかできませんで」
「――皆様の安全は私が保証します。どうかご安心ください」
「頼みますよぉ? 帝国は五大種族を奴隷にしてるって聞きましたから。奴隷なんてまっぴらごめんだ」
あくまでも軽口というか、雑談といった体で男性は話す。
とはいえブルストムもその内容が嘘では無いことは察することができた。
(…………連邦は国力では帝国に大きく勝るが、帝国にはネクロ・ネビニラルを含め単独で戦局を動かせる魔導士が五人はいる…………それにメトロポリスで俺が戦ったあのパワードスーツ……あれが量産でもされれば国力の差は大きく覆る……! 絶対に最終兵器の起動だけは阻止しなくては……)
ブルストムは内心で思案していると村の宿まで到着したようだ。
案内人の男性はでは私はこれで、と言って足早に立ち去る。
すぐに受付を済ませ、部屋に上がる。
そして荷物をまとめるとブルストムはすぐさま二人に指示を出した。
「――まずは宇宙船が墜落したとされるポイントまで向かう! 現地では戦闘になる可能性が高い! 十分注意をしろ!」
アルフォンス、フリーレンが声を揃えて了解と叫ぶ。
その返事を合図に三人は村に用意してもらったシュウがラプターと呼んでいた爬虫類と同じ動物に乗って、村を発った。




