第四話 「女性初の英雄? 大げさだろ!」
王宮の大広間。
国王をはじめ、貴族や騎士団長、冒険者ギルドの長たちが集まっていた。
その中央に立つのは、いつもどおりの格好をしたリディアだった。
国王が立ち上がる。
「リディア・エヴァンス。そなたは黒竜を討伐し、王国の危機を救った。さらに各地で多くの民を助け、その功績は計り知れぬ」
「はあ……どうも」
リディアは頭をかいた。
「よって、そなたに王国最高の栄誉を授ける!」
広間が静まり返る。
「本日より、そなたを英雄と認定する! 女性としては、建国以来初めてのことである!」
貴族たちがどよめいた。
リディアは目を丸くした。
「……えっ。英雄?」
「ああ。異論はあるまい」
「いや、あの……英雄って、もっとこう、立派で品行方正な人間がなるもんじゃねえのか?」
思わず漏れた本音に、広間のあちこちから笑い声が起こった。
国王も笑った。
「剣の腕も、魔術の才も、癒やしの力も申し分ない。何より、そなたは見返りを求めず民を救ってきた。それこそが英雄の証だ」
「……そっか」
リディアは少しだけ真剣な顔になった。
「なら、ありがたく受け取っておくよ。あたしの力で誰かを助けられるなら、これからもそうするだけさ」
王宮の外では、彼女を一目見ようと大勢の国民が集まっていた。
リディアが姿を現すと、歓声が爆発した。
「英雄様!」
「銀剣の聖女様!」
「ありがとう!」
子どもたちが花束を差し出し、老人たちが涙を流す。
リディアは照れくさそうに頬をかいた。
「お、おいおい。そんなに騒ぐなって。あたしはいつもどおりだぞ?」
そして、花束を抱えた子どもに笑いかけた。
「ま、これからも困ったことがあったら言いな。助けられることなら、力になるぜ!」
ーーその瞬間、歓声はさらに大きくなった。
こうしてリディアは、王国中から愛される英雄となった。
一方、彼女を追放した『紅蓮の牙』の面々は、酒場の片隅でその様子を見ていた。
「……なんでだよ」
ガルドが歯ぎしりした。
「なんで、あんな女が英雄なんだ!」
彼らの転落は、すでに始まっていた。




