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第三話 「黒竜? ああ、あいつか」

リディアが旅を始めてから半年。

王国北部に、恐ろしい知らせが届いた。

災厄級の魔物、黒竜が目覚めたのだ。

黒竜は炎で街を焼き、立ちふさがる騎士や冒険者を次々となぎ倒した。


王国は精鋭の討伐隊を派遣したが、結果は惨敗。

負傷者が運び込まれ、王都は騒然となった。


「このままでは北部の町が全滅するぞ!」


「誰か、黒竜を倒せる者はいないのか!」


ーーそのとき、王宮の扉が開いた。


「黒竜なら、あたしが行くぜ」


現れたのは、銀髪の女剣士だった。


「リディア殿! しかし、相手は災厄級の魔物ですぞ!」


「知ってるよ。さっき聞いた」


「一人では無謀です!」


リディアはニヤリと笑った。


「じゃあ、あんたらは何人で倒せるんだ?」


「そ、それは……」


「ははっ、冗談だよ。まあ、任せとけ。こういうデカブツは慣れてんだ」


彼女は剣を肩に担ぎ、王都を飛び出した。

黒竜が待つ北部の砦に到着すると、そこには傷ついた兵士たちが倒れていた。


「おい、しっかりしろ! まだ生きてんだろ!」


リディアはすぐさま回復術を使い、負傷者を治療した。

さらに魔術で防壁を強化し、黒竜の炎から砦を守る結界を張る。


「よし、これで少しは持つだろ」


彼女は剣を抜いた。


「さて……待たせたな、トカゲ野郎!」


黒竜が咆哮し、灼熱の炎を吐き出した。

リディアは魔術で風の壁を作り、炎を左右へ受け流す。

そのまま地面を蹴り、黒竜の懐へ飛び込んだ。


「図体ばっかデカくても、当たらなきゃ意味ねえんだよ!」


剣が閃く。

硬い鱗の隙間を正確に斬り裂き、魔術で動きを封じ、最後は全身の魔力を剣に集中させた。


「これで終わりだ!」


青白い光が走る。

黒竜の額にある魔力の核が砕け、巨大な身体が地響きを立てて倒れた。

静寂。

やがて砦から、信じられないという声が上がった。


「た、倒した……」


「黒竜を、一人で……!」


リディアは剣を鞘に収めた。


「よし、討伐完了っと」


そして、すぐに兵士たちのほうへ駆け寄った。


「おい、怪我人はまだいるか? いたら並べ! まとめて治してやる!」


兵士たちは顔を見合わせた。

黒竜を倒した直後だというのに、彼女が真っ先に気にかけたのは自分の功績ではなく、負傷者のことだったのだ。


「……すげえ人だ」


ーー誰かが呟いた。


「あの人こそ、本物の英雄だ」


その言葉は、やがて国王の耳にも届いた。

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