第二話 「助けてくれ!」――任せとけ!
ソロ冒険者になったリディアは、王都を離れて各地を旅していた。
ある日、街道沿いの村に立ち寄った彼女は、村の広場で騒ぎが起きているのを目にした。
「誰か! 息子を助けてくれ!」
血まみれの少年を抱えた男が、必死に叫んでいた。
どうやら森で魔物に襲われたらしい。
村の治療師は首を横に振った。
「傷が深すぎる……私の力では、もう……」
「そんな……!」
男が絶望しかけた、そのとき。
「おい、ちょっとどいてくれ」
リディアが人垣をかき分けて現れた。
「傷を見せな」
「だ、だが……」
「いいから。まだ息はあるんだろ?」
リディアは少年の身体を調べ、ふっと息を吐いた。
「なるほどな。毒も入ってるのか。面倒くせえ相手にやられたもんだ」
彼女は少年の胸元に手をかざした。
「ま、心配すんな。死なせやしねえよ」
金色の光が少年の身体を包み込む。
裂けた傷が塞がり、青ざめていた顔に血色が戻っていく。さらにリディアは、体内に残った毒まで浄化した。
「……う、うん……」
少年が目を開けた。
「お、おお! 目を覚ましたぞ!」
「よかった……! よかったぁ!」
父親が涙を流しながら息子を抱きしめる。
リディアは立ち上がり、頭をかいた。
「よし、ひとまず安心だな。今日は無理させんなよ。まだ体力が戻ってねえからな」
「ありがとうございます! なんとお礼を申し上げれば……!」
「礼なんかいいって。助かったんだから、それで十分だろ」
その日の夕方。
リディアは村の人々から夕食をごちそうになっていた。
「お姉ちゃん、剣も魔術も回復術も使えるの!?」
「ああ、まあな」
「すげえ! じゃあ、勇者みたいだね!」
「ははっ! 勇者って柄じゃねえよ。あたしはただの冒険者さ」
そう言って笑うリディアの前に、村長が頭を下げた。
「実は最近、森の魔物が増えて困っておりまして……」
「ん? 魔物退治か?」
リディアは肉を頬張りながら尋ねた。
村長は肩を震わせながらコクリと頷いた。
カタン!頬張っていた骨付き肉を皿に置くと
彼女は立ち上がり、剣を手に取った。
「よし、明日の朝に片づけてくる。安心して寝てな!」
翌朝。
村の近くに出没していた魔物の群れは、ものの見事に一掃された。
その後もリディアは、道に迷った旅人を助け、盗賊に襲われた商人を救い、病に苦しむ人々を回復術で癒やした。
報酬を払えない者には、決まってこう言った。
「金がねえなら気にすんな。困ったときはお互い様だろ?」
そんな彼女の評判は、街から街へ、村から村へと広がっていった。
いつしか人々は、彼女をこう呼ぶようになった。
『銀剣の女英雄』と。




