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episode7.5.ここは…

ようこそ!えけて。と申します!

初めての小説なので、温かい心で楽しんでいってください!



【ユーフトマ視点】


あの暖かな不思議な青年と別れ

ユーストマはいつもの日常へと戻った。


月の砦とも呼ばれる

ルナバスティオン大図書館。

そこの司書をしている。


この図書館は王家が管理しており、その下に館長がおり、あとは司書と事務所だけだった。

司書の役割など特にあるわけではなく、

時間だけが静かに積もっていく場所だった。


受付の事務職員が一般客の対応をするため

ユーストマはたくさんの本を読めるのだった。

自分の席へ向かうため図書館の奥へと進んでいった。


「おはようございます」


ユーストマは誰もいないところへ声をかけた。

そうすると、光る蝶が飛んできた

それはユーストマの周りをぐるぐると巡り、

やがて地面へ溶けるように消えるものや、

空へと還るように昇っていくものがいた。


見慣れた光景だった。


それを見届け、自分の机が本で埋まっていたため、魔法を使い本を元の場所に戻していった。


本を片付けたり、軽く掃除など昨日の帰りの際にやっていなかったことを片付けながら時間を過ごしていると職員の勤務時間となった。


「司書様、おはようございます」

とばらばらと職員が増えていく。


一人一人に挨拶を返し

朝礼をした。

あらかじめわかっている訪問者やなにか注意事項などがあるときは伝えるが基本ないため

すぐに終わる。


「では、本日も1日よろしくお願いします」


ユーストマは丁寧に頭を下げた。






昼食を食べ穏やかな時間が流れていく。

今日は来客も、子供達への読み書きや読書会などのボランティアもない。

何も起きない一日。

それが、この場所では正しい形だった。



———プルルル

机の上に置いてあるが滅多にならない電話がなった。


「はい、ユーストマです。どうなさいましたか?」


『今受付に館内の絵を描きたいという青年が来ているのですが…』


「…絵ですか…?」


ユーストマはまさか、昨日出会った彼を思い出した。


『はい、初めてのことでわからずお聞きしましたがどうしましょう?』


「今来ている青年は狐の獣人族ですか?」


『え?はい、青い狐の子ですが…?』


「わかりました。私がそちらで対応します」


そういいユーストマはため息をしながら電話をおいた。

この街に絵描きなどそういない、

しかも昨日あった彼。この図書館の近くのパン屋に行くと言っていたからそうだろうとは思った。


ルールが厳しく描けない場所もあるなど、あそこなら大丈夫だろうと色々と考えながらユーストマは急いだ。


ユーストマは無自覚だったが、

口元がわずかに緩んでいた。







——————

「あ…」


早足で受付へ向かったユーストマは

遠目にあまり見ない青色が見えた。

そちらを見ながら普段通り歩くと


「あ、ユーストマ!!」


(名前覚えていたんですね…)

「……やはり貴方でしたか…」


ケットが気付き、先に声をかけられた。

ユーストマは少し嬉しくなり、口角が自然と上がってしまった。


「図書館ではお静かに、ですよ」


そう伝えケットが慌ているのを横目に

受付の事務職員へ声をかけた。


「私が対応するので大丈夫です」


「わかりました。司書様のお知り合いの方ですか?」


「少し縁があっただけの方です。

ではまた何かあれば報告してくださいね」


そういいユーストマはケットの元へ行き

絵を描く許可を出した。


そうして、


「わかってる!

できたらユーストマに一番に見せるな!」


その一言にまた口角が自然と上がる。

ユーストマは自分が嬉しくなったり、楽しみにしていること、

自分はこの自由な人物を割と気に入っているのだなと、そこで気づいた。




絵を描くケットを少し長め、

急いできてしまったため、書物などが机に出したままなことを思い出し自身の作業へと戻った。


(彼はなぜあんなにも自由なのだろか)


(毎日が楽しそう…だ、)


ユーストマはケットの様子を思い出しながら

この図書館の何がいいのだろうかなど考えていた。


自分で選んだ道。自由を差し出したのは自分だが少し


(羨ましい…)


ユーストマの過去、全てにおいてケットのように自由であったことはないのだった。



片付けも終え、様子を見に戻ると

事務職員たちが彼を見ていた。


『もふもふだわ、あのしっぽ触らせてくれないかしら…』

『いや、あの耳も絶対柔らかいはず…!』

何やら話していたようで、気になり声をかけた。


「どうかしましたか?」


「「!?司書様!」」


驚かせてしまったようだが、

しーっと人差し指を口に当て注意した。


「いや、あの絵描きさんがとてもふわふわとしていて…」


ほら、と彼を指差しそこに目を向けると

さらさらとしたボリュームのある大きめのしっぽがゆらゆらとしていた。


「確かに」


くすくすと笑いながら。

そんな表情を初めて見る職員は驚いていたのを見なかった事にした。

仕事へ戻るようにと促し、ユーストマはケットの元へ向かった。


ケットは耳を立て、

足音で気づいたのか、隣の席へ誘導した。


絵を見てみると、ほとんど完成に近かった。


「…すごいですね…もうここまでかけているんですね…」


「この場所スッゲェ綺麗だから筆がよく走るんだ」


そうですか、とだけ言い

ユーストマは絵から少し目を逸らした。

この場所が綺麗なだけではないと知っているユーストマはその言葉が受け止めきれなかった。


少し黙っていると


「ここにいる、光ってる蝶?すごい綺麗だな」





ガタッ


一瞬、時間が止まったように感じた。


(なんで彼にも見えているんだ…

どうして?だってそれは…

いや、ここに気に入られたのか…いやだめだ、それでは彼が危険だ…)


ユーストマは勢いよく席を立ってしまった。


なぜ、どうして、だめだ

それだけが頭を巡った。


数秒だろう。

少し落ち着き周りを見ることができるようになった時

隣のケットの表情が目に入った。

その時、自分が立っていることに気づき状況を理解し周りへ一礼してから席についた。



「……それらは描いてはいけません」


なんで言えばいいかわからず、本当のことも伝えられず

出てきた言葉はそれだけだった。


「わかった」


ケットは笑うこともなく、真面目な顔で答えた。

その一言、その表情に

ユーストマは余計に顔を歪めそうになってしまった。


ケットを巻き込まないようにしたい気持ちや、離れてしまうことへの寂しさを考えてしまって、声をかけることができなかった

また、いつもは騒がしい彼も一言も話しかけなかったことで罪悪感が込み上げた。


どうすることもできない解決策や原因がわからないことをずっと悩み続けていた時



———できた…


声が聞こえた。

みてみて、とケットが見せてくれた絵は


「すごいですね…やはり貴方の絵は悩みすら消してくれる素敵な絵ですね」


本当に自分が知っている場所なのかと思ってしまうほどに今の図書館とは違って見えた。


昔好きだった場所、そんな懐かしさすら感じた。


ケットは心配そうに描いてはいけないものがないか確認をして大丈夫と答えると

席を立ちどこかに行こうとしそれを眺めていたらある1人のお客へと声をかけていた。


何をしでかすのだ、とまだ信用しきれていないのもあり慌てて駆け寄った


(いつもきているお婆さん…なぜ?)


ケットは気にしないようで話し始めた。

周りを気にして少し小声で話してくれている。


ユーストマはいつも挨拶くらいしかしないので

話を聞くのは初めてだった。


たまにこっちを向けばケラケラと笑いながら話をしていた。


思い出話、恋愛話

自分とは無縁で、どう話を聞けばいいか経験が足りないユーストマはただ話を黙って聞くしかなかった。



 

—相手はそうじゃなかったかもしれないけど—


その一言で

どの人物か確信してしまった。

このお婆さんがどうしてそんなことを思ったのか、自分もわかるからだ。


それに自分もこの場所で

話の人物である相手である“前の司書”にお世話になっていたからだ


あの時は嫌いじゃなかった。

その時は助けたいと、自由にしてあげられるなら残りわずかな時間だけでも返したかった。



「嫌な場所でも、誰といるかとか、どんな思い出があるかによって変わるって!

過ごし方次第だし、おばあちゃんがいてくれなかったらもっとその人は嫌な思いしたかもしんねぇーし!」


耳にすっと入ってきた言葉。

そうだ。自分は前はここが大好きで、居場所だった。


(こんな気持ちも忘れていたなんて…)


ユーストマは自分と重ねて聞いていた。


その後も無償で絵を上げようとするケットをみて驚いた。

お代もいらない、思い出をもらったからと。


騙されそうだな、と思いながらユーストマはその青年を見ていた


お婆さんを見送り

姿が見えなくなったところで、入り口から外を眺めたまま


「貴方はいつもああして、誰にでも絵を渡しているのですか?」


ユーストマはずっと疑問に思っていたことを聞いた。

朝もお世話になったからとくれた。

彼にとっては絵の価値はお金ではないのだろうか、他人からもらえるものが自分が時間を費やして描くものよりでかいのだろうか。

不思議だった。



「言ったろ?俺は描きたいだけ。

気に入ってくれた人に見てもらえる方が絵も幸せだって」


描きたいだけ、対価を求めないその姿勢。

絵の幸せとはなんなのか、完成すらも自由で


「……そうでしたね」


それしか言葉などでない。


困っていたケットをみて、

ユーストマは少しだけ目を伏せた。


自由を体現しているような彼が

ユーストマは少し眩しく羨ましく見えた。

描きたいから描く、寝たいから寝る。

お腹が空いたから好きなものを食べる。


彼は、やりたいことをやる。

それだけのことを、迷いなく選べる人だった。


眩しく、

そして自分とはあまりにも遠い存在だと、

ユーストマは静かに思った。

お読み頂きありがとうございます!

更新も頑張っていきますので、よければ次も読んでいただけると嬉しいです

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