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episode16.別れと次の目的地

ようこそ!えけて。と申します!

初めての小説なので、温かい心で楽しんでいってください!



「かけた…!!」


ユノアリスとそこの主であるミストリアが描かれていた。

精霊樹の花を使った光る絵の具で塗られた、色とりどりの温泉から湯気がでており、

湯気の奥には双子が描かれ、

手前少しは時にはミストリアが岩に座っている様子が描かれていた。


幻想的で、ふわふわとしているようで

しっかりと色がでている絵だった。


「……君、意外とちゃんとしたの描けるんだね」


ミストはケットの絵を見ながら少し驚いた。

子供みたいな性格で、元気があって、自分の気持ちに鈍感で、能天気で、言ってはあれだが雑そうな感じなのに

繊細な雰囲気の絵が描けることに驚いた


「失礼な!一応これで生きてるんだぞ」


「はいはい、けどもっと私は美形だよ」


「えぇー、これでも美化して書いたつもりだけど〜」


「なんだって?!美化して?実物の方が何千倍何億倍と美しいだろ?!」


みなよ、この造形美といってミストリアは変なポーズや髪をかきあげたり色々としているが

ケットは何か言っているくらいの気持ちで無視をしている。


「…ねぇ」


「なんだい?今いいところだったろ」


ミストは自分の武勇伝や美貌について

小さい子の自分が可愛すぎて双子を出したことなど語っていたが興味がなくケットは自分がしたい話を切り出した


「この絵持ち帰ってもいい?」


「…!!私を描いたんだから私にくれるのではないのか!?」


「んー、そう思ったんだけど、

あの人にも見せたいなって思ってさ」


ケットは普段なら自分から作品を持ち帰ることを選ばないが

今日は思い出話をしたり、昔お世話になってた人と同じ雰囲気を感じたり

少しホームシックになっていた。


「えーーーー

いやだよ、これはもう私のだよ」


「あげるってまだ言ってないのに!強欲だーー!!」


そう言ってミストはケットから絵をヒョイと奪い取り浮遊魔法でケットが取れない高さに上げていた。


「見せたいのだろ?私が出向いてみせてやればいいだけじゃないか」


「えっ!?あの人に会いにいくことあるの?」


「あぁ、文句を言いにたまにな」


「友達じゃないって言ってたのにやっぱ仲良いじゃん」


「友ではないといっているだろう!!」


はいはい、と流しながら、このやり取り何回目?と思いつつ

ケットはあの人に会いにいく人がいることに嬉しさと、やっぱり2人は友達なんだって思えることに嬉しくなった。


「ならこの絵あげる!絶対みせてあげてね!」


ケットは18歳に家を出てから会いに行ってないものの

手紙のやり取りはたまにしていたため、縮小魔法でも使って送りつけようとしていたが、

ミストリアに持っていってもらった方が楽しそうと呑気に考えていた。


「何もやることなく1人寂しく家に引きこもってる大きな子供に絵を手土産に今度会いにでもいってやるさ」


「大きな子供って!

確かにそうなんだけどさ〜!」


「そうだろう、そうだろう!

あいつを表すには適した表現だろ!」


2人でケラケラと笑いながら同じ人物を思い浮かべては、また笑っていた。


「あはは、笑った笑った〜

絵のお礼と笑顔のお礼に次の目的地の近くに出口を繋げてあげるよ」


「本当!?ありがとー!崖降りるのちょっと大変だなーって思ってたんだよね」


「あぁ、君は崖から登ってきたのだったね、

ここにはちゃんとしたの出入り口があるんだよ」


崖からくるやつなんてここ100年いなかったよと少し呆れていた。


「出入り口は各街に結構あるんだよ。転送魔法で繋げているんだ

基本は帰る際は入ってきた場所と同じところに出るけど今回は特別だ」


「これも、ひとえに私がすごいからなんだけどねっ!!」


「そうなんだ!すごいね!よっ!さすがミスト〜!」


そうだろそうだろうと、嬉しそうなミストを見ながら

こういった、褒めて欲しいなど、力があると言う自慢はあの人と一緒だなと思っていた。

神族はみんなこんな感じなのか?と少し心配でもあった。




「さぁ、次はどこにいくんだい?

“旅する絵描きクン”」


そうミストリアは問いかけ、

ケットは少し悩んだ


「んーー、やっぱり美味しいもの食べたいよね…」


少し考え、行きたい場所を思いつき伝えると

ミストリアはぱちんっと指を軽く鳴らした。


その音と同時に、

温泉の湯気がふわりと揺れる。

目の前の空間が、

水面みたいにゆらゆらと波打ち始めた。


「ほら、出口だよ」


湯気の向こう、

丸く切り取られた景色が見える。


深い緑。木々のざわめき。

遠くから聞こえる鳥の声。

ユノアリスとは違う、湿気の少ない森の空気が流れ込み

ケットの耳がぴくりと動く。


「おぉぉ……!」


目を輝かせながら近づく。


「すっご……」


「ここをくぐれば目的地の近くだよ

街までは歩いて15分くらいかな」


「めちゃくちゃ近いじゃん!」


ありがとうと伝えながら

ケットは尻尾をぶんぶん振りながら

出口の周りをくるくると周りながらワクワクしていた。


「君、また面倒ごとに巻き込まれないでよ?」


「ん?」


ケットはきょとんとする。

それを見てミストリア今日何度目かもわからないため息をついたが


「巻き込まれることあんまないよ?」


それを聞いて今度は今日1番ドン引きの顔をした。

自覚がないとは恐ろしいと呟きながらケットをこの世の生物ではないかのように見つめた。


「その顔ひどくない?」


「私はどんな顔をしても美しいだろ」


「えぇ、今の顔は絶対人に見せちゃいけない顔だって〜」


ミストリアは顔に手を当てながら深いため息をついた。


「まったく……

君がおバカで鈍感で能天気で優しすぎるおバカでアホの子だってことはよーくわかったよ」


「えへへ」


「褒めてない」


また笑うケットに、

ミストリアは半目になる。


「はぁぁ、ほらもう行きな」


しっしっと手を払うようにケットを見送る


「君と話していると老けていくような気になってくるよ」


「ミストは老けてないし綺麗だよ?」


「知ってるよ、いいから早く行って来なよ」


はーいと言い、ケットは出口の前まで行き足を止めた。

振り返るりユノアリスを見渡した。


色とりどりの湯、ゆらめく湯気、幻想的な空間

そして、そこに立つ神族。


ケットはへらっと笑った。


「ミスト」


「なんだい?」


「今日はありがとな!」


真っ直ぐな声だった。


「温泉も最高だったし、話せてよかった」


「絵も描けたし、めちゃくちゃ楽しかった!」


ミストリアは少し目を丸くする。

ケットは続ける。


「また来る!」


あまりにも迷いのない声で

まるで、明日また会おうと言うみたいに自然だった。


ミストリアは数秒黙ってから、小さく笑った。


「……そう」


静かに答える。


「次は崖から来るんじゃないよ」


「はーい!」


「あと、今度来る時は土産を持ってきてね」


「えっ、何がいい?」


ミストリアは少し考えて、ふっと笑った。


「そうだねぇ」


細い目が、悪戯っぽく細められる。


「君の描いた絵」


ケットがぱちぱちと瞬きをした。


「え?」


「今回みたいなやつ」


ミストリアはそっぽを向いた。


「……悪くなかったからね」


ケットはぽかんとしていた。

時間差で段々と口が上がっていくのがわかる。

そんなことを言われると思っておらず、嬉しくてたまらなくなり、ぱあっと顔が明るくなる。


「まじ!?」


「まじ」


「描く!!!」


即答だった。


「絶対、ワクワクする絵描いて持ってくる!」


「はいはい」


ミストリアは適当に返す。

けれど口元は少し緩んでいた。





ケットは一歩、出口へ足を踏み入れる。

すると今度はミストリアから声をかけられた。


「ケット」


少しだけ真面目な声でケットは振り向いた。

そしてミストリアは静かに告げた


「君は君が思ってるより、ずっと珍しい」


ケットはきょとんとする。


「そうなの?」


「あぁ」


湯気が揺れる。


ミストリアはまっすぐケットを見る。

優しい笑顔で


「だから、自分を軽く扱うんじゃないよ」


ケットの耳がぴくりと動き、一瞬だけ真剣な顔をしたが、すぐにいつもの笑顔に戻る。


「……うん!」


大きく頷く。


「気をつける!」


たぶん、半分も伝わってない。

それでもミストリアは少し笑った。


「まあ、いいさ」


小さく手を振る。


「行っておいで」


ケットも大きく手を振り返した。


「またな、ミスト!」


次の瞬間、

ケットの姿は光の向こうへ消えた。



 



————————————

 

温泉の国、ユノアリス

いつもの静寂。


今日みたいに騒がしいことの方が珍しいのだ。


ここにくる人は大切な人を亡くし生きる希望もなく死ぬのも怖い忘れて楽になりにくる人

夢に囚われ夢の中でしか生きられない人

体が悪く治る見込みもないため最後の希望にくる人。

そんな訳ありばかりだった。


ミストリアは見通す力なのではなく

湯に入った人の記憶を見てしまうのだった。


さっきまであの旅する絵描きがいた場所をしばらく見つめていた。


それから、小さく息を吐く。


「……まったく」


手元には、ケットが描いた絵。

そこには、自分の知らない自分が描かれていた

柔らかく、穏やかで、どこか楽しそうな顔をしていた。


手でそっと触りながらミストリアは小さく笑う。


「ほんと、親子そろって面倒な奴らだ」


そう呟きながら、絵を大事そうに抱えた。


「さて」


湯気で何も見えることのない

上も下もわからない、ここが地上なのか、空の上なのか

だけど、自分たちは上にいた。神族を思い出す時はつい癖で上を見てしまう。


「今度あいつに会いに行くか」


その目は、

少しだけ楽しそうだった

お読み頂きありがとうございます!

更新も頑張っていきますので、よければ次も読んでいただけると嬉しいです

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