episode9.ケットという狐
ようこそ!えけて。と申します!
初めての小説なので、温かい心で楽しんでいってください!
「今日はもうほくほくだ」
図書館でユーストマと別れた後ケットは宿を探しに王都の入り口の方へ向かっていた。
少し歩いていくと先ほどまで人がいなかったのが嘘の様に
いろんな人が歩いている。
冒険者、露商人、自警団、魔法使いなどなど
この街は賑やかだとくるたびに思うのに、
昨日今日は、随分と静かなところにいたんだなと改めて感じた。
そんなことを考えながら進んでいると見覚えがある裏路地を見かけた。
ちょうど昨日通った道、
だけど随分と前にも感じるくらい昨日の夜から今日にかけてが濃い1日だった。
(ちょうどここを曲がれば…)
「おっ!あった〜」
細い路地の奥に、小さな看板があり
そこには“deep sea”と書かれていた。
扉にはOpenと。
そうここはヴォルバス商会が営んでいるバーで、昨日お世話になったところだ。
カランカラン
「やってる?」
扉からひょこっと顔を覗かせてみたらカウンターには数個席が空いているくらいで、
テーブル席は全て埋まっていた。
「いらっしゃいませ」
ケットはどうせ1人だしと思い入口から一番近くのカウンター席に座ろうとしたらシィニに隅の方へ座る様に案内された。
隣の席にはすでに客がおり、
あまり見かけない珍しい黒髪、珍しい服、刀を腰に下げた男で、見覚えがあった。
「あ、ケンゴ?」
「…誰だ?」
「え、人違い?!ごめんなさい!」
「いや、俺の名はケンゴだが
お前は誰だ?」
見覚えがあるが…と言う男は
ヴォルバス商会に属しているケンゴ・ツルギだった。
「俺ケット、思い出せる?」
「狐…んーぬ」
「まじかよ…」
その会話を聞きいていたのかシィニはクスクスと笑いながらこっちに向かってきた。
「ケンゴ、この狐は絵描きですよ
それ以上でもそれ以下でもないです」
「絵描きの狐か、よろしく頼む」
「狐呼ばわりめちゃするやん…
まぁ、いいけど!何気にこのやりとり結構やってる気がするからいい加減覚えて…!」
「善処しよう」
ケンゴとはたまにしか会わないが、それでももうこのやりとりは5回以上はしている。
日を短くしてある時は覚えている時もあるが、すぐに忘れられてしまう。
「それより本日も来ていただきありがとうございます。昨日話しそびれたことでもありましたか?」
「たまたまこの道思い出してお腹空いたし、寄ってみようかと」
「そうでしたか、たくさんお金落としていってくださいね」
「いいかたの癖…」
ケットはお酒は飲まないのでシィニのおまかせで出してもらう様に頼んだ
「あ、そうそう。ケンゴ、
彼が昨日話をしていたイサクに行った獣人ですよ」
シィニはケンゴに伝え
他の客の対応もあるためシィニは戻って行った。
「お前が昨日話していた…
名はカットと言ったか?」
「いや、ケットだよ〜
知らんとこで話題にされてんのね!俺」
「絵描きはなぜイサクはいったのだ」
「え?え?さっき名前確認したよね?」
「………」
ケンゴは無言を貫き
諦めたのはケットだった
「もー、まぁいいけど
道を進んでたらたまたま行けたから行った」
「あそこはそんな場所ではないはずだが」
「ヴォルバスにも言われた〜
けど入ってから捕まったりして大変だったけどね」
ケットは笑って答えた。
「思い返してみると、イサクの人とケンゴって雰囲気が…にてる…
いや、あれ?めちゃくちゃにてね?」
「だってあそこの人みんな黒髪で、ストレートで…服も…
んんん?ケンゴの故郷ってもしかしてイサク?」
「あぁ」
当たり前だが?という顔をして口数が少ない彼を改めて見た。
シィニがなぜそれを言い残しかのかわかった気がしたケットであった。
「あそこめちゃくちゃいいところだな!ピンクの花が咲いた木が綺麗だったな〜
しかも、風もないのに花びらが舞っててお花のシャワーだった!」
「その花びらが牢屋に入ってきて存在気づいたんだけどさ〜」
ケンゴは、いつかまた行きたいと、思い出を語るケットを驚いた顔で見ていた。
「それはイサクの守り神が住むとされている樹だ」
「え?」
「絵描き、お前…祝福———」
「お〜ケット!ケンゴ〜」
ケンゴが何か言いかけていたところに
誰かが声をかけた
「あ、アメトリンだ!」
昨日ケットを拉致しここに連れてきた彼だった。
「ケンゴ任務から帰ってたのか」
「昨日には帰ってきていた、
お前が昨日今日と帰っていなかったからだ」
「てことはモールも帰ってんのか…」
すごく嫌そうにしているアメトリンとまだ何か文句を言いたそうなケンゴ。
2人を眺めているとシィニが料理を持ってきてくれた。
「お待たせ致しました
本日はキノコをたくさん使ったムニエルとコンソメスープにオニオングラタンのパンです」
出てきた料理にすぐ意識を持っていかれた。
「うまそ〜!!」
「めちゃくちゃうまそーじゃねーか!
シィニ俺酒!」
アメトリンは自分の酒を頼んだ。
ケットはシィニの料理にかぶりつきながら、
ふと思い出したように口を開いた。
「そういや、昨日アメトリンと別れたあとさ」
「おっなんだなんだ?色話か?」
「いや違うけど、道でお腹空きすぎて寝てたところたすけてくれた人がいてさ!」
「そいつ優しすぎだろ」
「本当にね!こんなあったかい人がいたんだ…!って感動で」
「しかも話し方シィニと似てるんだけど
全然雰囲気違くて数百倍優しくした感じの人でさ!」
ケットはニコニコと昨日あったことを話していた。
アメトリンが笑いを堪えながら横に指を刺しており、視線を向けると
「そんなことを言うケットはもっと優しいのですよね?
あ、そうだ毛皮を扱うところが質の良い狐の毛を探されてましたので後日一緒に出向きましょうか」
ちょうどお酒を持ってきたシィニに聞かれていたのだった。
「ひぃぃぃ、ごめんごめん!
本当!ただ良い人すぎてって話したかったの!!」
「ケットお前サイコ〜」
おかわりとアメトリンはつい先程来た酒を飲み干しおかわりを頼んでいた。
「でさでさ?」
続き話して良い?とケットはいうと
「そいつこの王都の図書館で司書やってるらしいんだけど、
好きそうじゃないし…
家とかがさ?なんか、こー?なんて言うか、
なんもない、とか生活感?がないと言うか
寂しいって感じなのよ」
「なんかいい置物で元気づけた…——」
昨日や今日感じたことをケットはみんなに聞いてみたかった。
笑っててほしいと思ったし元気付ける方法を一緒に考えたかっただけだった。
でもみんなの顔をみて言葉を飲み込んだ。
「……ルナバスティオン大図書館の司書かぁ、」
いつもふざけ合っているアメトリンでさえ真面目な顔をしていた。
「ユーストマってやつなんだけどさ、」
「ケット、そいつとは深く関わるな
根っから善人なお前は傷つくことになる」
いつもより低い声で真面目な顔してケットを見てきた。
悪意などからではなく心配している様な顔だった。
なんで?と聞きたいがそんな空気じゃなく言葉に悩んでいたら
「あまり外で司書と仲がいいと口にしない方が身のためですよ
聞き耳を立てている悪い人もいますから」
「今日ここにいる奴らはヴォルバス商会の客や協力者が多いから口はかてぇけど」
ケットはユーストマは危険に思えなかった
それに関わることが危険という意味もわからなかった。
ケットはだんだん尻尾や耳が垂れ下がっていき
それを見ていたアメトリンは
「珍しくお前を心配してんだ、忠告は聞けよ」
「わかった…」
「まぁ、ケット逃げるの得意じゃん
何かあれば全力で逃げろよ」
アメトリンは笑って伝えた。
「知らなくていい世界もあるってことだ」
「はは、なにそれー」
ケットも少し反応に困ったが眉を下げて笑って答えた。
————————————
今日は何か悩むことばかりだ
全てユーストマの所為だ!心の中で怒りをぶつけておいた。
そのあとはデザートも頼み、美味しいもので忘れることにした。
途中アメトリンは酒を飲みすぎて潰れていたため、ケンゴが首根っこ掴みながら回収していった。
ケットは食べ終わり、会計をしてシィニから聞いた宿は行こうとしていた。
「もし、知りたければヴォルバス様へ通しますので」
「——その時は、
覚悟を決めてからお越しください」
お安くしますよと付け加える
「ありがとう」
困ったように眉を下げ笑顔で告げ、お別れをした。
お読み頂きありがとうございます!
更新も頑張っていきますので、よければ次も読んでいただけると嬉しいです




