表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊が視える少女に転生したあたしの生存戦略〜ここは乙女ゲームの世界ですか?〜  作者: 兼乃木


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/16

8話目 転生者

 ノーラが御遣い様の()ぐし子のテオバルトの屋敷で世話になること、10日。


 1日ひとり、みたいなペースでメイドがクビになって消えて行った。


 マイシャの失敗から学ばないメイドばかりだったので、ノーラに無礼な態度を取る⇨メリダに告げ口される⇨はい、サヨナラ!のコンボが炸裂した結果だ。


 メイドのメリダも老執事も「口実ゲットで目障りな連中排除だぜ!」とご機嫌だった。

 本当にノーラの安全は保証されているのだろうか。解せぬ。


 屋敷の主人のテオバルトも「無事に追い出せたのか」とご機嫌だった。


 コネ就職してテオバルトの妻の座を狙っていた女たちが一掃されたので、住み心地が良くなったようだ。

 恩人への恩返しだったのだ、とノーラは思うことにした。


 でもテオバルトは早く嫁を探したほうが良いと思う。また貴族たちが断れない筋からゴリ押し就職させに来るだろうから。






 ノーラは文字の他にも礼儀作法を習い始めていた。

 王太子に挨拶も出来ない子のままだと大変だ、と気づいてしまったからだろう。


 それに敬語も使わずタメ口だったのだ。

 無意識だったノーラも「そういえば…!」と後になって青くなった。


 テオバルトだって王太子に敬語を使っていたのに、何故気づかなかったのか。


 せめて『ですます』と丁寧に答えるべきだった。


 貧民街(スラム)の人間は敬語など分からない、なんて偏見である。

 怖いゴロツキ連中に下手な対応が出来ないので、丁寧語くらいはみんな使えるのだ!


 質の悪さは否定しないけど。


「ごきげんよう、ごきげんよう…ゴ・キ・ゲ・ン・ヨ・ウ!」

「悪ノリしない!」


 ウ・チュ・ウ・ジ・ン・ダ!のリズムで言ったらメリダに怒られた。

 まだ基礎の基礎なので、メイドたちに教えてもらっている段階だった。


 10日の間にメイドたちの対応がぞんざいになった気もするが、打ち解けて来ただけである。たぶん。


「アタクシの名前はノーラ!ノーラでございますわ!おーっほっほっほっ!」

「品がありません。(れい)点」

「品がない…」


 悪役令嬢のテンプレで挨拶したらまさかの零点だった。

 悪役令嬢とは……


「あたしノーラ!元気でおしゃめな5歳児!神官見習いだよ☆」

「知性が感じられません。零点」

「知性…」


 少女漫画のテンプレヒロインは、確かこんな感じなのに、知性……


 ヒロインだから許される挨拶だったようだ。

 モブは大人しく無難に無個性な挨拶をするしかないのだろう。


「はじめまして。わたくし、ノーラと申します。どうぞお見知りおきを」

「どうして最初からそれが出来なかったんですか」


 教えなくてもノーラが勝手に言い出したので、メリダは嘆いていた。

 最初から出来た、という事だからだ。


 モブがヒロインの夢を見てしまったのさ…と心の中で答えておいた。


 メリダは今の挨拶は良かった、しかしもっと良くなると別の言い回しや表現を教えてくれた。挨拶にも流行があるとか、上流階級の人々は大変そうだ。


 もちろん挨拶する時の姿勢や、相手の身分に合わせて変えなくてはならない部分など、なんか面倒臭い話になって行く。


 しかし日本人だって先輩後輩で挨拶は変わったし、上司やお得意様に対しての挨拶だってある。

 …オバサン説が濃厚!『あたし』の心はオネーサンなのに!


 余計な事を思い出して精神ダメージを食らったが、頑張って練習した。

 そのうち頭に本を乗せて、綺麗に歩く訓練とか始まりそう。






 大神殿に戻れる目処が立たないまま、さらに5日ほど過ぎたある日、ノーラは「グランダル」と書いて文字の練習をしていた。


 途中で「大神殿の名前は?」と聞かれる、高度な勉強である。


 無事に答えられても「では書いて下さい」で連敗中だ。

 たくさん書いたのに、王国の名前と混ざってしまうのだ。


 おのれ、グラグラ大神殿め。


 次は王都の名前も待ち構えているので、未だに覚えられる気がしない。


 王都の名前…グラ…なんだっけ…


 と考えていたら、ノーラにも優しく接してくれるメイドさんが少し慌てた様子で呼びに来た。メリダが無作法を叱っていたが、話を聞いて動揺している。


 ノーラには聞こえなかったので首をかしげて眺めてしまった。


「グリド・グリズド教国から御遣い様の愛ぐし子様がいらっしゃったそうです。ご挨拶を」

「…グリグリ教国…!?」

「メリダ様!まだ人前にお出ししては駄目だと思います!」

「ワタクシも同感ですわ…!」


 ノーラも遺憾ながら、同感だった。






 カンペに「グリド・グリズド教国」と書いたところで読めないので、ノーラは手ぶらで応接室に入った。


 右側だけ服をつまんで、カーテシーっぽく挨拶するという「グラン・グラダ王国で流行り」の挨拶を披露する。

 ノーラの出自を知って来たのだろうから、下手でも怒るまい。


 待っていたグリド・グリズド教国の愛ぐし子は、若い女性だった。何故か男装をしているが、男装の麗人も存在する世界なのだろう。知らんけど。


 先に応対していたテオバルトが「王太子殿下には挨拶ひとつできなかった子が…」という顔で見て来る。

 ちょっと親バカ気質な愛ぐし子様だった。


「お初にお目見えいたします。神官見習いのノーラと申します」

「表向きは神官見習いだそうだね。私はグリド・グリズド教国の愛ぐし子のサキだ。正確にはハナサキ・ミサキという」


 サキサキ…と心の中でつぶやいた。

 シャキシャキのほうが語呂が良いな、とか思ってない。


「漢字で書くと『花崎美咲』だ」

「カンジ…?」


 唐突すぎて反応が鈍くなった。

 サキの出して来た紙を眺める。

 本来のノーラがぼや〜と考えて、頭の中が空っぽになっている状態である。


 言われた事を咀嚼しているのではない。

 考えているフリをしているだけだ。


 ノーラの中の『あたし』も「なんだっけ…」とぼんやりしてしまったのは、1ミリも予想していなかったからだろう。


 この世界に漢字が存在するなんて。


 ノーラの反応を観察して、サキは「知らないようだ」と苦笑した。


「私も初耳だが、教国の出身ではないのか?」

「私は『異界渡り』だよ。だが精霊が視えたおかげで、教国に拾われたのさ」

「『異界渡り』…!?聖女か!」

「今のところ精霊が視える以上の力はないよ」


 ぼや〜としている間にテオバルトとサキが、なんか凄い話をしていた。


 新しい設定がぽこぽこ生まれて来すぎである。

 ツッコミたいけど、つっこんで良いネタなのか。


 というか、なんでノーラにあんな質問をしたのか。まるでお前も日本人だるぉ?(巻舌)と煽るように!


「ノーラも立ったままでいないで、こちらに座ったらどうだ?同じ愛ぐし子なのだから、かしこまる必要はないよ」

「まだ公表できない事情があるので、外では言わないで欲しいのだが」

「それはグラン・グラダ大神殿でも言われて来たよ。事情もある程度は聞いたから気をつけるさ」


 ノーラは案内でついて来ていたメイドに手伝ってもらいながら、テオバルトの隣に座った。

 お客さんは向かい側に座っている形だ。


「で、何故ノーラにあんな質問をした?」

「私は聖女ではないが、元の世界にいた時にこの世界の話を知る機会があった。説明しがたいのだが、時空が捻じれてこの世界の未来に書かれた歴史書を手に入れたとでも解釈して欲しい。教国でもそう告げてある」

「未来の歴史が書かれた書、という意味か」


 どこかのラノベで読んだ設定だなあ、とノーラは思う。まだぼや〜としたままなのは、キャパオーバー気味だからだ。


 今さら言うまでもないが、ノーラの記憶容量はあんまり多くない。


「それも人間の書いた物だから、内容は作者の視点で書かれている可能性が高い。改竄された歴史かもしれない。その前提で聞いて欲しいのだが」


 そう言ってサキはノーラを見た。


「その書にグランダル王国の愛ぐし子ノーラが出て来る。転生者として、歴史を改変した悪女として」

「テンセイシャ?」

「私と同じ世界で生きていた女の魂が、ノーラを乗っ取ったのさ」

「悪霊憑きか…」


 テオバルトが納得しているので、ノーラははっとした。


「悪霊!?オバケがいるの!?怖い話!?」

「…ああ、いや。精霊たちがいるから大丈夫だ」


 ぽやぽや精霊たちは悪霊を追い払ってくれるらしい。

 そんな凄い能力があったとは…!


 ホラーが苦手なノーラにはありがたい話だった。


 でも悪霊がいるんだな、この世界…と知りたくなかった事実を知ってしまったのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ