福利厚生
ノエルはマスターに呼ばれた
なぜか応接室で依頼書を受け取る
内容はシンプル
不審人物をおびき出すため囮になってほしい
依頼料は福利厚生の一環とだけかかれている
「護衛から妙な報告を受けてね 君の目で迷惑か確かめてから対処したい」
私が得する依頼を私が受けるという奇妙な状況だ
「あ~はいお願いします」
何も分かって無いのに返事する
――
ノエルは「ブヒブヒ」と鼻を鳴らしながら喜ぶストーカーと歩いていた
男はホワイトギルドの頃から、しつこく付きまとっていた
ギルドを辞めた原因だ
「ノ、ノエルちゃん!一緒に食事楽しみだっねっ!ブヒ」
顔を赤らめたストーカーが奇妙な笑い声を漏らす
ノエルはニコニコと愛想笑いを浮かべながら答えた
「ウン ソウダネ~ あっ コッチの角曲がった所ダヨ~」
薄暗い路地裏に案内する
ノエルが右手を上げる
──次の瞬間
背後から現れたギルドの職員たちが、音もなく男を連れ去って行く
ノエルはその様子につい覗き込んだが、護衛さん達が「大丈夫ですよ」と手を振ってきた
「職場だけじゃなくプライベートの安全も守ってくれるなんて!良いギルドだな~」
ノエルは福利厚生に感激する
「ちゃんと叱ってもらって、もう付きまとって来ないと嬉しいな」
ギルドの記録係が失踪者リストに新しいページを追加する
【路地裏 ゴミ収集+1】
――
翌日
闇ギルド内は妙な緊張感に包まれていた
情報が回っていたのだ──「ノエルが護衛班にクッキーを焼いてきたらしい」
「護衛じゃなくて処理なんです、すみません」
「そういうの受け取る価値無い人間なんです」
それぞれイメージトレーニングしながら、マスターに言われた部屋で待つ
「こんにちはーっ!」
ノエルがニコニコ現れた
手にはかわいくラッピングされた袋
「護衛さんたち毎日ありがとう!私からの感謝の気持ちだよ!」
「みんなにも配ってね!」
ノエルは楽しそうに言い残しぴょんぴょんと去っていった
「何も言い返して無いのに嵐のように去って行った」
だが──胃は痛かった
いやっ、クッキーのせいでは無い、これは罪悪感だ
無邪気に感謝してくれる少女
その笑顔の裏で俺達がしている事
「辞めようかな」
と言う奴も居たが、マスターの殺気が部屋まで届き静かになった
クッキーを食べる
甘いのにちょっと焦げてほろ苦い
「俺、もうちょっとこのギルドで頑張ってみよう」




