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祝 昇進

昇進試験を受けた翌日

「今日からノエルさんには【特別受付】になります」

「特別……?」

マスターが差し出したのは新しい制服

以前と似ているが赤いラインが2本になり

胸元には小さなギルド紋章が刺繍されている

『骸骨に大鎌』


ノエルは、ぱあっと笑顔になった

「とりあえず着替えて来て下さい」


更衣室という名の倉庫で鼻歌を歌う

制服が変わるってテンション上がるな~

新しい制服に着替えたノエルは、やる気に満ち溢れてカウンターに立つ


――


「このギルドらしくなってきましたね新しい仕事です」

出されたのは1冊の分厚いファイル

「最近の【失踪者リスト】整理をお願いできますか?」

「はいっがんばります!」

ノエルは元気よく引き受けた


失踪者リスト……?

冒険者さんが長期戻らない時用のデータかな

重い表紙をカウンターでめくる


中を開くと、ずらっと並ぶ圧倒的な情報

・名前 年齢 所属 失踪日

・備考 最後に目撃された状況

ホワイト(元職場)ギルドでもここまで詳しく無い


走り書きで記された備考欄はところどころ赤黒く滲んでいた

ページを指で拭うと、ざらりとした感触が指先に残った

……なんだろう?

赤いシミを拭いて少しでもキレイにしながら、地道にデータを整理した


作業は地味に大変だった

備考欄の内容は謎が多い

『最後に目撃されたのは裏路地 袋を引きずっていた』

『黒い扉の向こうに消えた』

『昼間に無音の馬車を見た』

『黒い服の男に囲まれていた』


「こんな情報じゃ見つからないよ行方不明の人達かわいそう」

重複してる情報を同じページに並べ直して

『失踪認定』

という赤いハンコをポンポン押していく

これで彼らは正式に「いない」事になる


――


1日かかって整理を終えてファイルを提出する

「ありがとうございます 助かりました」

マスターがにこやかに受け取りサッと中身を確認する

「とてもきれいで良いですね これで【仕事】がしやすくなります」

「えへへ~!お役に立ててうれしいです!」

ノエルは無邪気に笑った


「騎士団に見せることもあるので、定期的に整理をお願いするかもしれません」

「任せて下さい!」

鼻息をふんっと鳴らしながら答える


今日は来客も無く静かに1日が終わった

帰り支度をする

カウンターを整理していると、カウンターの奥にある別のファイルに目を向けた

背表紙に、どこかで見たような名前がちらりと映る

……あれ?

ノエルは小さく首を傾げたが、すぐに気を取り直して帰り支度を続けた

「こんな内職みたいな仕事も良いな~」



カウンターには2冊のファイルが静かに並んでいた

整理された失踪者たちのリスト

そして──これから失踪する者たちのリスト

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