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2O・3O(仮)  作者: 夜何時
第四章
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最三十六話 巨大乱闘

二次三次高校――校門前。


数十メートルもの巨体となった矢車りねが、その巨大な足を踏み出すたびに地面が大きく揺れる。


その肩には町田ちまが静かに腰掛け、美しい歌声を紡ぎ続けていた。


矢車は自身の『巨大化』というライバ―スキルを使う代わりに完全に理性を失ってしまうのだ。


それを補うのが至近距離で歌を歌うことで他者を操れる町田の『歌唱』。


だからこそ、町田は一瞬たりとも歌うことを止められない。


その巨体を前に、加賀美ハヤトは静かにダイカガミの操縦席で通信機を取り出す。


「夜見さん、葉加瀬さん」


通信越しに二人へ呼びかける。


「ここは私が引き受けますので、校庭のクヲンと校舎内の制圧をお願いします」


夜見がおっとりと返事をする。


「は~い、任せてくださいね」


葉加瀬も拳を握る。


「社長も気を付けてください!」


「ええ」


巨大ロボ――ダイカガミがゆっくり立ち上がる。


加賀美は矢車を見据えた。


「あなたの相手は私です」


理性のないはずの矢車が嬉しそうに笑う。


その肩で町田が叫ぶ。


「大きい人同士、いっぱい遊びましょうね」


ズシンッ!!


巨大な足が地面を砕く。


そのまま拳が一直線に振り下ろされた。


「……!」


ダイカガミも巨大な腕で迎え撃つ。


ドォォォン!!


拳と拳がぶつかった瞬間、衝撃波が周囲へ吹き荒れた。


校舎の窓ガラスが次々と砕け、木々が大きく揺れる。


それでも二人は止まらない。


矢車が腕を振るうとダイカガミが受け止める。


巨大な脚で蹴り上げると鋼鉄の腕で殴り返す。


戦うたびに道路が削れ、大地が割れていく。


怪獣同士の激突のようだった。



「それじゃあ私はこっち!」


葉加瀬冬雪は校庭へ飛び込んだ。


そこにはまだ大量のクヲンが暴れ回っている。


「よーし!」


両手を叩く。


「ライバースキル――『実験』」


彼女の周囲へ次々と試験管やフラスコが浮かび上がる。


「これとこれを混ぜて……うーん、これも入れちゃいます!」


シュワァァァ……。


薬品が激しく反応する。


「完成!」


巨大なフラスコを空へ放り投げた。


「いっけぇー!」


パリンッ!!


割れた瞬間。


白い煙が一帯へ広がる。


煙へ触れたクヲンたちは身体を溶かされるように消えていった。


「実験成功です!」


葉加瀬は嬉しそうに笑う。


しかし。


「……あれ?」


数体だけ。


煙を避けるように後ろへ飛び退いたクヲンがいた。


「避けた?」


クヲンは基本的に本能だけで動く。


この煙の攻撃を予測して回避する個体など今まで存在しなかった。


葉加瀬は眉をひそめる。


「変だな」


そのクヲンたちは葉加瀬を囲むようにゆっくり歩き始める、その動きは完全に連携していた。


「えっ?そんな動き……できるはずが」


困惑したその瞬間、後ろから一体が飛び掛かる。


「きゃっ!」


何とか避ける。


すると今度は横からもう一体。


「わわっ!」


その隙を突いて正面から牙が迫る。


「ちょ、ちょっと!」


葉加瀬は薬品を投げて迎撃するが、まるで人間のようにタイミングをずらされ、思うように当たらない。



校舎裏、植え込みの影。


「めんどくさぁ……」


一人の少女が座り込んでいた。


彼女の名前は椎名唯華。ゲーマーズの一員である。


眠そうな目を擦りながら、指先をゆっくり動かしている。


「もう帰りたいんやけど」


ぼやきながらも、視線だけは葉加瀬を追っていた。


彼女の周囲には三枚の呪符が浮いている。


その先には先ほどの三体のクヲン。


「よしよし、もっと右や……そこで噛みついて」


まるでゲームでも遊ぶような感覚で指示を出していた。


ライバースキル――『呪符』


頭へ呪符を貼られた対象は、椎名の思い通りに動く。


だから、呪符を貼られたクヲンだけが異様に知性的な動きを見せていた。


「あとちょっとで動けなくなるかなぁ」


椎名は欠伸をしながら呟く。


「終わったら寝よ」



その頃、校舎上空。


魔法少女の格好をした少女、勇気ちひろは箒へ跨ったまま窓から校舎内を見下ろしていた。


通信機から声が聞こえる。


『まだ天宮こころは校舎の外へ出ていない、校舎内にいる可能性が高い』


「了解」


ちひろは楽しそうに笑った。


「かくれんぼかな?」


箒を旋回させて割れた窓から、そのまま校舎内へ飛び込んだ。


静まり返った廊下では避難したばかりなのか、机や鞄が散乱している。


「どこだよ……」


ちひろは周囲を見渡す。


「龍の末裔だっけ?」


一つ一つの教室を確認しながら進んでいく。


「どうせまだ校舎のどっかにいるんでしょ」


彼女の周囲にはいつの間にか数十丁もの銃が浮かび始めていた。


「見つけたら一気に終わらせるちゃうもん」


冷たい声だけが、静かな校舎へ響いた。

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